楽天GORA presents タケ小山のルール・ザ・ワールド 2024年6月放送分楽天GORA presents タケ小山のルール・ザ・ワールド 2024年6月放送分

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6月1日(土)
霧の中でのプレー解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

昨年6月のリシャール・ミル ヨネックスレディスゴルフトーナメントは、静岡県の朝霧ジャンボリーで開催されました。
会場は富士山麓の標高800mに位置するのですが、大会当週は練習日から連日霧が発生しました。

更に金曜日から土曜朝にかけては、台風による300mm以上の激しい雨が降り、
土曜日の昼12時にようやく1ラウンド目が開始できるという状況でした。

雨が上がった後は雲一つない快晴となり、目の前の富士山は雄大で美しく、
この日は無事に1ラウンドを終えられると思った矢先です。
16時過ぎに急に冷たい空気が流れ込み、徐々に霧が出てきて、
17時過ぎにはコース全体が雲の中に入った状態でした。

霧は競技をする上で最も扱いが困難な自然現象です。
雨と違って、いつ発生していつ晴れるか全く予測がつきません。
また18ホールあるコースでは、晴れているホールがあれば、霧で見えないホールもあります。

このように競技中に霧で予測がつかなくなったとき、競技委員会はプレーの中断をせずに、
その各組の状況にあわせてプレーを続けるか、止まるかの判断を
プレーヤーに委ねることがあります。


例えば、霧の中でティーショットをする場合、プレーヤーの飛距離が230ヤードだとすると、
ティーから230y離れたランディングエリアのフェアウェイのライン、
バンカーやペナルティーエリア、そして樹木などが見えるのであれば、
部分的にモヤがかかっていてもプレーを続けます。

これはグリーンに向かってプレーするときも同じで、
例えばセカンド地点からグリーンの形、旗竿、グリーン周りのバンカーなどが
薄っすらでも見えたらプレーを続けます。
これらが見えなければ止まり、また晴れてくればプレーを進めます。

しかし委員会は、霧が濃くなる一方で回復の見込みがないと判断すれば、そこでプレーを中断します。
また一部のエリアだけ霧でプレーが止まり、他のホールがクリアでプレーが進み続けると、
全体のプレーの進行がアンバランスになるので中断にします。

この大会では、16時40分から徐々に霧が出始め、
17時には霧が濃くなるばかりで全ホールでプレーが止まりました。
委員会は、日没まで晴れる見込みがないと判断し、
17時19分にプレーの中断のエアホンを鳴らしてサスペンデッドとしました。

本来、プレーヤーは落雷の危険を感じたときや
委員会がプレーを中断したときを除いて、自らプレーを止めることはできません。
もし正当な理由なく中断した場合、プレーヤーは規則5.7aに基づいて失格となります。

またプレーヤーがルーリングを要請したり、怪我や病気になった時も、
少しの遅れが認められるものの、不当に遅らせたと判断されれば規則5.6aに基づいて罰を受けます。

しかし競技委員が6人しかいない大会で、
霧の影響で各組がルーリング要請をしては委員会の対応が追いつきません。
それ故、霧の中でのプレーは、プレーヤーに
プレーを続けるか止めるかの判断を任せる非常に稀なケース
となります。

6月8日(土)
18歳ルーキーが詳細なヤーデージブック使用で失格解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

アクサレディス in Miyazakiの2日目での出来事です。

5番ティーでルーリング要請があったので、競技委員が向かったところ、
プレーヤーは使用してはならない以前のヤーデージブックを
初日から使っていたことが判明して失格となりました。

JLPGAツアーは、今季から
「グリーンリーディング資料の制限」のローカルルールを適用しており、
委員会が承認したヤーデージブック以外は使用できないルールを設けたばかり
でした。

この制限は1月6日の「コリン・モリカワ選手が手書きメモで2罰打」で解説しています。

今回はこのローカルルールが
R&Aより発表されてからJLPGAツアーが採用するまでの経緯を説明します。

「グリーンリーディング資料の制限」は、2022年1月1日に新しく出来たローカルルールで、
プロの競技やハイレベルなアマチュア競技だけを対象としています。(ローカルルールひな型G-11)

該当する各ゴルフ団体は、
このローカルルールを採り入れるか否かを選択するのですが、
2022年にR&AとUSGAは適用を決め、USLPGAとJLPGAは見送りました。

主だったプロツアー団体が見送った為、
2022年6月開催の全米女子オープンは、参戦したほとんどのプレーヤーとキャディーが、
このローカルルールを知らないまま当週を迎えることになりました。

