楽天GORA presents タケ小山のルール・ザ・ワールド 2025年5月放送分楽天GORA presents タケ小山のルール・ザ・ワールド 2025年5月放送分

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5月3日(土)
笠りつ子選手のRPAの処置について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

VポイントxSMBCレディスの2ndラウンド、13番ホールで起きたルーリングが大きなニュースになりました。

13番ホールは大会を通して難易度の高い390ヤードのパー4で、
ホールの左側はグリーンの奥まで続くレッドペナルティーエリアでした。

笠選手のティーショットはそのレッドペナルティーエリアに入り、ラテラル救済の処置を自ら行いました。

2クラブレングスの救済エリアの芝地はペナルティーエリアの方に傾斜していたため、
ドロップした球はペナルティーエリアを定める線の近くまで転がりましたが、
救済エリア内に止まったため、正しくインプレーになりました。

ところが、彼女は意図するスタンス区域がペナルティーエリアにかかったため、
再ドロップが必要と勘違いし、その球を拾い上げてしまいました。

2回目のドロップ後も同様に球を拾い上げ、2回目にドロップしたときにその球が最初に地面に触れた箇所に球をプレースしました。

そこからアドレスをしたところ、意図するスタンス区域がまたペナルティーエリアにかかったため、競技委員を要請しました。

立ち会った競技委員は選手から
「ラテラル救済の処置のためドロップを2回して球が止まらなかったので、2回目に球をドロップしたところにプレースしたのですが、
スタンスがレッドペナルティーエリアにかかります。これは大丈夫なのでしょうか?」
と質問されたため、
「意図するスタンス区域がペナルティーエリアにかかっていても球が救済エリア内にあればインプレーです」
と答えてルーリングは終了しました。

そして、彼女は誤った箇所にプレースした球をプレーしたことで、後に誤所からのプレーの一般の罰が課されました。(規則14.7a)

もし、競技委員が要請された現場でその誤りに気づくことができたら、ストロークを行う前でしたので、
1回目のドロップで球が止まった箇所にリプレースしてその誤りを訂正することができました。(規則14.5)

そうすることで、誤所からのプレーの一般の罰は免れることができますが、
例えその処置をしたとしても、インプレーの球を動かした規則9.4の違反による1罰打を免れることはできません。

そのため、レッドペナルティーエリアの1罰打を含む合計2罰打の4打目としてプレーすることができました。

しかし、実際は、3rdラウンドで最終組が終盤のホールに入った頃、委員会は大会関係者より前日の笠選手の誤った処置を知りました。

彼女に確認したところ、球をドロップした後はペナルティーエリアにスタンスがかかってはいけないと思い込んでおり、
その誤りに気づきました。

彼女は1回目のドロップで正しくインプレーになった球を拾い上げ、
その球が止まった箇所にリプレースせずに誤所からプレーしたので、一般の罰を受けます。(規則9.4、14.7)

競技終了前に発覚した事実だったので、委員会はそのホールのスコアに含めるべきであった罰打を加え、
2ndラウンドの13番ホールのスコアを「6」から「8」に修正しました。(規則3.3b(3))

この件に関して非常に残念なポイントが3つあります。

1つは笠選手自身が要請前に行った処置の誤りに気付き、立ち会った競技委員に伝えてほしかったことです。

2つ目は立ち会った競技委員も選手が行った処置を一から具体的に聞いてほしかったことです。

3つ目はJLPGAから発表された「視聴者による指摘で発覚したルール違反」という内容です。

2021年以降、JLPGAは一般視聴者によるルール違反の指摘は受け付けない方針にしていますが、
大会関係者がモニターを見て気づいた違反を「視聴者」という誤解を招く言葉で表現したことで訂正が入り、
問題を更に大きくしてしまいました。

また、この件で「選手は失格ではないか」という質問を多く受けましたが、これは大きな誤りです。

選手は委員会から指摘されるまで自身の誤りに気づいておらず、
今回のように競技終了前に発覚した場合は
そのホールのスコアに含めるべきであった罰打を加えることでホールのスコアを修正します。


