- 1月7日(土)
- 「2023 年ゴルフ規則の改訂」 後方線上の救済について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
もうすでに年明けからゴルフをされている方は、新しいゴルフ規則のもと、ラウンドされていることになります。
新規則の変更点の幾つかの中から、先週は規則9.3の「自然に動かされた球」について説明がありました。
今日は、後方線上の救済についてお話します。
後方線上の救済とは、よくペナルティーエリアの救済やアンプレヤブルの球の救済に使われます。
新しい後方線上の救済処置で抑えておきたい2つのポイントがあります。
1つ目は、線上に球をドロップしなければならないということです。(規則14.3b(3))
2つ目は、ドロップした球が最初に地面に触れた線上の箇所が救済エリアを定める基点となり、
そこからどの方向でも1クラブレングスの範囲が救済エリアになるということです。
つまり、半径1クラブレングスの360度の円が救済エリアになります。
ドロップした球が基点よりもホールに近づいて止まったとしても救済エリア内であれば正しく処置したことになります。
2019年の規則では、線上に決めた基点から、ホールに近づかない、1クラブレングス以内の救済エリア内なら
どこでも球をドロップして、その救済エリア内に球が止まれば救済完了でした。
今までの問題は、ドロップした球が基点よりも前(ホールに近づく方向)に行ってしまった場合でした。
そこから打ってしまえば誤所からのプレーで一般の罰でした。
それが、今年からは、線上にドロップした球が基点より前に行ったとしても、
1クラブレングス以内の救済エリア内に球が止まれば正しく救済したことになります。
R&Aは全ての救済措置に一貫性を持たせるために救済エリアという概念を新たに2019年から採用したのですが、
後方線上の救済は思わぬ罰を生み出してしまい、この改訂に至りました。
- 1月14日(土)
- 乗用カートに乗った球について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
昨年11月に行われたファーストQT、裾野カンツリー倶楽部で起きた珍事です。
セカンドラウンド2G奥でルーリング要請がありました。
到着した競技委員から報告された内容は、なんと、
プレーヤーのインプレーの球が乗用カートの座席の上に乗っているということでした。
どうやらガードバンカーからトップした球が、止まっていた乗用カートに当たり、ナイスオンしてしまったとのことです。
このような場合、動かせる障害物の中や上に止まった球(規則 15.2a(2))であるため、
基点は球がその動かせる障害物の中や上に止まっていた場所の真下と推定する地点になります。
このケースでは、電磁誘導線の間の芝地が基点になりました。
そこからホール近づかない1クラブレングスの救済エリアにドロップすることによって、罰なしの救済を受けることができます。
しかし、救済はさらに続きます。
トーナメントごとに制定される追加ローカルルールという物があります。
追加ローカルルールとは、規則と同じ効力を持っており、そのコースの特徴に合わせて、委員会が制定するルールです。
この会場では、追加ローカルルールに電磁誘導線の間の芝地はプレー禁止区域であると定めました。
プレーヤーはそのプレー禁止区域からも救済を受けなければなりませんでしたので、
電磁誘導線の間にインプレーにした球をさらに救済して完了となりました。
ここのポイントは、プレー禁止区域にも球をドロップすることができるということです。(解釈 14.3c/2)
しかしながら、そのプレーヤーはその球をあるがままにプレーすることは認められず、
再度救済を受けなければなりません。(規則 16.1f(1))
そのまま打てないのになぜドロップする必要があるのかと困惑されるかもしれませんが、
救済処置の手順を省くことはできませんので、面倒でも規則は守りましょう。
- 1月21日(土)
- 「教えて!Nory」救済エリア決定の基点について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
赤杭のハザードの中でも打てる状況で打ったのですが、
ミスショットで再び同じ赤杭内のハザードにボールが行ってしまいました。
(例えば、池手前にボールが止まっていて、そのボールの位置は赤線の内側なのですが
打てるので、救済を受けずそのまま打ちました。しかし、だふってボールは目の前の池に)
そのような時、元々ボールはハザード内にあるので、
どこをハザードに入った地点として救済を受ければいいのか知りたいです。
よろしくお願い致します。
【解説】
ご質問ありがとうございます!
回答から申しますと、RPAを最後に横切ったと推定する地点が
救済エリアを決定するために使用する基点となります。(規則17.2a(1))
ここのポイントは「最後に」という言葉です。
質問の内容からしますと、RPAから打ったショットは
そのRPAの縁をどこも横切らずに池の中に止まったと推測できます。
すると、最後にRPAを横切った地点とは、
RPAの外から打った時にその縁を横切った地点になります。
もし、RPAの中から打った球が一度その縁をこして、ジェネラルエリアに跳ねたものの、
また同じRPAの中に入ってしまった場合は、最後に横切った地点とはその新しい地点になります。
このケースでは1罰打で4つの選択肢があります。
ストロークと距離の救済で、直前のストロークを行ったRPAの中に球をドロップすること、
最後に横切った地点から後方線上の救済、またはラテラル救済を受けること、
そして4つ目は追加の選択肢として、
ペナルティーエリアの外で最後にストロークを行った場所からプレーすることです。(規則17.2a(2))
ほとんどの場合がラテラル救済を使用するかと思います。
プロのトーナメントでもこのようなルーリングは時々起きます。
- 1月28日(土)
- 新ルール、画期的なローカルルールひな型L-1解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
ルール改訂に伴い、新しく追加されたローカルルールひな型L-1についてお話します。
そもそもローカルルールとは、
委員会が一般的なプレーや特定の競技会のために採用する規則の修正または追加規則です。(オフィシャルガイド5C)
このローカルルールは規則と同じステータスがあり、オフィシャルガイドに採用可能なひな型が記載されています。
そのゴルフ場が採用しているローカルルールは、多くの場合、スコアカードの裏面に書いてあります。
このローカルルールひな型L-1は規則3.3b(2)を修正するものです。
規則3.3b(2)とは、スコアカードを提出する際のプレーヤーの責任で、ホールのスコアの証明に関する規則です。
ジェネラルルールでは、ストロークプレー競技で、スコアカードにサインがないまま、プレーヤーが
アテストエリアから出てしまった場合やスコアカード提出ボックスに入れてしまった場合は失格です。
まだ記憶に新しい、昨年の楽天スーパーレディースの2日目に、比嘉真美子選手はこの規則違反で失格になってしまいました。
このローカルルールひな型L-1は、プレーヤーまたはマーカー、もしくは2人の署名がないスコアカードを提出した場合でも
一般の罰(2罰打)が妥当であろうと規則3.3b(2)を修正するひな型です。
ちなみに、その2罰打はそのプレーヤーのラウンドの最終ホールのスコアに足すと書かれています。
委員会は競技のためにこのひな型を採用することを選ぶことができます。
皆様のホームコースの競技会でも採用することをご検討してみてはいかがでしょうか。