その為、USGAの担当レフェリーは指定練習日に、
ラウンド中の全156選手とそのキャディーを捕まえては口頭で説明することになりました。
あまりに大変な作業の為、その中で英語を話さない十数名の日本人選手とキャディーは、
私がコースを回りながら説明をしました。

その翌年の2023年にUSLPGAは採用を決め、JLPGAも足並みを揃えるべく今年採用に至りました。

しかし採用すると言っても、
単にハードカードにこのローカルルールの文言を入れるだけではありません。
そのための準備や問題点を議論するために、
1月に既に運用しているJGTOの競技委員の方々に集まって頂き勉強会を開きました。

またJGTO競技委員会が作成した12頁に及ぶ資料を基に、JLPGAのガイドラインを作成して、
日本語版と英語版を事前に大会関係者、選手、キャディーに提供しました。
これはJLPGAツアーの試合会場にも毎週掲載しています。

またこのローカルルールに限らず、
2024年のJLPGAハードカードを分かり易く理解してもらうために、
22個ある全てのローカルルールと競技の条件を13分間の動画で紹介しています。
これも日本語版と英語版の両方を作成しており、英語版は中﨑さんがナレーションを務めています。

この動画はLPGA MyPageでいつでもアクセスできますが、
ハードカードを動画にしているゴルフ団体を他に知りません。

更に開幕の試合では、選手とキャディー向けに説明会を開いて、
競技委員長からルールの変更点や新たに適用されるローカルルールを口頭で説明します。
それでも尚、失格者が出たのは残念でなりません。

プレーヤーは競技に出る以上、ローカルルールを含めてゴルフ規則を知る責任があります。
また、委員会は特定の規則を採用することでそれを周知する義務を負います。
それ故、委員会が作成したハードカード、ガイドライン、動画などを利用して頂ければと思います。

6月15日(土)
障がいを持つプレーヤーのためのゴルフ規則の修正解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

2023年のゴルフ規則改定のひとつに
規則25の「障がいを持つプレーヤーのためのゴルフ規則の修正」があります。

この規則は、2019年に初めてゴルフ規則に掲載されたのですが、
そのときはオフィシャルガイドの巻末にありました。
それが2023年には、新たに規則25としてジェネラルルールに加わりました。
規則25になったということは、競技面で大きな意味を持ちます。

それは障がいのあるプレーヤーと一般のプレーヤーが、
または異なるタイプの障がいを持つプレーヤー同士が、
特定の規則を修正しながらフェアにプレーすることが可能となる
からです。

例えば、規則25.2は「盲目のプレーヤーのための修正」を扱っていますが、
キャディーとは別に1人だけ補助員からの支援を受けることができます。
これはスタンスを取ったり、ストロークを行う前に目標を定める為の支援ですが、
ストローク中でもプレーの線の後方に立つことができます。

また球がバンカーにあるとき、ストロークを行う前に球の直前や直後の区域、
またバックスイングをするときにクラブが砂に触れても罰はありません。
そして球のドロップ、プレース、リプレースについてもプレーヤー本人でなく、
他の人にこれらの処置をしてもらうことを認めています。

また規則25.4は、「移動補助器具を使用するプレーヤーのための修正」についてですが、
これは車椅子や松葉杖やステッキなどを使用しているプレーヤーに適用します。

例えば、定義「リプレース」の修正には、
本来、リプレースとは手で球を地面に接地させないといけませんが、
松葉杖でプレーするプレーヤーは、手以外にクラブなど他の用具を使ってリプレースすることができます。

また車椅子を使うプレーヤーに対しては、
球がレッドペナルティーエリアにあったり、アンプレヤブルとみなしたときにラテラル救済を受ける場合、
本来なら基点から2クラブレングスの救済エリアが、4クラブレングスに拡大されます。

規則25には、他にも義手や義足のプレーヤーや知的障がいをもつプレーヤーも含まれ、
その障がいに応じて規則の修正がなされています。


今後、障がいのあるゴルファーも当たり前にプレーを楽しんで頂けるよう、
規則の普及だけでなく、プレーできる環境作りも大切だと思いました。
より多くのゴルフ場が障がい者ゴルフを理解し、受け入れられる体制ができれば良いなと思います。

6月22日(土)
TV塔を設営する位置解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

今季開催された大会での出来事です、
18番ホールは485ヤード(パー5)で、グリーン右手前に池があります。

風がアゲンストでなければ多くの選手はツーオン狙いをするホールなのですが、
右に池があることにより、グリーンを直接狙わずにその左側を狙ったり、
フェード打ちの選手はグリーンを狙うにしても、飛球線は左からになります。

