楽天GORA presents タケ小山のルール・ザ・ワールド 2023年7月放送分楽天GORA presents タケ小山のルール・ザ・ワールド 2023年7月放送分

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7月1日(土)
「教えて!Nory」バンカーで並んだボール解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

同伴者2名のボールが同じバンカーに入ってしまい、2つ並んで止まっていました。

グリーンから遠いプレーヤーAが先に打つ際、
プレーヤーBのボールは、どのようにマークして、Aが打ったあと、バンカーは誰が均して、
どのようにリプレースしてBが打ったらいいのでしょうか。

マークの仕方とリプレース、バンカーの均し方など、
この場合の処置についてご説明いただければと思います。



【解説】

ご質問ありがとうございます!

バンカー内に寄り添って止まる球は、稀ではありますがトーナメントでも起こります。

プレーヤーAが先に打つ場合、
AはプレーヤーBの球をティーやボールマーカーでマークして
拾い上げてもらうことができます。


その後、そのティーをクラブヘッド分やクラブの全長を使用して
横に動かしてもらうこともできます。(詳説15.3/1)

プレーヤーAがプレーした結果、プレーヤーBのライが変えられている場合、
プレーヤーBは球が最初に止まっていた状態のライを復元しなければならないのですが、
その復元のためのバンカーを均す人は誰が行っても良いです。

プレーヤーBはボールマーカーを動かした逆の手順で元の位置に戻し、
球をリプレースしなければなりません。


ご添付いただいた写真をみますと、元々のライは、他のプレーヤーによる足跡のような
少し窪んだところに球があったことが確認できます。

ライを復元するとは、
その足跡も復元して球をそのような箇所に置くことを要求しています。(規則14.2d(1))
もしその復元をしなかった場合は、一般の罰が課されます。

7月8日(土)
フィル・ミケルソンのセカンドオピニオン解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

5月にOak Hill CCで開催されたPGAチャンピオンシップで起きた出来事です。
2日目の6番ホールでミケルソンはペナルティーエリアから後方線上の救済を受けようと球をドロップします。

ところが、ミケルソンは今年から後方線上の救済の規則が変わったことを知らなかったため、
昨年までの規則で基準線上から1クラブレングス以内のエリアに球をドロップしていました。


今年からは、基準線上にドロップをしなければなりません。
そのドロップを見ていたレフェリーは慌ててミケルソンに間違ったドロップであることを告げます。

ストロークを行う前なら罰なしで訂正できますが、
間違ったドロップでインプレーにした球をそのままプレーしてしまうと、誤所からのプレーで2罰打が課されます。(規則14.3b(4))
その時ミケルソンは正しく救済したと思い込んでいたため、セカンドオピニオンを要求しました。

規則20.2aには、
「プレーヤーはレフェリーの裁定を委員会に上訴する権利を持たない」とありますが、
裁定でレフェリーが他のレフェリーにセカンドオピニオンを求めることはできます。

従って、本来セカンドオピニオンとはレフェリーの権利であり、プレーヤーが要求することはできません。
しかし、アメリカのPGAやLPGAのように、
プレーヤーにセカンドオピニオンを許容している委員会もあります。

その結果、今回ミケルソンは
2人目のレフェリーからも同じ指摘を受けてようやく自分の過ちに気づきました。

誤りを訂正して2罰打を免れたミケルソンはレフェリーたちにとても感謝していたそうです。

7月15日(土)
トーナメントを観戦する際のマナー解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGAは年間レギュラーツアー38試合あり、今季は全試合でギャラリーが入り、
ステップアップツアーも23試合中半分ぐらいの試合でギャラリーが入ります。

今年5月に開催されたワールドレディスサロンパスカップの初日は、10,958人のギャラリーが来場し、
ツアー史上最多の初日ギャラリー数を更新したこともニュースになりました。

それに比べ、私が同週に担当したサンフランシスコで開催されたインターナショナルクラウンには、
目測で約千五百人しか入っていませんでした。
ギャラリーは選手達の力になるだけではなく、興行であるプロスポーツを支えているので、
日本女子プロゴルフツアーの人気は、そこで働く者として大変嬉しく感じました。

ほとんどのギャラリーは、選手を応援して楽しい一時を過ごしていると思いますが、
残念ながら、少数のマナーの悪い方もいます。

5月のある試合で、マナーの悪いギャラリーに遭遇しました。
そのギャラリーは前の組と2ホールぐらい開いていたある組の進行に文句を言い、
その組のプレーが遅いことを理由に自分自身の勝手な都合で、
「帰りの新幹線に間に合わない」とその組の選手達やキャディーを怒鳴りつけたのです。

実は、その組はちゃんと時間内にプレーしており、
前の組が9ホールを1時間59分で回ったため間隔が開いてしまったのです。
その組のキャディーは冷静に時間内でプレーしていることを告げましたが、
その場の雰囲気が悪くなってしまったことは明白です。

