- 7月2日(土)
- ドレスコードについて解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
私が初めて日本でゴルフをしたのは、2007年8月の群馬県で開催された
JLPGAのQT(Qualifying Tournament)でした。
アメリカのパブリックコースで育った私は、
サンダル、ノースリーブが当たり前だったのに対して、
真夏の暑い群馬県で、ジャケットを羽織り、革靴で来場することを求める
JLPGAやコースにびっくりしたことを覚えています。
2009年のプロテスト合格後、新人セミナーを受講した際に言われた事が、
ジャケットを着用することは相手への敬意を表しており、
アマチュアゴルファーの模範となるべきプロゴルファーは
ドレスコードを厳守すべきであるということでした。
ドレスコードとは規則ではありませんので、違反したとしても
罰にはなりませんが、常識を疑われることになりかねません。
皆さんはゴルフ場に行く前に必ずそのゴルフ場のドレスコードをチェックしましょう。
ゴルフ場は社交の場であり、皆が気持ちよくプレーするためにも、
その場に相応しい服装を着用しましょう。
ところで、ドレスコードの違反に罰はないと言いましたが、
ゴルフにも他のスポーツ同様、衣服の規定があることをご存じでしょうか?
他のスポーツですと、今年の冬のオリンピックでスキージャンプの
スーツ違反になってしまった高梨沙羅選手の失格は記憶にも新しいと思います。
そもそも「用具規則の主目的は、ゴルフ用具のデザインと
製造における技術的進歩がゴルフゲームにとって最大の利益となるようにすることです。
技術改新を完全に抑制してしまうことは望んでいないとはいえ、
用具規則の目的は、ゴルフの伝統を守り、ゴルフの練習や技量よりも
製造技術の進歩に過度に依存しすぎることを防ぎ、
ゴルフゲーム全般に渡って技量の差を残すようにすることです」。(用具規則より抜粋)
従って、衣服で「アライメントの援助となるようにデザインされている機構やストロークをしたり
プレーする上で、別の方法でプレーヤーの援助となるかもしれない機構」(用具規定:衣服(規則4.3))は
規則に違反する機能が組み込まれているとみなされます。
これから暑さがより一層増してくると思いますが、一般的に販売されている
小型扇風機付きベストは今のところ違反にはなりません。
このような機能を上手に利用して、熱中症には気をつけてラウンドしましょう。
- 7月9日(土)
- 「教えて!Nory」ルール違反の用具について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問】
ゴルフショップで『ルール違反のグローブ』が店頭に並んでいました。
ルール違反の高反発のボールやドライバーは知っておりますが、
競技中に使用してはいけない用具を教えてください。
ちなみにお酒や強壮剤など飲み物は、なんでもOKですか?
【解説】
ご質問ありがとうございます!
おっしゃる通り、ルール違反の用具と聞くと、
まず思い浮かべるのは球やクラブだと思います。
しかし、競技中に使用すると罰になったり
失格になる用具は他にも多々あります。
例えば、ティーイングエリアからプレーする時に使用するティーは
4インチ以下の長さでなくてはなりません。(規則6.2b、定義:ティー)
他にもスイング補助器具(規則4.3a(6))、風速計(規則4.3a(2))、
水平器(規則4.3a(1))などが挙げられます。
これはほんの一部ですので、ゴルフ規則4.3と用具規則をご参照ください。
グローブに関しては、プレーヤーはクラブを握る援助となる手袋をはめることができます。
ただし、手袋は単純でなければなりません。(用具規則6(2))
単純ではない例を用具規則から抜粋しますと、プレーヤーがストロークをする上での
援助となる重り、関節の動き(手や手首など)を制限するかもしれない機構、
グリップの表面素材と粘着(付着)する手袋の表面素材が使用されている物などがあります。
用具規則はゴルフ規則とはまた別に存在しており、全てを覚えるのは大変です。
私達も質問を受ける度にJGAのホームページにある用具規則を見て調べたり、JGAに問い合わせたりしています。
お酒や強壮剤などの飲み物に関しては、特に制限はないです。
JLPGAに関しては、ドーピングにさえ違反しなければ大丈夫です。
- 7月16日(土)
- 「教えて!Nory」グリーンへのドロップ&猪よけの鉄柵について解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
【質問1】
グリーン周りのラフの排水溝にボールが止まり、ニヤレストポイントを決め、パターでワンクラブ測るとグリーン上になります。
その場合はグリーンにドロップでもOKなのでしょうか?
それとも少し離れたライが同じラフからでのニアレストの場所を探さないといけないのでしょうか?
【解説1】
ご質問ありがとうございます。
まず1つ目の回答ですが、パッティンググリーンにドロップすることはできません。
完全な救済のニヤレストポイントは、球の元の箇所に最も近く、
ホールに近づかない、少し離れたラフ(ジェネラルエリア)になるでしょう。(規則16.1b)
そこから、ワンクラブレングスの救済エリア内にドロップをして、球がそのエリア内に止まれば救済完了です。
このケースでは、パッティンググリーンにドロップすることはできませんが、
カラーにドロップすることは認められています。
なぜなら、このケースの救済エリアの場所に関する制限はジェネラルエリアだからです。
つまり、無罰の救済を受ける場合は同じコースエリアに受けなければならないのです。
ただし、例外的にパッティンググリーン上の球だけはパッティンググリーン上か
ジェネラルエリアのいずれかになることがあります。(規則16.1d)
私は、伊藤園レディースが開催されるグレートアイランドの名物ショートホール、
17番ホールのカラーのスプリンクラーヘッドからの救済で、質問者様と同じ質問を受けたことがありました。
直面した時に迷うケースだと思いますので、覚えておくと良いと思います。
【質問2】
OB杭ギリギリのインプレーのボールについて。猪よけの鉄柵がOB杭の外にある場合、
スイングの妨げになれば救済は受けられるのでしょうか? 逆に、猪よけの鉄柵がOB杭の内側にある場合は?
