- 9月2日(土)
- 球の上に乗ったミミズ解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
フェアウェイにある球の上に乗ったミミズを取り除いても良いかというルーリングは、
実際に今年の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で起こりました。
そのミミズは針のように細く、球の上で動いていたそうです。
つまり、生きている虫が球の上に貼り付いている状態であったことがわかります。
まず、ミミズは動物の中でも簡単に取り除けるため、ルースインペディメントとして定義されます。
ルースインペディメントはいつでも取り除くことができますが、
その際に球を動かしてはなりませんし、故意に触れることもできません。(規則15.1, 規則9.4b)
生きたミミズが球に乗っている場合は取り除いても良いのですが、
手やティーを使ってミミズを取り除こうとしたときに球に触れれば1罰打が課されます。(規則9.4b)
現実的に、その生きたミミズを球に触れることなく取り除くことはできなかったため、選手はそのまま打ちました。
もし、死んだミミズが球に付着している場合、
定義上ルースインペディメントにはならないため、それを取り除いてはなりません。
取り除いてしまった場合は、1罰打が課されます。(規則14.1c)
このように、虫が生きているのか死んでいるのかで定義が変わる裁定は稀ではありますが起こります。
虫は死んだふりをすることがありますので、その判断は難しいです。
- 9月9日(土)
- 「教えて!Nory」スイング区域の改善に当たるか否か解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
先日のラウンドで、同伴競技者のボールがOBライン付近に止まりました。
球はセーフだったのですが、OBライン付近には草木が密集していて、
スイングすると草木に当たる状態でした。
その同伴競技者から
「OBラインの外にある草や木には素振りのスイングで当たって葉っぱが落ちても、
枝が折れてもOBゾーンの中だから大丈夫だよね?」と聞かれました。
自信はありませんでしたが、僕は「多分だめだよ」と答えました。
結局、草木が落ちないように気をつけて素振りをしてそのままプレーを続けていましたが
この判断は正しかったのでしょうか?
【解説】
ご質問ありがとうございます!
回答から申しますと、出だしは質問者様が正しいです!
規則8.1を見ますと、「コースはあるがままにプレー」という原則を守るために
「ストロークに影響を及ぼす状態」は、コース内外を問わず保護されるとあります。
このコース内外問わずというのがポイントで、
コース外であるアウトオブバウンズの区域でも改善する行為をしてはならないということになります。
改善とはプレーヤーがストロークに対して潜在的な利益を得るために
物理的な状態を変えることです。(定義:改善)
トーナメントでもよく素振りで近くの葉っぱが数枚落ちたのですが、
罰になりますかと質問を受けることがあります。
例え葉っぱが数枚落ちたり、枝が折れたりしたとしても潜在的な利益は得ておらず、
改善がないとみなされた場合、罰はありませんが、
スイング区域の改善とみなされた場合は2罰打が課されます。(規則8.1a)
それなので、プレーヤーはコース内外問わず慎重に行動しなければなりません。
- 9月16日(土)
- スロープレーで失格!?解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
7月に開催された女子プロゴルフのメジャー大会、アムンディ・エビアン選手権の2日目に起きた
スロープレーによる過少申告で失格になったニュースついてお話しします。
LPGAツアーで通算2勝、スペイン出身のカルロタ・シガンダ選手は、インコースからスタートし、
7番ホールでスロープレーの警告を受け、次の8番ホールから計測になりました。
計測の結果、シガンダ選手は2回目のバットタイムを受け、米女子ツアーの規定に従い
最終ホールの9番ホールに2罰打が課されることになりました。
彼女は競技委員会に不服申し立てをしますが、斥けられ、
受けていた罰打を知っていたにもかかわらず、
その2罰打を最終ホールのスコアに足さずにスコアカードを提出しました。
その結果、規則3.3b(3)により過少申告で失格になりました。
2日目がスロープレーによる罰が無ければ4オーバーでギリギリ予選通過する位置にいましたが、
2罰打で予選落ちは確実になり、彼女は抗議の意思も込めて失格を選んだそうです。
シガンダ選手のスロープレーによる罰は今回が初めてではなく、
2021年のBank of Hope LPGA Match Playでも
スロープレーによりホールとマッチの負けになったそうです。
スロープレーヤーほどプレーヤー自身が遅いことに気付かないため、
私が計測する際は、選手のプレーを録画して動画に残すようにしています。
選手が今回のように不服な場合、
証拠を残しておくことはレフェリーのためにも選手自身の学びにも必要だと感じます。
第3者の目線で自身のスロープレーを見れば納得してくれるはずです。
- 9月23日(土)
- レッドペナルティーエリア(RPA)の暫定球?!解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
楽天スーパーレディースが開催された東急グランドオークゴルフクラブで起きたルーリングです。
4番ホール左側はレッドペナルティーエリアであり、
ティーショットがそのRPAに入ることが多い難しいホールでした。
ドッグレッグ左になっているそのRPAの中には木がたくさん生えており、
もしティーショットがそのRPAに入れば、救済を受ける場合の基点がかなり後方となり、
ラテラル救済や後方線上の救済よりもティーイングエリアからストロークと距離の救済の方が良い状況でした。
ある選手のティーショットが左のRPAに入りました。
RPAの中にある球をそのまま打てる可能性はあるけど、その球を確認した後に
ティーイングエリアに戻ることは大変だと考え、時間短縮のために「暫定球」を打ったというのです。
それで、RPAの中で球を捜索したけれど球は見つからず、
その「暫定球」でホールアウトしたとの報告をアテストエリアで受けました。
そもそも暫定球とはアウトオブバウンズやペナルティーエリア以外で
紛失の可能性がある場合にプレーされる別の球を指します。(定義:暫定球)
つまり、このケースで選手がプレーした「暫定球」とは規則上、認められない暫定球であり、
ストロークと距離の罰の元、インプレーの球になります。
今回は結果オーライになりましたが、
プレーヤーがペナルティーエリアに入ったとわかっている状況では
暫定球は打てませんので気をつけましょう。
- 9月30日(土)
- ジェネラルエリアについて解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
以前はスルーザグリーンという言葉が使われていましたが、
2019年からジェネラルエリアという言葉に置き換わりました。
今日は今更聞けないジェネラルエリアについてお話しします。
ジェネラルエリアとはコース上の大半を占めているエリアで、
定義された4つのコースエリアを除く全てのエリアを指します。
つまり、フェアウェイやラフ、木はすべてジェネラルエリアです。(規則2.2)
このジェネラルエリアを理解することの大切さは、
カート道などからの救済を受けるときの救済エリアや完全な救済のニヤレストポイントを決めるときにあります。
ジェネラルエリアにある球に対する無罰の救済が認められる場合は、
完全な救済のニヤレストポイントとその救済エリアはジェネラルエリアでなければなりません。(規則16.1b)
よくトーナメントで選手から受ける質問は、
フェアウェイにある球の救済箇所はフェアウェイで良いですかという質問です。
例えば、フェアウェイに打った球が一時的な水の中にあり、完全な救済のニヤレストポイントがラフになった場合、
ラフも定義上ジェネラルエリアなので、救済箇所はラフになります。
その反対のケースもあります。
ラフにあった球が一時的な水からの救済でフェアウェイに出られることもあります。
近頃は天候不良で長雨や高温のため、コースには修理地や一時的な水があることが多いと思います。
「ジェネラルエリア」をしっかり理解して、上手にルールを使いましょう。