後に、その出来事を見ていたギャラリー整理の方がレフェリーに内容を教えてくれたのですが、
とても残念に思いました。

そこで、トーナメントを観戦するマナーとして、
選手を侮辱するような発言やコメント、またはどのような理由であっても
選手達やキャディーを怒鳴る行為はしないようにしましょう。


ギャラリーの意見や感想は大会関係者が対応します。
また、プレーのペースはその試合の委員会が決定しています。(規則5.6b(3))
その範囲内でプレーすることはプレーヤーの権利ですので、
温かい目で応援して頂けると嬉しいです。

7月22日(土)
明らかに不合理な場合、救済はない解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

カート道のような動かせない障害物や異常なコース状態からの救済を受ける場合、
規則書には「明らかに不合理な場合、救済はない」と記されています。(規則16.1a(3))

それは、例えば、プレーヤーの球がブッシュの中にあり、球を打つことができない状態なのに
スタンスがカート道の上にかかるという理由では、救済はないことを意味します。


このことについて、インターナショナルクラウンの初日に私が立ち会ったルーリングを元にお話します。

5番ホール、パー5、セカンド右ラフのカート道の近くにアメリカ代表のネリーコルダ選手の球がありました。
球から約10センチ右のところにカート道があり、
20ヤードぐらい先には木があるため同じラフでも左側が好ましい状況でした。

マッチプレーの随行レフェリーとしてその組に付いていた私は、コルダ選手から呼ばれ、
「球を打つとき、カート道が近いため不安なので救済が受けられるか」と問われました。
私は、「不安(英語ではDiscomfortと表現していました)という理由では救済は認められませんが、
どのようなスイングで球を打ちますか?」と答えました。

なぜなら、スイングがそのカート道に当たる状況なら救済が認められるからです。
そのとき彼女は強引に救済を認めさせようと、
「もし救済が認められないまま球を打って、私の手首が折れたらあなたのせいよ。」と言いました。
それに対して私は、「カート道が物理的な障害になるようでしたら救済が認められます(規則16.1a(1))ので、
この状況でストロークすると、クラブがカート道に当たると言ってください。」と続けました。

クラブがカート道に「当たる」ということは、障害が生じている状態の判断基準であり、
規則16.1a(1)には、異常なコース状態がプレーヤーの気を散らすほど近いだけでは障害はないと記されています。

結果的に彼女は球をスライスさせるためのクラブの軌道がカート道に当たることを説明し、
そのスイングは明らかに不合理ではないため、望んでいた救済を受けられたのですが、
最後まで、クラブがカート道に当たるとは言いませんでした。
色々な意味で私にとっては忘れられないルーリングとなりました。

このように、カート道のような異常なコース状態からの救済は無条件に認められる訳ではありませんので、
レフェリーを要請する場合は、選手のマナーとしてそのレフェリーを脅さず、
救済が認められる合理的な状況であることを示すようにしましょう。

7月29日(土)
大雨のとき、通常の中断や再開はどのように決定するのか解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

近年、線状降水帯や局地的な大雨など、天候が悪いときは極端に悪いと感じます。
天候不順は外で行うスポーツならではの悩みですが、今日は
大雨の場合どのような状態のときに中断して再開を決定するのかをお話しします。

オフィシャルガイドの6E(2)の「いつプレーの中断と再開をするのかの決定」には、
「ホールの周辺が全て一時的な水に覆われてしまい、
除去することができない場合...コースはプレー不能とみなされるべきで、
委員会は...プレーを中断すべきです」
とあります。

ホールの周辺以外でも、今年のブリヂストンレディスのように、
複数のホールでフェアウェイ全体が水で覆われ、救済箇所が10ヤード以上離れる場合や
フェアウェイの球の救済箇所がラフにしかないなど、委員会がアンフェアな状態だとみなした場合も中断します。

その判断はとても難しく、
できるだけホールを消化したい気持ちとフェアな競技を保つことの葛藤があります。

その他にも、オフィシャルガイドにはない、興行ならではの検討事項もあります。
例えば、TVの中継、ギャラリーが入る試合でしたらギャラリーの安全を確保することなど、
さまざまな部署の思いが考慮されます。

プレーを再開するときも同じです。
その日に再開を決定する場合は、コースの復旧作業や今後の天気予報などを見て決めます。
あまりにも長い中断はプレーヤーやキャディー、ギャラリーやボランティアも待ちくたびれてしまうので、
その日の再開が難しいと判断した場合は、早めにサスペンデットを決定するようにします。

トーナメントでは早くて最善な決断が求められるのですが、
何年レフェリーを経験しても難しいと感じます。
ちなみに、アメリカのツアーは気象予報士が同行しており、
天候が悪いときは委員会の決定に大きな力になってくれます。

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