- 12月3日(土)
- スイング中に球が動き始め、その球を打ってしまった場合について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
これはプライベートのラウンド中に起こった珍事です。
同伴プレーヤーのMさんは、つま先下がりの急傾斜からストロークをしようとテークバックした際に、
踏ん張っていた右足が動いてしまい、その影響で球も動き、途中でスイングを止めることができずに、
その動いている球にストロークをしてしまいました。
本来、プレーヤーは動いている球をプレーすることはできません。(規則10.1d)
これは以前、フィル・ミケルソンがパッティンググリーン上で動いている球を故意にパットして、2罰打がつきました。
ところが今回の件では、バックスイングを始めた後に、球が動き始めたのがポイントです。
この場合は、規則9.1bが適用され、バックスイングを始めた後に止まっていた球が動き始め、
その球にストロークを続けたことについての罰はありません。 (規則10.1d例外1)
しかし、問題は球を動かした原因が、Mさん自身にあったということです。
これはインプレーの球を動かしたということで、1罰打を足さなければなりません。(規則9.4b)
そしてそのストロークした球でプレーを続けなければなりません。
仮に、バックスイングを始めたあとに自然の傾斜や風によって球が動き、
そのままストロークを続けた場合は、何の罰もありません。
- 12月10日(土)
- 「教えて!Nory」動かされたマーカーの対処について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
グリーン上のボールマーカーが偶然他人に動かされた場合の対処についての質問です。
試合の中で、同伴競技者がパッティングしたボールが、
私のボールマーカーのピンに近い側で寄り添う形で止まりました。
その方が、マークをしてずらすと時間もかかるので、お先に打つことにされたのですが、
そこで素振りを始めようとしたときに、私のマグネット付きのマーカーがパターのソールにくっついてしまい
5センチほど後方に飛んでしまいました。
私が元の位置に戻そうとする際に、またくっついてはまずいと思い、
プラスチック製のマーカーに交換して刺したのですが、
その際に他の同伴競技者から、
マークを交換する際は自分のボールを置いてからでないとペナルティになると言われました。
その方のボールが残っているので、場所は推測できる状況でした。
既に動いてしまっているマーカーなので、推測をして元の位置に置くだけかと思ったのですが、
このようなケースでは罰になるのでしょうか?
【解説】
ご質問ありがとうございます。
このケースでは、正しい処置をしているので罰はありません。
この処置の方法は2つあります。
1つはおっしゃる通り、
既に動かされたボールマーカーを元の位置を推定して、
そこにボールマーカーを置けば完了となります。(規則9.7a)
これはボールマーカーを交換したとしても同じです。
またもう1つの方法は、
球を元の箇所にリプレースし、その後にボールマーカーを置くことです。
尚、この規則は少なくとも私が競技委員を始めた2012年から変わっておらず、
ボールマーカーの交換も含めて、この処置で罰がついたことはありません。
- 12月17日(土)
- くい込んだ球の処置について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
雨の日やその翌日のコースは、フェアウェイやラフの地面が緩んでいることがあり、
その状態でショットを打ちますと、球が地面にくい込んでしまう場合があります。
そのような時の処置について説明します。
まずこの救済が認められるには、球はジェネラルエリアにくい込んでなければいけません。
それはフェアウェイやラフ、あるいはグリーン周りのカラーにあるということです。(規則16.3a(1))
また球は、プレーヤー自身のショットによって作られたピッチマークの中になければいけません。
つまり他のプレーヤーのピッチマークに転がり入ったとしても、救済はありません。
そして「球が地面にくい込んでいる」とは、
球の一部が地表面以下に埋まっている状態のことです。(規則16.3a(2))
フェアウェイではその状況を見れば、くい込んでいるか否かはすぐに判断できますが、
深いラフに球がもぐり込んだ場合、判断が難しくなります。
これはプロの試合でも、ラフにある球がくい込んでいるかという質問のルーリング要請が時々あります。
この場合、確認のために球をマークして拾い上げ、その状態を目で確認するか、
それでも不確かな場合は、ライを変えないように手で芝や地面を触れてチェックします。(規則16.4)
