- 11月4日(土)
- 馬場咲希選手の4罰打解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
新南愛知カントリークラブ美浜コースで開催された住友生命Vitalityレディス東海クラシックの2日目、
馬場選手の誤所からのプレーによる4罰打はメディアでも大きく取り上げられました。
馬場選手は14番ホールセカンド地点と15番ホールサード地点において、
カート道からの救済の完全な救済のニヤレストポイントを誤った方法で決定し、誤った救済エリアからプレーしたため、
規則16.1bの処置違反で誤所からのプレー(規則14.7)の一般の罰が2回課されることになりました。
問題となった14番ホールセカンドでは、カート道がスタンスの障害になり、
本来その位置からなら次のストロークは7番アイアンを使用していたであろう状況だったのですが、
ドライバーを使用して救済の基点を決めたため、カート道の左側に救済し、ストロークを行いました。
馬場選手がもし7番アイアンで基点を決めていたら、
救済の基点と救済エリアはカート道の右側になるはずでした。
完全な救済のニヤレストポイントの定義を見ますと、
「この基点を推定するときは、
プレーヤーはそのストロークで使用していたであろうクラブの選択、
スタンス、スイング、プレーの線を特定する必要がある。」
と書かれています。
15番ホールも同様、残り30ヤードしかない所からドライバーで完全な救済のニヤレストポイントを決めたため、
カート道の左側に救済しましたが、ウェッジを使用して基点を決めていたら救済箇所はカート道の右側になるはずでした。
そのため、ラウンド後の現場検証により、2回の誤所からのプレーと裁定し、4罰打が課されることになったのです。
馬場選手に悪意はなく、ドライバーで基点は決めるものだと思い込んでいたそうです。
注意点としては、
基点の決定をする際に、ドライバーを使用することが合理的な場合、問題はありません。
また、たとえ基点が間違っていたとしても結果的に正しい救済エリアからプレーした場合も
問題はありません(完全な救済のニヤレストポイント/2)。
このニュースは正しいルールを覚える良いきっかけになったかと思います。
- 11月11日(土)
- ホールインワンならず解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
10月にGC海コースで開催された日本女子オープンゴルフ選手権は原英莉花選手の見事な優勝で大変盛り上がりました。
その第3ラウンド、ぺ・ソンウ選手の7番ホール、
197ヤードのパー3でのティーショットは直接ホールの壁面にめり込み、球は8割方グリーン面の下にありました。
ホールの修復のために呼ばれたレフェリーは、球全体がグリーン面の下にないため、
球はホールに入ったことにならないとプレーヤーに告げます。
そこからの救済の処置は、カップを修復し、その球を元の位置にリプレースしなければなりません。(規則13.1b)
その際に、球が止まらないようでしたら、規則14.2eに基づいてホールに近づかない最も近い箇所にリプレースします。
ペ・ソンウ選手を含め、多くのプレーヤーはその裁定にびっくりしたと思いますが、
定義の「ホールに入る/1」には「球がホールの内側の壁面にくい込んだ場合、ホールに入ったことになるためには
その球の全ての部分がパッティンググリーン面より下になければならない」とあります。
それではなぜ、ホールの中の旗竿に寄りかかって止まっている球は、
その球の一部がホールの中のグリーン面より下にあればホールに入ったものとして扱われ(規則13.2c)、
ホールの壁面にくい込んだ球は、球全体がグリーン面の下になければならないのでしょうか?
