QP関雅史のギア分析!第20回・もっとも止まりやすいアイアンのタイプは?
2021.12.03
Q.アイアンのヘッド形状で、ポケットキャビティとキャビティバックとマッスルバックで、止まりやすさはどう違うものでしょうか。また、それぞれの長所を教えてください。それからスライスのミスが多いのですが、スライスに一番強いのはどの形状でしょうか?
A.マッスルバックは思い通りにボールを操作して、ねらったところに止めるのに特化したアイアン。ポケットキャビティはまっすぐ遠くへ飛ばすための形。キャビティバックは両者の中間です。
スピンがかかりやすく、球が上がるのはマッスルバック
最初にそれぞれのヘッド形状と止まりやすさの関係について、ゴルフ専門誌などのテスターとして数多くのクラブを打ち比べている関雅史プロに説明してもおう。
「ニワトリが先か卵が先かの話ではありませんが、マッスルバックの一番の特徴はヘッドがコンパクトに作られているところです。かといってキャビティバックやポケットキャビティに比べてヘッドが軽いわけではありません。その分の重量はどこにいったのかといえば、ホーゼルです。マッスルバックはホーゼルが長く作られていて、重量がヒール寄りに集まっているため、重心距離が短くなっています。ヘッドが返りやすく操作しやすいのはそのためです。ホーゼルが長い分だけ重心も高くしやすいので、スピンのかかりやすいヘッドを作ることができるのです。一方、最近のアイアンはストロングロフト化していますが、ほとんどのマッスルバックアイアンはいまだにクラシカルロフトを採用しています。クラシカルロフトのアイアンは、5番で27度といまどきのアイアンよりもロフトが寝ています。したがって、特別に飛ぶわけではありませんが、その代わり打ち出し角が高くなります。スピンがかかりやすく、球が高く上がるマッスルバックは間違いなく止まりやすいアイアンです」
ポケットキャビティは止まりやすさよりも飛距離重視
マッスルバックと比べて、キャビティバックやポケットキャビティの止まりやすさはどうか。
「キャビティバックは重量がトゥ・ヒールとソールに配分されています。したがってマッスルバックと比べて重心が低いので、余計なスピンがかかりにくくなっています。また、左右の慣性モーメントが大きく、ヘッドがぶれにくいのでサイドスピンもかかりにくくなっています。重心が低いため基本的に球は上がりやすいのですが、ほとんどのモデルには上がりやすいことを生かしてストロングロフトが採用されています。アスリート向けの軟鉄鍛造モデルでも1度前後、アベレージ向けだと1番手(3度)前後立っているので、ボールが前に飛ぶ力が強く、その分マッスルバックよりも止まりにくくなっています。また、ポケットキャビティは、キャビティバックよりもさらに重心を低く深くすることができます。したがって、キャビティバックよりもスピン量は少なくなる傾向です。また、フェースに反発性能に優れた異素材を採用している場合が多く、そういったモデルは球離れが早い分だけさらにスピンが減ります。ロフトも1番手から2番手くらい立っているので、止まりやすさよりは、完全に飛距離重視型といっていいいでしょう」
もっともスライスしにくいのはポケットキャビティ
最後にスライスなどミスショットに強いのはどのタイプか。それぞれの長所と合わせて教えてもらった。
「マッスルバックの長所は操作性です。ヘッドを思ったように動かしやすいので、テクニックさえあれば球のつかまりや高さを自在にコントロールできます。また、手に振動が伝わるので、自分がどういうミスをしたかわかりやすいのも特徴。そのクラブで一生懸命練習して腕を磨いて行きたい人におすすめします。ポケットキャビティの長所は飛距離性能と寛容性です。慣性モーメントが大きく球を曲げづらいところはありますが、逆にいえばクラブが曲がりを抑えてくれるのでスライスも軽減されます。初中級者にはもっともやさしいクラブです。キャビティバックは両者の中間で、操作性と寛容性の両方を兼ね備えています。ただ、ひとくちにキャビティバックといっても、キャビティの浅いものから深いものまで様々です。迷ったときにはソールの幅で比べるといいでしょう。幅の広いものほど寛容性が高く、狭いものほど操作性が高いと覚えておいてください」
ねらったところへできるだけ正確に打っていきたいのか、それともできるだけ遠くへ飛ばしたいのか。選ぶべきアイアンのカタチは自分が何を求めるかで変わってくる。
教えてくれた人 関雅史(せき・まさし)プロ
1974年9月28日生まれ、PGA公認A級インストラクターとクラブフィッターの二足のわらじを履く異色プロ。これまで指導したゴルファーは延べ1万人以上、クラブフィッティングは3000人以上。東京都北区でゴルフスタジオ『ゴルフフィールズ』を主宰する傍ら、雑誌・テレビ等メディアでも活躍中。
構成/吉田宏昭(ゴルフライター) 撮影/斉藤秀人 撮影協力/ゴルフフィールズ
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