桐林宏光の「メンタル強化術」第3回~ゴルフでゾーンに入るためのメンタルトレーニング方法
アプローチが直接カップインしたり、ロングパットが連続で決まったり。プロが試合中、奇跡のようなプレーを連発すると、解説者は「ゾーンに入っていますね」といったりする。「ゾーンに入る」なんて、われわれアマチュアのゴルフとは別世界のように思えるが……。
スポーツメンタルトレーニング指導士の桐林宏光プロによれば、「そんなことはありません。プロと同じように奇跡的なプレーができるかはスキルの問題も関係してきますが、プロスポーツ選手が感じているのと同じゾーンに入ることは可能です」という。
メンタルトレーニングでゾーンに入ることができるなら、ぜひ実践してスコアアップに生かしたいもの。トレーニング方法を教えてもらった。
ゾーンに入るってどういうこと?
そもそもゾーンに入るというのは、具体的にどういう状態を指すのだろう?
「要はものすごく集中している状態です。落ち着きがないときは、『池は見ない』と自分にいい聞かせてもバックスイングの瞬間に目に飛び込んできてしまうなど、余計な物が全部見えてしまいます。ゾーンに入れば集中している物以外は目に入らないし、音や声も耳に入りません。それだけ集中力を高めることで、パットのラインがはっきりと見えたり、これから打つスイングのシミュレーションが完璧にできたりするなど、奇跡のショットが生まれる土台が整うのです」
余談だが、トップのプロスポーツ選手の中には生意気、変わり者などと思われている人も多い。そういう評価を受けるのは、ゾーンに入ることができるほど高い集中力を有しているがゆえ、ともいえるのだそう。
「これから始まる試合に集中していると、例えばクラブハウスで先輩に『がんばれよ』と声をかけられても、気づかないんです。私たちが真似して集中しているフリをしても、『どう思われただろう』などクヨクヨしてストレスになるばかりですが、集中力が高い人はそんなことはどうでもいい。それぐらい試合に集中できるんです。何も聞こえなくなるぐらい自然に集中を高めることができる人は、プロスポーツ選手向きといえるでしょう」
「ゾーンに入る」には「見ること」
では、ゾーンに入るためには何をすればいいのだろう?
「とにかく見ることです。例えば目の前にコップを置き、それを10秒間、まばたきもしないでジーッと見つめてください。10秒後にコップをどかしても、残像が見えるようになることが目標です。そのぐらいひとつの物に心を集めることができるようになると、ラウンド中も『絶対にあそこに運ぼう』『このラインにこの強さで打ち出す』など、やるべきことに集中できるようになってきます」
ゾーンに入るほど集中力を高められれば、「ダフるかも」、「ミスするかも」など不安を感じることも皆無。安心してスイングできるようになるのだ。
教えてくれた人: 桐林宏光(きりばやし・ひろみ)プロ
1964年生まれ東京都出身。大学卒業後にゴルフを始める。社会人入学で、筑波大学大学院体育研究科体育方法学に入学しスポーツ心理学やメンタルトレーニングを学ぶ。日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロフェッショナル会員A級。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。
文/及川愛子(ゴルフライター)
桐林宏光の「メンタル強化術」記事一覧
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