桐林宏光の「メンタル強化術」第9回~ラウンド中、右脳を使えるようになればミスショットは激減する
アドレスしてから始動まで、あなたはどんなことを考えているだろう。「ヘッドから始動させないように、左ひじは伸ばしたまま……そうだ、右ひざの向きに気をつけなきゃ」など、スイングの注意点で頭がいっぱいという人、多いのではないだろうか。
スポーツメンタルトレーニング指導士の桐林宏光プロによれば、「それこそがミスを呼び込む原因です。注意点を気にしてばかりいると、ミスどころか、バックスイングを始動できなくなる恐れも。重症なイップスになりかねません」という。
チェックポイントを羅列するのがNGな理由は、左脳を使いすぎるためだという。ナイスショットとミスショットの分かれ目は、スイングする際に「左脳」を使うか「右脳」を使うかという脳の切り替えにあるそう。右脳を使えるように脳の働きを切り替えるにはどうすればいいのか、コツを教えてもらった。
左脳と右脳の役割
人間の脳には左脳と右脳があるのはご存じのとおり。それぞれの脳には役割があり、左脳は主に言語や論理、思考を司るのが仕事。右脳は五感やイメージ、感覚を働かせる役割を担っている。
「ゴルフでは両方の脳をバランスよく使うのが理想です。コースマネジメントや風の計算、番手を選ぶときには左脳の論理的な思考が大いに役立ちます。ただし、頭でっかちのままでは体はスムーズに動いてくれません。いざボールを打つときには、左脳的思考はいったん横に置いておいて、『ボールがまっすぐ飛んで行く』『ヘッドがボールの芯を食った感触』など右脳でナイスショットのイメージを膨らませてショットに臨むのがベスト。実際に体を動かすには、論理よりイメージを重視したほうがうまくいくのです」
とはいえ、せっかく練習場でつかんだ注意点を頭からすっ飛ばして、何も考えずにスイングするのは不安なもの。注意点を思い出しつつ、右脳モードでショットすることは可能なのだろうか。
右脳を使うコツは「キュー・ワード化」にあり!
右脳を使ってスイングするには、スイングを抽象化することがポイントだという。
「スイングをキュー・ワード化してみましょう。キュー・ワードというのは、合図や指示の言葉という意味。テレビ番組で出演者が話し始めるタイミングを教える『キュー!』と同じ意味です。スイングのキュー・ワード化というのは、『左肩があごに入って手首のコックが90度で……』と長々しく考えるのではなく、そのスイングを『赤いスイング』とか『卵のスイング』など、短い言葉で置き換えるのです。『ガーッと振る』とか『ピョンと振る』などの擬態語でかまいません。『卵のスイング』とは何か、人に説明できなくてもいいんです。抑えた感じ、やわらかく振る感じなど、スイングをイメージとしてとらえることで、右脳モードでスイングできるようになります」
左脳モードで注意点を1個ずつ覚えていようとすると、いざ本番で抜けてしまうことも多いもの。
「私の生徒さんでも、練習場でさんざん打ってきたのに、コースに出ると『ええっと、何をどうするんだっけ?』と頭が真っ白になってしまう人がいます。キュー・ワードで覚えたゴルフなら、イメージとして覚えるので、動きを再現しやすいのもメリットといえます」
「今日は青のスイングで行こう」と決めたら、スコアカードの端っこに「青」とひと言書いておくのもオススメ。右脳モード全開で、ナイスショットを目指そう!
教えてくれた人: 桐林宏光(きりばやし・ひろみ)プロ
1964年生まれ東京都出身。大学卒業後にゴルフを始める。社会人入学で、筑波大学大学院体育研究科体育方法学に入学しスポーツ心理学やメンタルトレーニングを学ぶ。日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロフェッショナル会員A級。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。
文/及川愛子(ゴルフライター)
桐林宏光の「メンタル強化術」記事一覧
(1) 肝心なパットほど入らない編 - (2) イップスやシャンク克服編 - (3) ゾーンに入るメンタル術編 - (4) 投げやりプレーを防止編 - (5) 打たずに打数を縮めるイメトレ編 - (6) ミス連発でもパニくらない編 - (7) ミスショットは反省しないで編 - (8) ラウンド前日のダメな練習編 - (9) 右脳を使ってミスショット撲滅編 - (10) 後半9ホールを崩さないメンタル術編 - (11) 出だし3連続パーから好調を維持編 - (12) 池を避けるゴルフ脳編 - (13) 絶不調なら3日はクラブを握らない編 - (14) 待ちミス・待ちチョロを防ぐ編 - (15) 前日の睡眠不足解消編 - (16) 脱練習場シングル練習法編 - (17) スイングのリキみを取る方法編