基本的に、球がホールに入るとは
球全体がグリーン面より下にあるときです。(定義:ホールに入る)
例外的に、ホールの中の旗竿に寄りかかって止まった球は
その球の一部がグリーン面より下にあればホールに入ったことになるのですが、
その状況は本来旗竿がなければ球全体がグリーン面より下にあったと推測できます。
一方で、ホールの壁面にくい込んだ球は、たとえ旗竿に寄りかかっていたとしても、
球全体がグリーン面の下になければなりません。
球がホールの縁にめり込み、球の一部でもグリーン面の上にある場合、
球がホールの縁に張り付いた状態であり、そこから球全体がホールに入ることはないからだと思います。
そこに規則の整合性が保たれているように感じます。
いずれにせよ、ペ・ソンウ選手のショットはホールインワンにはならなかったものの、
記憶と歴史に残るナイスショットでした。
- 11月18日(土)
- 「教えて!Nory」クラブの使用権解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
先日の競技の出来事です。
AさんとBさんは同じ銘柄のドライバーを使っていました。
ロングホールのティーショット。オナーのAさんはまずまずのドライバーショットでした。
しかし、Aさんは誤ってBさんのクラブを使ってショットしていたのです。
この場合、規則4.1b(2)のクラブの共有禁止に違反するため、
一般の罰が課されて2罰打を加え、そのクラブを使わないと宣言し、
打ち直しはせずにプレーを続行するのは理解しているのですが、
仮に、Aさんがスタート時点で13本しかクラブを持っておらず、
Bさんのクラブを使用した後に、そのクラブの不使用宣言をしなかった場合、
そのクラブの使用権はAさんにあって、
Bさんはそのクラブを使えなくなってしまうのでしょうか?
ちなみに、恥ずかしながら、このAさんは私です。よろしくご教示ください。
【解説】
ご質問ありがとうございます!
ルールテストに出てくるような問題ですね。
回答から申しますと、
AさんにはBさんのクラブの使用権はありませんので、
不使用宣言をしてBさんにクラブを返さなければいけません。(規則4.1c(1))
もし、そのクラブを除外する手続きをせず、次のストロークを行ってしまうと
失格になってしまいます。(規則4.1b(2))
Aさんは13本のクラブでラウンドをスタートしましたが、
14本目のクラブとしてBさんのクラブを追加することはできません。
それは、規則4.1b(4)により、クラブを追加する、
または取り替える場合の制限がなされているからです。
Aさんは、他のプレーヤーのために持ち運ばれているクラブ、
この場合はBさんのドライバーを追加したり、借りたりすることはできません。
Bさんはラウンドのために自分のクラブを選ぶ権利があり、
その権利は他のプレーヤーによって奪われることはないのです。
- 11月25日(土)
- スタート地点とは解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
10月に開催された日本オープンの初日、松村道央選手は午前8:05スタートだったのですが、
午後スタートだと間違え、本来のスタート時間に間に合わず失格になってしまいました。
彼は、規則5.3aの違反の罰により失格になりましたが、
この規則5.3aには「プレーヤーは委員会が設定したスタート時間に
スタート地点でプレーをすぐに始めることができる状態でなければならない」と書いてあります。
記載されている「スタート地点」とは、
プレーヤーが自分のラウンドを始めるホールのティーイングエリアのことを指します(詳説5.3a/2)。
「スタート地点」という言葉を使うことによって、委員会はスタートに遅れそうになっているプレーヤーが
到着していることになる基準を定めることができます。
例えば、JLPGAではローカルルールでプレーヤーが自分のラウンドを始めるために使用する
ティーイングエリアを囲むローピングや杭、またはペイントされた区域にいるとき、
スタート地点に到着しているものとみなすと規定しています。
つまり、スタート時間に遅刻しそうになっているプレーヤーは、
クラブ1本と球1個を持ち、片足でもそのスタート地点に入っていれば
規則5.3aの違反による罰はないということです。
海外の試合では、スタートホールにアーチのような物が設置されていることがあり、
そのアーチを潜ったプレーヤーはスタートホールに到着しているものとみなすと規定することがあります。
スタート地点を明確に設ける理由は、
実際に遅刻しそうなプレーヤーが時間に間に合ったかどうかをはっきりさせる為です。
これは裁定をするレフェリーや対象となるプレーヤー、
そして見ている人達にとっても重要な判断基準となります。
実は、今年の日本女子オープンでも、スタートに遅刻しそうになった選手がいました。
レシーバーで彼女の行動は逐一報告され、幸いにも、
スタートの40秒前にティーイングエリアに到着することができました。
これがもっとスタート時間に迫っていた場合、例えば10秒以内になったら、
既に到着している他の選手にもわかるようにレフェリーが口頭でカウントダウンを始めることがあります。
ティーの近くには公式時間に合わせた時計を置き、
全てのレフェリーはその公式時間に合わせて業務にあたります(6Aスタート時)。
スタート時間は厳格に守られていますので、
時間には余裕を持ってスタート地点にいることをお勧めします。