桐林宏光の「メンタル強化術」第5回~ボールを打たなくてOK! 10打縮めるイメージトレーニング術
ゴルフを上達するには、練習場でボールを打ち、コースで実戦経験を積むしかないと思い込んでいる人は多いかもしれない。だが、「ゴルフがうまくなりたければ、イメージトレーニングを忘れてはいけません。実際にボールを打つのと同等の練習効果がありますよ」というのは、スポーツメンタルトレーニング指導士である桐林宏光プロだ。
とはいえ、イメージトレーニングといっても、具体的には何をイメージすればいいのだろう。そこで、スコアに直結するイメトレのやり方を、桐林プロに教えてもらった。
イメトレの目的は、イメージと実際のスイングを重ねること
「プロや上級者のスイングを見て、そのスイングを頭の中に思い描くことがイメトレ」と思いがちだ。だが、そこで終わってしまっては、イメトレの効果は薄いのだという。
「イメージしてほしいのは、自分自身がボールを打っているシーンです。自分がどんなスイングをして、どんな球を打つのかを鮮明に思い描く。そして、思い描いたイメージ上の自分に、実際のスイングを重ね合わせていきます。それが、イメトレをナイスショットに結びつける作業なんです」
イメトレをする前準備として、やらなくてはならないことがあるという。
「それは、自分の現在のスイングを客観的に見ることです。私のラウンドレッスンでは、生徒さんのスイングを全ショット撮影します。最初に自分のスイングを見ると『これが私!?』と、イメージしていた自分のスイングとのギャップに皆さん驚くんです。『もっとコンパクトにバックスイングしているつもりだったのに、こんなにオーバースイングだったの?』などショックを受けるかもしれませんが、まずは現実の自分を認めること。ご自身がどんなスイングをしているのか動画撮影などして確認してみてください」
スイング撮影は練習場でもかまわない。フルショットの撮影だけでなく、50ヤード以内のアプローチやパッティングなどを撮影する人は少ないので、ショートゲームのスイングも撮影して見ることがおすすめだという。
イメトレ法1 スイングしている自分を思い描く
いざイメージトレーニングをスタート。イメトレは、外的イメージと内的イメージを思い描くことが必要なのだという。
「外的イメージというのは、自分がスイングしている姿を想像することです。自分が登場している夢を見るように、あるいは自分が主演している映画を自分で監督しているように、ご自身がスイングしている映像を思い浮かべてください」
外的イメージのトレーニングを積むと、ティーグラウンドに立ったとき、スイングしている自分の映像が見えるようになってくるという。
「目の前にもう一人の自分がいて、理想のスイングをするわけです。それが見えたら、そのイメージに自分をはめ込んでスイングすればいいだけ。ナイスショットが打てるという自信が、グンとアップしますよ」
イメトレ法2 体の動かし方をイメージする
イメトレは外的イメージだけでなく、内的イメージをふくらませることも大事だという。
「内的イメージというのは、思い描いたスイングをするために、体をどのように動かせばいいかをイメージする作業です。50ヤード打つには腕をこのぐらいまで上げるといったように、筋感覚のイメージをふくらませていきましょう」
ゴルファーは体の前面の筋肉と腕の動かし方については敏感だけれど、背面の動かし方についてはイメージ力が弱いのだという。
「背中の筋肉を意識することは、思いどおりのスイングをするためには、とても大切です。背面の感覚を高めるためにおすすめなのがストレッチ。体を伸ばして、『今、肩甲骨のまわりが伸びているな』などと感じることで、だんだんと神経回路の伝達スイッチが入ってきます。すると、腕を動かすのと同じくらいの器用さで、広背筋に力を込めるとか、肩甲骨を大きく開くといった動きができるようになってきます」
理想のスイングをしている自分を、映像が見えるぐらい何度も何度も思い描く。そして、そのスイングを実現するために、どの筋肉をどう動かすかをイメージする。その2つができるようになれば、イメトレで効率よく上達できるのだ。
教えてくれた人: 桐林宏光(きりばやし・ひろみ)プロ
1964年生まれ東京都出身。大学卒業後にゴルフを始める。社会人入学で、筑波大学大学院体育研究科体育方法学に入学しスポーツ心理学やメンタルトレーニングを学ぶ。日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロフェッショナル会員A級。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。
文/及川愛子(ゴルフライター)
桐林宏光の「メンタル強化術」記事一覧
(1) 肝心なパットほど入らない編 - (2) イップスやシャンク克服編 - (3) ゾーンに入るメンタル術編 - (4) 投げやりプレーを防止編 - (5) 打たずに打数を縮めるイメトレ編 - (6) ミス連発でもパニくらない編 - (7) ミスショットは反省しないで編 - (8) ラウンド前日のダメな練習編 - (9) 右脳を使ってミスショット撲滅編 - (10) 後半9ホールを崩さないメンタル術編 - (11) 出だし3連続パーから好調を維持編 - (12) 池を避けるゴルフ脳編 - (13) 絶不調なら3日はクラブを握らない編 - (14) 待ちミス・待ちチョロを防ぐ編 - (15) 前日の睡眠不足解消編 - (16) 脱練習場シングル練習法編 - (17) スイングのリキみを取る方法編