もし、競技終了後に発覚した場合は、
競技が終了する前に選手は罰を受けていたことを知らなかったため、
「6」で提出したスコアは訂正してはなりません。
(規則20.2e(2))

つまり、13番ホールのスコアは6のままで罰打を加えることなく、また失格にもなりません。

アマチュアの模範であるプロゴルファーはゴルフ規則を知っておくべきですが、プロも人間ですので勘違いや失敗もあります。

当然のことながら心無いコメントに傷付きます。
どうか温かい目でプレーヤーを見守って頂けますと幸いです。

5月10日(土)
くい込んだ球の判断と処置解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGAツアー開幕のダイキンオーキッドレディスは沖縄の琉球ゴルフ倶楽部で開催されましたが、
そこで起きたルーリングをもとに「くい込んだ球の判断と処置」を解説します。

琉球ゴルフ倶楽部の芝はコーライでラフはティフトンが混じっていることにより、
ラフに打ち込んでしまうと球全体が沈んでしまい、とても難しいショットになります。

そして球全体がラフに沈むと、プレーヤーは地面にくい込んでいるのではないかと確認のためルーリングを呼ぶことが多々あります。

実際、トーナメント初日の1番ホール左ラフでくい込んだ球かの確認でルーリングに呼ばれました。
状況を調べてみると、その球は地表面よりも下にはなかったため、救済は認められませんでした。

このルーリングが今年JLPGAツアー最初のルーリングで、立ち会った私はファーストペンギンになりました。

ファーストペンギンとは
ペンギンの群れの中から天敵がいるかもしれない海に魚を求めて最初に飛び込む勇敢なペンギンなのですが、
それに比喩して委員会はこれから始まる長いシーズンの最初にルーリングに立ち会った競技委員にその名称を与えます。

委員会の慣例でファーストペンギンはご飯をご馳走してもらえます。


それはさておき、そもそも
地面にくい込んでいる球で罰なしの救済が認められるのはジェネラルエリアにある球、
例えばラフやフェアウェイ、カラーにある場合のみです。


そして、プレーヤーの直前のストロークの結果作られた自らのピッチマークの中にあり、
その球の一部が地表面以下にある場合です。
(規則16.3a(1)(2))

稀に、フェアウェイに転がった球が別のプレーヤーの作ったピッチマークに入ってしまうことがあります。

そのような場合は罰なしの救済はありません。

そのため、後からプレーするプレーヤーへの配慮とコースの保護を目的として
フェアウェイなどでも自ら作ったピッチマークはストロークした後に修復することをお勧めします。



プレーヤーは球が地表面を割っているのか確認するのに、
球をマークして拾い上げることができます。
(規則16.4)

このときに拾い上げた球を拭くことはできませんので注意が必要です。(規則16.4)

球を拾い上げた後、ピッチマークが地表面以下にあるのか目視で判断できない場合、
ライを改善しないように気を付けながら、手で地面に触れて確認することがあります。

この時点で救済が認められないと判断すれば、その球を元の箇所にリプレースします。


救済が認められる場合は、球が地面にくい込んでいる直後の箇所を基点として、
ホールに近づかない、1クラブレングスのジェネラルエリアに球をドロップすることによって
救済を受けることができます。


このときに球を拭いたり取り替えたりすることもできます。(規則14.3a、14.1c)

2023年から新たに追加された詳説に球の直後の箇所がジェネラルエリアではない場合の救済があります。(詳説16.3b/1)

このような状況は、球がジェネラルエリアにくい込んでおり、
球の直後の箇所がバンカー、ペナルティーエリア、またはアウトオブバウンズの場合があります。

このような状況ではホールに近づかないジェネラルエリアの箇所を見つけるために
左右や後ろに幾らかの距離を取ることが必要となるかもしれません。

くい込んだ球の処置を覚えていただけるとご自身のプレーに役立つことがあるかもしれません。

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