桐林宏光の「メンタル強化術」第2回~イップスやシャンクは球を打たずにイメトレで克服できる
写真/Getty Images
「急にイップスになって、パターが打てない!」、「アプローチでシャンクしてしまう!」。イップスやシャンクは、ゴルファーにつきものの病。ミスが一発飛び出すだけでなく反復性があるところ、そしていつ襲われるかわからないところがやっかいだ。
イップス病やシャンク病にかかってゴルフやめるといい出す人も少なくない。スポーツメンタルトレーニング指導士の桐林宏光プロによれば、「技術的な問題もありますから、克服するにはスイングを見直すことも必要です。でも、メンタル面のケアも忘れてはいけません。メンタルトレーニングはイップスやシャンクを克服する一助になりますよ」という。1球も球を打たなくても、重症なイップスやシャンクが治る可能性もあるそうだ。その方法を紹介しよう。
ショットイメージの色を切り替えて克服する
イップスでパターが打てなかったり、シャンクで右へボールが飛び出したりした瞬間、「こんなはずじゃない!」「もうゴルフやめる」と、自分の頭をポカポカ殴りたくなってくる。
「ミスしたことを『こんなのは、本当の自分じゃない』、『なかったことにしたい』と思っているうちは、いつまでもその先に進めません。まずはミスした自分を受け入れ、そのうえでミスしない自分へとコントロールしていく必要があります。その第一歩は、イップスでパターを打てなかったり、シャンクしたりしている自分をイメージすること。グリップに伝わってくる感覚や心拍数が上がっている状態を、シミュレーションしてみましょう。続いて、その背景が何色に染まっているか、思い描いてみてください」
イップスになったり、シャンクしたりしている自分を想像するなんて、何ともストレスのかかる作業だが、これが「ミスする自分を認める」ことになるという。背景の色は、多くの人が黒やグレーなど、どんよりした色を思い浮かべるのではないだろうか。
「続いて、スムーズにパターが打てている自分、シャンクせずにアプローチを寄せている自分を想像しましょう。今度の背景は何色でしょう。緑、青などさわやかな色や、あるいはバラ色かもしれませんね。イメージできたら、再び暗い色のミスショットを思い浮かべます。そして、太ももなどをパンッとたたいて、明るい色のナイスショットにイメージを切り替える。『イップスでパターが打てなかったり、シャンクしてしまったりするのも自分。たしかにイップスになったりシャンクしたりしたのは事実。でも、スムーズにナイスショットできるのも、また自分だ。黒やグレーの自分もいるけれど、自分は青が好きだから、青の自分で行きたい!』と暗示をかけるんです。イメージの色を塗り替えて自己暗示をかけることが、『イップスでパターを打てなかったらどうしよう』、『どうせまたシャンクするんだ』という不安を封じ込める手助けになります」
シャンク連発のときは明るく謝る
イップスやシャンクで「ゴルフをやめる」と落ち込むのは、思うように打てないことももちろんだが、ミスを連発することで一緒に回っている人に迷惑をかけてしまうからという心苦しさも要因の一つだろう。
「暗~い顔で無言のままグリーンまわりを行ったり来たり。打つたびにため息をついていれば、見ているほうはかける言葉もなくなっちゃいます。重い空気の中、見て見ぬフリというのが最悪の事態でしょう。それを避けるには、明るく謝るのが一番! 13たたこうが、14たたこうが、『すみませんね、お待たせして』、『次はがんばります!』と明るく謝っちゃえばいいんです。するとまわりも『落ち着け~』など声をかけやすくなり、どんよりムードは解消しますよ」
プレー中にイップスやシャンクに襲われたら、とにかく明るく謝る。そして色の切り替え作戦でイメトレしつつ、練習場でスイングを見直し。それが突然やってきたイップスやシャンクを、スムーズに克服して、また楽しくゴルフをする手だてなのだ。
教えてくれた人: 桐林宏光(きりばやし・ひろみ)プロ
1964年生まれ東京都出身。大学卒業後にゴルフを始める。社会人入学で、筑波大学大学院体育研究科体育方法学に入学しスポーツ心理学やメンタルトレーニングを学ぶ。日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロフェッショナル会員A級。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。
文/及川愛子(ゴルフライター)
桐林宏光の「メンタル強化術」記事一覧
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