- 7月6日(土)
- 「教えて!Nory」解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
先日、とある競技で、サブグリーンにオンして、グリーンの外へのドロップする際、
グリーンのカラーか、カラーじゃないかで
キャディーとプレーヤーとで見解が異なるケースがありました。
カラーも避けてのドロップが必要になるローカルルールなのですが、
カラーとわかるような明確なカットがされていないゴルフ場では、
フェアウェイの一部とみなされ、ドロップ可との意見も。
一応、そこから、2ボールでプレーし、後で、競技委員に確認したら、
カラーではなくドロップ可のエリアだということでしたが、キャディーは違う見解でした。
プロがトーナメントで使うようなゴルフ場でも、
このようなケース(カラーが曖昧)があったりするのでしょうか?
【解説】
ご質問ありがとうございます!
回答から申しますと、JLPGAの競技でも目的外グリーンとそのカラーの縁が曖昧なときがあります。
中には、目的外グリーンなのかそうでないのかがわからなくなってしまっているものもあります。
そのような時は、キーパーにお願いして
グリーンであることがはっきりとわかるように芝を刈っていただきます。
プレーヤーが救済するのに困らないようにするためです。
JLPGAは目的外グリーンからの救済の際、カラーからのプレーを禁止していないため、
完全な救済のニヤレストポイントはそのグリーンに隣接するカラーになり、
そこからストロークを行うとディボット跡ができることがあります。
それを防ぐ目的として、コースにより、目的外グリーンからの救済で
カラーからのプレーを禁止するローカルルールひな型D-4を採用しているのでしょう。
このようなローカルルールを採用するときは、
目的外グリーンの縁から、例えば2クラブレングスなどの距離や区域を明記し、
その拡大された区域を目的外グリーンの一部として扱います。
今回のケースはカラーの部分が目的外グリーンの一部と見なされる一方で、
カラーとフェアウェイの境がわからない場合は、その場でレフェリーを呼ぶことをお勧めします。
それが難しい場合は、ご質問者様のように2つの球をプレーすることですが、
完全な救済のニヤレストポイントを決める際に、
おそらくこの辺りが境であろうというプレーヤーの合理的な判断は、規則1.3b(2)により受け入れられるため、
例え間違った場所でプレーしていたとしてもプレーヤーに罰が課されることはないでしょう。
そしてコースや競技を運営する側も、このようなローカルルールを採用する場合は、
混乱を招かないよう目的外グリーン周辺の境を明確にしておくべきです。
ご参考にしていただければ嬉しいです。
- 7月13日(土)
- ワンボールルールのオンリーボール解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
CTBCレディースオープンは台湾の桃園国際空港の近くに位置するオリエントゴルフ&CCで開催され、
JLPGAのステップ・アップ・ツアーと台湾女子プロゴルフ協会(TLPGA)が共催する特別競技です。
この大会はTLPGAのローカルルールで競技は行われるため、
JLPGAにはないローカルルールひな型G-4ワンボールルールが適用されます。
ワンボールルールは、
プレーヤーがそのホールの特徴やラウンド中にプレーするショットに応じて
異なるプレー性質を持つ球を使うことを防ぐために、
適合球リストに掲載されている一種類の球を使うことをプレーヤーに求めるルールです。
大会初日の出来事です。
ある選手が18番ホールでレッドペナルティーエリアの中を必死に球の捜索をしていたので、
選手に近寄り、ラテラル救済に立ち会いました。
すると選手の方から、「これが今日持って来ている最後の1球なのですが、
これを失くしたらどうすれば良いですか?」と尋ねられました。
この日は平均風速が7.7m/sの強風だったこともあり、
スタートしてハーフを終える前に球を4つ失くしてしまったのです。
私は彼女に「クラブハウスで購入したり、他の選手から借りたりすることができるが、
同じブランドの同じモデルでなければならないこと、また違う球だと承知の上で
違うタイプの球でプレーしてしまうと失格になること」を伝えました。(ローカルルールGー4)
彼女はインコーススタートだったため、まだ残り9ホールをプレーしなければなりません。
委員会は彼女が18番ホールプレー中に、クラブハウスで売られている球を調べたり、
近くにいた選手に球の種類を尋ねましたが、残念ながら同じタイプの球は見つかりませんでした。
そこで前日のプロアマに参加していたJLPGAの理事に尋ねると、
同じブリヂストンボールの同じ「Tour B X」モデルの球を6つ持っていました。
しかし選手の球とよく見比べてみると、
表記されている「Tour B X」の左右にあるアローのようなデザインが少し違うのです。
これは同じモデルでも製造された年が違うことを意味していました。
そして急いでR&Aのホームページの適合球の掲載リストを確認したら、
製造年が違うと別のタイプの球だと判断されることがわかりました。
選手には、残念ながらその球は使えないと伝えると、不安そうに1番ホールへターンしていきました。
そんな緊張感の中、プレーしている球をなくすことなく、後半のプレーは進みました。
しかし今度は別のハプニングが起こったのです。
スリーサムでプレーしていた彼女の組の同伴プレーヤー2人が棄権してしまったのです。
危うく失格になるところだった彼女は、残りのホールをたった1人でプレーすることとなり、
レフェリーがマーカーとして随行しながら何とかラウンドを終えることになりました。
ワンボールルールに関しては、楽天GORAルール・ザ・ワールドのバックナンバーで
2022年5月14日にも取り上げましたので、ご参照いただけると嬉しいです。
- 7月20日(土)
- 「教えて!Nory」解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
タケさん、ダブルのーりさん、おはようございます。
1つ質問ですが、ワールドレディースの2日目、
櫻井ココナッツちゃんのティーショットが右の林に打ち込まれて、
ボールがどこかに引っかかって地上に落ちてこなかったので、そのボールを発見するためだと思いますが、
櫻井プロのキャディーさんがペットボトルをボールが有ると思われるところに向かって投げ上げているのが
TV画面で放映されていました。
その結果、ボールが落ちてきたらそのボールはセーフあるいはインプレーとして、
そのままプレーを続けることができるのでしょうか?