これでくい込んでいないと判明すれば、球を拭かずにリプレースしなければなりません。
では、球が地面にくい込んでいる場合の救済方法ですが、
球のすぐ後ろが基点となり、そこからホールに近づかないワンクラブレングス以内に球をドロップします。
この際、球についた泥を拭くこともできますし、別の球に取り替えることも可能です。
そしてひとつ覚えておくと良いのが、
例えば球がラフにくい込んでいた場合、その救済エリア内にフェアウェイが入れば、
球をフェアウェイにドロップすることができます。
これも規則では、ラフとフェアウェイはジェネラルエリアというコースエリアに一括りにされているからです。
- 12月24日(土)
- プレーの障害となる球について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
10月に開催された三菱電機レディスゴルフトーナメントの2日目。
10番ホールのフェアウェイど真ん中でルーリング要請がありました。
行ってみると、そこには2つの球がほぼ横並びに2cmほどの間隔で止まっていました。
当然、球にストロークするには、もう1つの球がプレーの妨げになるので、
「プレーの障害となる球」の救済が受けられます。(規則15.3b(1))
その救済方法は、まずホールから遠いほうの球を先にプレーすべきなので、
ホールから僅かに近いほうの球をティーなどでマークして拾い上げます。
拾い上げた球は拭くと1罰打になりますので、拭かずに手で持つか地面に置きます。(規則15.3b(2))
そしてマークしたティーも依然、プレーの妨げになる場合、これを1クラブヘッドかそれ以上、横にずらします。
これで初めのプレーヤーは何ら障害のない状態でプレーし、次のプレーヤーは元の位置にマークを戻して球をリプレースします。
ところがもし初めのプレーヤーがストロークした際にターフを取って、次のプレーヤーの球のライを変えた場合は、
球をそのまま元の位置にリプレースしてはいけません。
この場合は元のライから最も近く最も似た箇所にリプレースしなければなりません。(規則14.2d(2))
そしてそれは、元の箇所からホールに近づかない1クラブレングス以内の同じコースエリアという制約があります。
このように状況によって規則が入り組むので、ルーリングが要請される訳です。
- 12月31日(土)
- 「2023 年ゴルフ規則の改訂」から自然に動かされた球について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
4年ごとに改訂されるゴルフ規則ですが、早速明日の1月1日から新規則が施行されます。
その幾つか変更がある中、規則9.3の「自然に動かされた球」について説明します。
これまでの規則では、パッティンググリーンでの例外を除いて、
止まっている球が自然の力によって動いた場合は、動いて止まった所からプレーをしなければなりませんでした。
例えば、プレーヤーがペナルティーエリアの救済処置をしたあとで、球が自然の風や傾斜によ
って動き、
再びそのペナルティーエリアに入った場合、プレーヤーは球が止まった所からそのままプレーするか、
再度、1罰打を足してペナルティーエリアの救済をするしかありませんでした。
これが2023年規則では、「ドロップ、プレース、リプレースした球が止まった後に、
他のコースエリアやアウトオブバウンズに転がっていって止まった場合、
プレーヤーはその球を罰なしにリプレースしなければならない」ということになりました。
この「他のコースエリア」とは、例えばラフにプレースして処置が完了した球が、
バンカーやレッドペナルティーエリアに自然と転がっていってしまったとか、
バンカーにドロップして処置が完了した球が、ペナリティーエリアやラフに自然と転がってしまったなどです。
この規則の変更理由は、2019年のウェイストマネージメントオープンの最終日で、
リッキー・ファウラーがレッドペナルティーエリアから1罰打を受けて、ラテラル救済を受けたのち、
次のストロークをどう打とうかと考えている間に、球が急な傾斜によって自然に動き、
再び池に入ってしまったという出来事があったからです。
これでファウラーは再度、1罰打でラテラル救済を受けてプレーを続けることになりました。
本来、ゴルフは自然に動いた球は止まったところからあるがままにプレーするのが原則ですが、
この一件があり、ドロップ、プレース、リプレースした球に関しては改訂することになりました。
なお、パッティンググリーン上で、一旦拾い上げてからリプレースした球が自然の力で動いた球は、
どのコースエリアに止まったかに関わらず、元の位置にリプレースしなければなりません。
この規則は2019年と変わらずです。
少し混乱するかもしれませんが、明日以降、プレーする予定のある方は正しく覚えてコース入りしましょう。