- 8月5日(土)
- ティーマーカーを動かしてしまった場合解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
6月に開催されたニチレイレディスでの出来事です。
2ラウンド目の17番ティーで、プレーヤーがティーショットをしたあと、
球の行方を目で追いながらティーイングエリアから出ようとしたところ、
うっかりサイコロ状の形をしたティーマーカーを蹴とばして3回転させたのです。
そこでルーリングとなったのですが、この場合、罰はなく、
動かしたティーマーカーを元の位置に戻すだけです。(規則6.2(4))
多くのプレーヤーは、誤って動かしてしまったティーマーカーを、
自分たちで元に戻してはいけないと思い込んでいますが、
実際は、誰でも罰なしで元に戻すことができます。
但し、プロトーナメントのティーマーカーのセッティングは、
スポンサーの意向や、テレビの見栄えに大きく影響するので、向きや方向などが細かく決められています。
またオフィシャルガイドには、
2つのティーマーカーは約4~5m離して設置することを推奨しています。
(一般的なプレーの為のコースマーキング:2Bティーイングエリア)
正しくセッティングし直すには、やはり慣れている競技委員がするのが最善かもしれません。
そして、このような状況を想定して、ティーマーカーの横には必ずスプレーで印が付けられています。
例えば、1ラウンド目には黄点が1つ、3ラウンド目には黄点が3つ付けられています。
今度、トーナメント観戦する際には、是非、ティーマーカーをチェックしてみてください。
- 8月12日(土)
- 球を確認するために認められる時間解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
先月開催された全米女子オープンの初日の18番ホールで起こったルーリングです。
パー5の3打目をフェアウェーから打ったミシェル・ウィーの球は、
グリーン手前の大きな木に当たった後、その球が見つからないというのです。
おそらく木の枝に乗っかった状態であろうと目を凝らしていると、3分間の捜索時間が終わる7秒前に、
球らしきものが木の枝に乗っているのをウィー選手は見つけました。
今度はこれが本人の球であるかどうかの確認をしなければいけないのですが、
今年改訂となったこの規則は、確認のために1分間の時間が認められます。(詳説18.2a(1)/3)
その間、ウィーはレフェリーの双眼鏡を借りて球の確認を試みましたが、
結局は分からず、紛失となりました。
そして3打目地点に戻り、ストロークと距離の罰のもと、
直前にプレーした箇所から1クラブレングス以内の救済エリアに球をドロップしてプレーを続けました。(規則18.2b)
ウィー選手の引退試合とあって、多くのギャラリーやカメラに注目される一件となりました。
ここで少し余談になりますが、
距離計測器の使用が禁止されている全米女子オープンでも、
木の中にある球を確認する目的での使用は認められます。
そういう用途があるため、多くのプレーヤーやキャディーは
距離計測器をキャディーバッグに入れたままにしています。
- 8月19日(土)
- レッドペナルティーエリアにある球を動かした解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
全米女子オープンの2日目。10番ホールのパー4での出来事です。
渋野日向子選手は2打目をグリーン右のレッドペナルティーエリアの方向に打ってしまいました。
そこは岸壁だったのですが、運よく球を見つけることができ、しかもそのまま打てる状態にありました。
ところが、その球を打とうとクラブをテークバックしたときに球が動いてしまい、そこでスイングを止めたのでした。
この処置は、プレーヤー本人がテークバックのときに
インプレーの球を誤って動かしたとのことで1罰打を受けます。
そしてその球を元の位置にリプレースしなければいけません。(規則9.4)
しかし、渋野選手はリプレースをする代わりに、更に1罰打を加えて、
ペナリティーエリアの後方線上の救済をすることを選択します。
おそらく、元の位置に球をリプレースしてもライの状態が悪くて打ちづらいと判断したのでしょう。
このように、本来なら動かしてしまった球はリプレースしなければなりませんが、
他の規則に基づいて救済を受ける場合は、その必要がありません。(規則14.2c)
そして渋野選手は、2打目をレッドペナルティーに入れた際に、
その赤線の縁を横切った地点とホールを結んだ後方線上に球をドロップしてプレーを続けました。(規則17.1d(2))
そこから5打目をプレーしてグリーンに乗せ、2パットのトリプルボギーでホールアウトとなりました。
この10番ホールは、渋野選手に限らず、多くのプレーヤーが同様に苦戦したとてもタフなホールでした。
- 8月26日(土)
- 吉田弓美子選手の超過クラブ解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
7月に開催されたミネベアミツミレディース北海道新聞カップ。
1ラウンド目のインコースからスタートした吉田選手は、11番ホールのセカンド地点で、
キャディーバッグに15本のクラブがあることに気づきます。
本来、プレーヤーは14本を超えるクラブを持ってスタートすると違反となります。(規則4.1b(1))
そして違反に気づいた場合、レーヤーは「クラブをプレーから除外する手続き」を
次のストロークを行う前にとらなければなりません。(規則4.1c(1))
この手続きというのは、例えば同伴プレーヤーに
「クラブが15本入っていたので、このドライバーは使いません」と伝えるとか、
同伴プレーヤーが近くにいない場合は、使用しないと決めたクラブをキャディーバッグに逆さに入れてアピールするとか、
またはギャラリーに知人がいれば、その知人にクラブを渡すなどの行動です。
これらの行動を怠ったまま、次のストロークをしてしまうと、
たとえ本人に1本のクラブを使う意思がなかったとしても失格になってしまいます。
吉田選手は、この手続きをせずに11番ホールをホールアウトしてから、12番ティーでルーリングを要請しました。
そこで立ち会った競技委員は、どの時点で15本のクラブを持ち運んでいることに気づき、
そのときにプレーから除外する手続きを行ったかを確認した上で、失格と裁定しました。
大事なことは、競技に出るプレーヤーは基本的なゴルフ規則を覚えておくということです。
特に規則4の「プレーヤーの用具」に関する項目は、
違反をすると失格になる場合があるので、確認しておくとよいでしょう。