ペナルティーとかは発生しないのでしょうか?
実際、心那プロはティーイングエリアに戻って打ち直しました。
ご教示のほどよろしくお願い致します。
【解説】
ご質問ありがとうございます!
球が木の上に止まってしまった場合、プレーヤーは球を確認する合理的な行動として
ペットボトルを投げて木の上に止まった球を落とし確認することは認められます。(規則7.1a)
その結果、木から球が落とされプレーヤーの球が動かされたとしても罰はありません。(規則7.4)
本来でしたら、プレーヤーはその球をリプレースしなければなりませんが、
1罰打でアンプレヤブルの球として直接救済することもできます。
この場合、アンプレヤブルの球としての救済措置は3つの選択肢があり、
木の上に止まっていた球の箇所の真下の地面を基点としたラテラル救済(規則19.2c)、
元の球の箇所とホールを結ぶ線上で元の球があった箇所よりホールに近づかない後方線上の救済(規則19.2b)、
そして櫻井選手がとったストロークと距離の救済(規則19.2a)です。
木の上に止まった球の確認方法については、楽天GORAルール・ザ・ワールドのバックナンバーで
2022年11月12日にもカバーしていますので、ご参照いただけますと幸いです。
- 7月27日(土)
- 入れ替わったスコアカード解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
CTBCレディースオープンは台湾の桃園国際空港の近くに位置するオリエントゴルフ&CCで開催され、
JLPGAのステップ・アップ・ツアーと台湾女子プロゴルフ協会(TLPGA)が共催する特別競技です。
その大会競技終了後の出来事です。
あるプレーヤーは競技の最終成績表に記載されていた自身のスコアに誤りがあることに気付きました。
そのプレーヤーは最終日に75でホールアウトしたはずが、その日一緒に回った同伴プレーヤーの
78のスコアが記載されていて、2人のスコアが逆になっていました。
その2人のプレーヤーは、最終日に2サムで回っており、
スタートテントでお互いに本人の名前が書かれたスコアカードを、誤って手渡されていたことに気が付かず、
プレーヤーのスコアがそのマーカーのスコアカードに記録され、そのマーカーのスコアが
そのプレーヤーのスコアカードに記録されたものを提出していました。
その事実が大会終了後にJLPGAの事務局に伝えられ、ホテルに戻ったばかりの委員会に連絡がありました。
事務局は、過少申告してしまったプレーヤーは失格になるのではないかと心配しましたが、そうではありません。
規則上、このケースの誤りの本質は運営上の問題となるので、罰は付かず、
また訂正を行うための時限もありません。(詳説3.3b/2)
つまり大会終了後にこのような誤りが発覚しても、
スコアカードの名前と成績表のスコアを修正すればよいだけとなります。
本来、スコアカードに署名漏れやスコアに誤りがあると罰が付きますが、
今回、2人のプレーヤーのスコアカードにはプレーヤーの署名とマーカーの署名があり、
正しいホールのスコアが記入されていました。
唯一の誤りがそのスコアカードに指定されていたプレーヤーのスコアが記録されず、
マーカーのスコアが記録されていたことです。
これは正しい情報がスコアカード本来の記入場所以外のところに誤って記入されただけで、
その情報は依然として受け入れられます。
競技は終了していたものの、プレーヤー2人は委員会に
どちらのスコアカードがプレーヤーのものなのかが伝えられた時点で、成績表の修正がされました。
2人のプレーヤーと関係者一同は、皆「ほっ」と胸を撫で下ろした一件でした。