- 1月4日(土)
- 「教えて!Nory」解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
毎週楽しく拝聴させて頂いています。
昨年の9月に行われたマイナビネクストヒロインゴルフツアー第9戦マイナビカップでのことですが、
徳田 葵選手が残念ながらライの改善でペナルティーを受け優勝を逃しました。
ライの改善とみなされるのはボールからどのくらいの距離内なのでしょうか?
Youtubeの映像も見られます。
【解説】
ご質問ありがとうございます。
この件はYouTubeの映像やALBAさんのオンライン記事で確認することができました。
回答から申しますと、
プレーヤーが球の「すぐ近く」の地面を変えて
そのストロークに対して潜在的な利益を得たときにライの改善とみなされます。
規則は具体的な球からの距離は明記していません。
徳田選手の状況を説明しますと、18番ホール、522ヤードのパー5のセカンド地点。
選手の球はフェアウェイに止まり、そのすぐ後ろにはディボット跡に戻されてある切り芝が少し浮いている状態でした。
選手はその切り芝を足で踏み、地面に押し付けてからストロークを行いました。
委員会はその行為をライの改善とみなし、トーナメントリーダーとしてクラブハウスで待っていた彼女に2罰打課しました。
そもそも球のライとは、
球が止まっている箇所と、球に触れているか、球のすぐ近くにある、
成長または付着している自然物、動かせない障害物、不可分な物、境界物のことです。(定義:ライ)
それに加え、改善とは
プレーヤーがストロークに対して潜在的な利益を得るためにそのストロークに影響を及ぼす状態、
またはプレーに影響を及ぼす他の物理的な状態の1つまたは複数を変えることです。(定義:改善)
徳田選手の行った行為は、球のすぐ近くにあったすでに所定の位置に戻されている切り芝を足で踏み、
押し付けることによって地面を変え、平らにしたことがストロークに対して潜在的な利益を得たとみなされました。(規則8.1a(3))
このケースではたとえ彼女がストローク前に違反に気付き、
切り芝を元の状態に復元したとしても罰を免れることはできません。(規則8.1c)
本人はパッティンググリーンの損傷を修理するような感覚で地面を踏んだとコメントしていました。
徳田選手の言う通り、
パッティンググリーンとティーイングエリアの地面の修理や改善は認められていますが、
他のコースエリアは一部例外があるものの、
基本的に改善した場合は一般の罰が課されます。(規則6.2b(3)、13.1c、8.1)
競技に参加するプレーヤーのほとんどは、徳田選手のように痛い目にあって初めて規則を学びます。
そうならないようにこちらのコーナーを通してお役に立てたら嬉しいです。
- 1月11日(土)
- 正しい処置に対する疑問解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
昨年の1次プロテストE地区のエリエールゴルフクラブ松山での出来事です。
あるプレーヤーは6番ホールのパー4でセカンドショットをラフから打ったところ、
OBの方向に行ったので暫定球をプレーしました。
本来ならば球を救済エリアにドロップして打たなければならないところプレースして打ちました。
そして、パッティンググリーンに到着したときに同伴プレーヤーに
「暫定球をプレーする場合、球はプレースではなくドロップしてからプレーしないといけないんだよ」
と指摘されたため、そのプレーヤーは誤りを訂正しなければならないと勘違いし、
セカンド地点へ戻って、別の球をドロップして打ち直しをしました。
そして、再びグリーン近くに到着したときにようやくルーリングを要請しました。
そのプレーヤーは、
「プレースして打ってきた元の球を拾い上げても良いか」
と質問をしたところ、現場に現れたレフェリーは
「プレースして打ってきた球はもはやインプレーの球ではないので拾い上げても良い」と回答しました。
このケースでは、元の球がインバウンズにあれば罰なしにその球でプレーを続けることができました。
しかし、元の球はOBだったので暫定球がインプレーの球となります。(規則18.3)
ところが、プレーヤーがその球を救済エリアにドロップせずにプレースしてストロークを行ったことで、
規則14.3の処置違反で一般の罰(2罰打)が課されます。
この処置に重大な違反はないため、そのままホールアウトすれば良かったのですが、
更に打ち直しをしてしまったことで、改めてドロップした球がインプレーの球となり、
プレースして打った球はアウトオブプレーとなります。
つまりストロークと距離の1罰打を加えて、
その球でホールアウトしなければいけないことになりました。
その球はパッティンググリーン手前のラフに止まり、
そこからアプローチして1パットでホールアウトしたため、
スコアは10となってしまいました。
規則では、
プレーヤーが適用しない手続きで球をプレースした場合でも
インプレーの球となります。(規則6.3b(2))
また、その救済処置の誤りを罰なしに訂正することができるのは、
その球をプレーする前のみです。(規則14.5)
もしプレーしてしまった場合は、2罰打を加えて誤ってインプレーにした球でホールアウトしなくてはなりません。
ラウンド中、正しい処置への疑問が生じた場合、すぐにレフェリーを呼ぶことをお勧めします。
1ストロークで予選を通過したり落ちたりするゴルフ競技では自身のプレーを守る術として、
暫定球の正しい処置は覚えておきましょう。
- 1月18日(土)
- 「教えて!Nory」解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
クラブ競技に出場して9H終わった後に、肩がガチガチだったので、
ハンディマッサージガンでマッサージしようとしていたら、
同伴競技者に「それは失格になるよ」と指摘されました。
えっそうなの?と思いつつ、その方に聞いたら、
パター練習はいいんだけど、ショットやアプローチの練習はダメで、
素振り棒とかの練習器具を使うのもダメとのこと。
なぜ、マッサージガンもダメなのか、その理由がいまいちわからないので教えてノーリーズ!