【解説2】
2つ目の回答ですが、猪よけの鉄柵がアウトオブバウンズ側にある場合、
スイングの障害になったとしても、救済を受けることはできません。
鉄柵のような動かせない障害物から無罰の救済が認められるのはコース上、
つまりインバウンズ側にある物に限られます。(規則16.1a(2))
例えば、鉄柵はアウトオブバウンズ側にあり、上の部分だけコース側に倒れ込んでいたとします。
球がインバウンズにあり、その鉄柵の上の部分がスイングの障害になっている場合は、救済が認められます。
その理由は、アウトオブバウンズの境界縁は地面の上方と、地面の下方の両方に及び、
空中でコース側に倒れ込んでいる柵は動かせない障害物になるからです。
したがって、猪よけの鉄柵がOB杭の内側にある場合は動かせない障害物として救済が認められます。
今年のフジサンケイレディスの2番ホール右側で、このケースと同じ質問を受けました。
アウトオブバウンズにあるスイングの障害になる電柵からの救済は認められるかという質問だったのですが、
動かせないのであれば救済はありませんと答えたところ、その電柵に電気は通っておらず、
あっさり抜けましたので、それを動かしてもらい障害もなくなりました。(15.2a(1))
動かせる障害物はコース上でもコース外のどこでも取り除くことができます。
動かせない物と動かせる物の違いは合理的な努力で、
その障害物やコースを損傷させずに動かすことができるか否かにあります。
迷った時は、とりあえず動かせるか確認してみましょう。
- 7月23日(土)
- ゴルフで最もアンフェアなホールロケーション解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
今年の5月に開催されたアメリカ、アイオワ州の
高校生ガールズチャンピオンシップで起きた出来事です。
River Valley Golf Courseの18番ホールは傾斜が強く、
その日はマウンドの上にホールが切られていたそうです。
パッティンググリーン上から打った球は、ホールに入らない限りカラーまでこぼれてしまい、
返しのパットは強い上り傾斜で、上まで上がらないと戻ってきてしまいます。
その日の18番ホールの平均ストロークは+4でquadruple bogey、
選手の中には10回パットをして、ようやくホールアウトした人もいたそうです。
この出来事に記者は、ゴルフで最もアンフェアな
ピンプレースメントと題してTwitterに投稿したところ、話題になりました。
ゴルフ規則のオフィシャルガイドにはこのようなことが起きないように、
ホールロケーションの選択に関するガイダンスを提供しています。(5E(2))
その中に「委員会は球が止まらない傾斜にホールを設置することは避けるべきです...
ホールの周辺2~3フィート(60cm~90cm)が比較的平らな区域にホールは設置されるべきです。」とあります。
更に、このケースのようにストロークプレーで、
傾斜のせいで球がホールの近くには止まらない場所にホールが設置されていること、
またそのことで数名のプレーヤーが過度のパット数を要する結果となっていることが
ラウンド中に明らかになった場合、委員会にはいくつかの選択肢があると書かれています。(6B(2))
例として5つ書かれており、今回のケースは
その一つのホールの位置を変更せずにプレーを続けさせる事になりました。
他には、各組のプレーの合間にパッティンググリーンに散水する、
ラウンドを無効としてホールを再配置する、
そのホールのスコアを無視して別のホールをプレーさせるなどがあります。
いずれにせよ、このようなことが起きないようにJLPGAのトーメントでは、
ホールロケーションを決める時と競技の朝、球を転がしてチェックしています。
昨年のあるトーナメントでは、スタート前に点圧をしてまったが故に
球が止まらずホールを切り替えてロケーションシートの変更をしました。
ホールロケーションは競技にかかわらず、一般のプレーでも
プレーのペースやホールの難易度に大きく影響しますので、ゴルフ場の支配人、競技委員会、
キーパーなどの皆さんはホールを決める際は気をつけましょう。
- 7月30日(土)
- 昨日の球を打った!?解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
JLPGAのトーナメントで起きた珍事です。
2019年のGolf5レディスプロゴルフトーナメントは茨城県のサニーフィールドで開催され、
大会初日、私は#3グリーンのルーリングに向かいました。
パッティンググリーン周りのラフでプレーが止まっており、
そのラフは足首まですっぽり隠れてしまうほど深く、球はほとんど見えない状態です。
到着した際、あるベテラン選手の第一声が
「昨日の球を打ってしまいました」でした。
その言葉に困惑しましたが、詳しく説明を聞くと、
ラフにあった自分のインプレーの球を打つため素振りをしていた所、
ラフで隠れて見えなかった別の球に当たってしまったということでした。
昨日の球とは、プロアマ大会でロストになった球ではないか
という意味だったみたいです。
このように、練習スイングを行っているときや、
ストロークを行う準備をしている間に偶然に球を打ってしまった場合は
ストロークとはカウントしません。(定義:ストローク)
ただし、偶然とは言え、インプレーの自分の球を練習スイングで
当ててしまった場合は、1罰打で元の箇所にリプレースになります。(規則9.4b)
例外的に、パッティンググリーン上の球に関しては
無罰で元の箇所にリプレースになります。(規則13.1d(1))
このケースでは当たってしまった球が自分のインプレーの球ではなく、
遺棄された球でしたので、無罰ということになります。
しかも、球を打つ意思なしに行われた練習スイングですので、
ラウンド中の練習にもなりません。(規則5.5a)
ラウンドの際はくれぐれも気をつけて練習スイングは行いましょう。