そこで問題となったのはサード地点左側に設営されたテレビ塔です。

練習ラウンドを終えた何人かの選手が、
「このTV塔がちょうど狙い目で打てない。実際狙ってTV塔に当たった場合は、
罰なしの救済はあるのか」と訊ねてきたのです。

選手の一人は、
「今まで左のTV塔は全く気にならなかった。これまでと違う位置に建っている」と言いました。

そこで委員会は過去の大会の映像をチェックしたところ、
確かにこれまで設営されていた場所から30ヤード右後方のFW側に移動していた事が分かりました。

本来、テレビ塔やリーダーズボードなどの設営物は、建てる位置が細かく決められており、
これまでと同じ位置に建てると約束した場合は、まさにその位置になければいけません。


ところが今回は本来の位置からだいぶ離れた場所に設営され、しかもかなり高いTV塔であった為、
すぐに撤去することはできないとのことで、そのままの状態で競技を始めることになりました。

そして予期していたとおり、18番ホールのセカンド地点でルーリングがありました。
ティーショットを左のラフに打った選手から、
「あのTV塔に当たった場合、罰なしの再プレーにならないのか」と質問されました。

TV塔など臨時の動かせない障害物は、
球が当たったらあるがままでプレーしなければいけません。


またこれらの設営物は、介在の救済を受けられる場合がありますが、
それはホールからTV塔の右端を結んだ線に対して
球が1クラブレングス以内にないと受けられません。

(ローカルルールひな型F-23)

不運にも、その球は救済できる位置になかった為、そのままプレーするしかありませんでした。

するとそのプレーヤーは、「あのTV塔はコース上にある木と同じということですね」と言い、
TV塔を気にしたままストロークした球は、グリーン右手前の池に入ってしまいました。

またある選手は、TV塔の位置が気になるということで
初めからツーオン狙いを諦め、刻んでプレーしていました。

近年、JLPGAのプレーヤーは飛距離やプレーのスケールが大きく変わってきています。
一見、何の問題もない位置に設営したと思われるTV塔でも、
ティーショットの飛距離が300ヤード近く出る選手には障害となることがあります。

興行面から考えますと、TV放映やギャラリー観戦のために設営物を建てることは重要ですが、
あくまで競技を優先してプレーに支障がないようにしなければなりません。

6月29日(土)
ストロークしたら球が2つ飛んでいった解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

これは昨年起こった出来事です。

プレーヤーは、パー5のティーショットを右ラフに打ちました。
そこからセカンドショットを打とうとしたのですが、ラフが深かったため、
アイアンでフェアウェイに出そうと決めました。

しかし、実際にストロークをしたところ、球が2つ飛んでいったのです。
1つはフェアウェイに向かって120ヤード飛んでいき、
もう1つは30ヤードほどゴロゴロと転がっていきました。

プレーヤーは、ラフが深かったせいで本人の球の下に別の球が潜っていたのを知らずに、
一度のストロークで2つの球を同時に打ったのでした。

びっくりしたプレーヤーはすぐにルーリングを要請しました。
本人は自分の球以外の球をプレーして誤球の罰打が付くのではないかと心配になったのです。
しかし幸いなことに、このケースでは誤球とはみなされず罰なしの裁定となりました。

それは自分の球をストロークしたまでで、
その下に隠れていた別の球の存在を知らなかったから
です。
プレーヤーはその別の球に対してプレーする意思はなく、偶然にクラブが当たったとみなされます。

なお、自分の球に対して行ったストロークはカウントされるため、
120ヤード飛んでいった球でプレーを続けることになりました。(旧裁定集15/2)

もし、そのプレーヤーがストローク前に自分の球の下に潜っていた別の球の存在に気付いた場合、
罰なしで救済を受けることができます。


これは実際に今年のヤマハレディースであったルーリングですが、
8番ホールでプレーヤーの放ったティーショットが、
フェアウェイで球が丸ごと見えなくなるほど地面に深くくい込んでしまい、
その球を3分以内に見つけることができずに紛失となりました。

その後、同じホールで後続組のプレーヤーの放ったティーショットが、
偶然にもその深くくい込んだ球のすぐ前に止まりました。
プレーヤーは、地面に埋まっている球を取り除き、
その際に本人の球が動かなかった為、そのままプレーを続けました。(規則15.2a(1))

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