- 5月3日(土)
- 笠りつ子選手のRPAの処置について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
VポイントxSMBCレディスの2ndラウンド、13番ホールで起きたルーリングが大きなニュースになりました。
13番ホールは大会を通して難易度の高い390ヤードのパー4で、
ホールの左側はグリーンの奥まで続くレッドペナルティーエリアでした。
笠選手のティーショットはそのレッドペナルティーエリアに入り、ラテラル救済の処置を自ら行いました。
2クラブレングスの救済エリアの芝地はペナルティーエリアの方に傾斜していたため、
ドロップした球はペナルティーエリアを定める線の近くまで転がりましたが、
救済エリア内に止まったため、正しくインプレーになりました。
ところが、彼女は意図するスタンス区域がペナルティーエリアにかかったため、
再ドロップが必要と勘違いし、その球を拾い上げてしまいました。
2回目のドロップ後も同様に球を拾い上げ、2回目にドロップしたときにその球が最初に地面に触れた箇所に球をプレースしました。
そこからアドレスをしたところ、意図するスタンス区域がまたペナルティーエリアにかかったため、競技委員を要請しました。
立ち会った競技委員は選手から
「ラテラル救済の処置のためドロップを2回して球が止まらなかったので、2回目に球をドロップしたところにプレースしたのですが、
スタンスがレッドペナルティーエリアにかかります。これは大丈夫なのでしょうか?」
と質問されたため、
「意図するスタンス区域がペナルティーエリアにかかっていても球が救済エリア内にあればインプレーです」
と答えてルーリングは終了しました。
そして、彼女は誤った箇所にプレースした球をプレーしたことで、後に誤所からのプレーの一般の罰が課されました。(規則14.7a)
もし、競技委員が要請された現場でその誤りに気づくことができたら、ストロークを行う前でしたので、
1回目のドロップで球が止まった箇所にリプレースしてその誤りを訂正することができました。(規則14.5)
そうすることで、誤所からのプレーの一般の罰は免れることができますが、
例えその処置をしたとしても、インプレーの球を動かした規則9.4の違反による1罰打を免れることはできません。
そのため、レッドペナルティーエリアの1罰打を含む合計2罰打の4打目としてプレーすることができました。
しかし、実際は、3rdラウンドで最終組が終盤のホールに入った頃、委員会は大会関係者より前日の笠選手の誤った処置を知りました。
彼女に確認したところ、球をドロップした後はペナルティーエリアにスタンスがかかってはいけないと思い込んでおり、
その誤りに気づきました。
彼女は1回目のドロップで正しくインプレーになった球を拾い上げ、
その球が止まった箇所にリプレースせずに誤所からプレーしたので、一般の罰を受けます。(規則9.4、14.7)
競技終了前に発覚した事実だったので、委員会はそのホールのスコアに含めるべきであった罰打を加え、
2ndラウンドの13番ホールのスコアを「6」から「8」に修正しました。(規則3.3b(3))
この件に関して非常に残念なポイントが3つあります。
1つは笠選手自身が要請前に行った処置の誤りに気付き、立ち会った競技委員に伝えてほしかったことです。
2つ目は立ち会った競技委員も選手が行った処置を一から具体的に聞いてほしかったことです。
3つ目はJLPGAから発表された「視聴者による指摘で発覚したルール違反」という内容です。
2021年以降、JLPGAは一般視聴者によるルール違反の指摘は受け付けない方針にしていますが、
大会関係者がモニターを見て気づいた違反を「視聴者」という誤解を招く言葉で表現したことで訂正が入り、
問題を更に大きくしてしまいました。
また、この件で「選手は失格ではないか」という質問を多く受けましたが、これは大きな誤りです。
選手は委員会から指摘されるまで自身の誤りに気づいておらず、
今回のように競技終了前に発覚した場合は
そのホールのスコアに含めるべきであった罰打を加えることでホールのスコアを修正します。
もし、競技終了後に発覚した場合は、
競技が終了する前に選手は罰を受けていたことを知らなかったため、
「6」で提出したスコアは訂正してはなりません。(規則20.2e(2))
つまり、13番ホールのスコアは6のままで罰打を加えることなく、また失格にもなりません。
アマチュアの模範であるプロゴルファーはゴルフ規則を知っておくべきですが、プロも人間ですので勘違いや失敗もあります。
当然のことながら心無いコメントに傷付きます。
どうか温かい目でプレーヤーを見守って頂けますと幸いです。