よろしくお願いします。
【解説】
ご質問者様、ご質問ありがとうございます。
一般的にラウンド中のハンディマッサージガンの使用は肩こりやどこかの筋肉の痛みなど、
病状を緩和するための理由であれば認められます。(規則4.3b)
ところが、マッサージガンを使用することによって
飛距離が10ヤード伸びるとか、スイングの矯正になるなど
プレーヤーが不当な利益を得るようなことが理由の場合は
規則4.3の違反となり認められません。
最初の違反の罰は2罰打(一般の罰)で2回目の違反の罰は失格です。
また、ラウンド中にスイング補助器具や素振り棒を振って
スイングの確認やグリップの確認などを行うと違反になります。
しかし、このようなものを一般的なストレッチのために使用すること、
例えば背中を伸ばす、前屈をするなどは認められます。
このように、用具の使用は理由や使い方によって認められたり違反になったりするので、少し複雑です。
これとは別に「パター練習はいいんだけど、ショットやアプローチの練習はダメ」
という内容についてですが、これは規則4.3の用具ではなく、
規則5.5bの「ホール終了後の練習ストロークの制限」に関係しています。
ここにはホールを終えた後に、プレーヤーは練習ストロークを行ってはならないと記載されています。
しかし、これには例外があり、指定練習グリーンでパッティングやチッピングの練習は認められています。
ただし、バンカーショットや打撃練習をすると一般の罰(2罰打)が課されます。
ご参考にしていただけますと幸いです。
- 1月25日(土)
- ゴルフプレーと試合観戦の危険について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
某ゴルフコースでプレーしていた時のことです。
ターンのためクラブハウスに戻ったところ、若い男性2人と女性1人の組がマスター室前におり、
その女性が顔をタオルで押さえながら痛そうにして乗用カートに座っていました。
そのコースの所属プロから事情を聞くと、若い男性がティーイングエリアで素振りをしているときに、
フォロースルーで近くに立っていた女性の眉の上あたりにクラブヘッドが当たってしまったそうです。
その女性に意識はあり、念の為救急車を呼んだそうです。
そして、女性の顔に当ててしまった男性はゴルフ保険に入っておらず、心配そうにその場に佇んでいました。
そこで基本的なマナーと自身の安全のためにお伝えしたいのが、
素振りをする選手の近くには絶対に立たないことです。
そして、素振りをする人は周りに誰もいないことを確認して、人のいない方向にクラブを振りましょう。
また、このような事故のために保険に加入することをお勧めします。
多くのゴルファーはゴルフの競技中や練習中などに起こり得る怪我やゴルフクラブの損傷、
紛失などのリスクに備えてゴルフ保険に加入していると思います。
保険にもよりますが、
月々数100円のものからゴルフ用品損害、賠償責任補償、ホールインワン費用、怪我の補償などがついています。
私達JLPGAの会員は会費の中にゴルフ保険の保険料が含まれており、
万が一のリスクに備えています。
ギャラリーを入れる大会では打球事故が起きてしまい、
そのギャラリーをカートに乗せて医務室に送ることが年に2〜3回あります。
ゴルフをプレーするマナーとして、
球が曲がってしまった時は「ファー」の声掛けをすることはもちろんのことですが
「ファー」と聞こえたら、自分の方向に球が飛んでくるかもしれないと身構えることも大事です。
実際、昨年のある大会で選手とキャディーが「ファー」と声を出したにも関わらず、
まさか球が飛んでくるとは思わなかったと何もせず、
その球に当たって流血したギャラリーの方をカートに乗せて医務室に送り届けたことがありました。
また、風の強い日や視界の悪い時の試合を観戦される時は、
常に球が飛んでくるかもしれないという心構えが大切です。
「ファー」の声も雨や風にかき消されてしまい、聞こえない可能性があります。
事故は突然起きますが、その準備と予防を徹底することで安全に楽しくゴルフをプレーし、観戦することができます。