- 6月4日(土)
- ガルシア選手が激怒した誤裁定解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
先月のWells Fargo Championshipの初日の10番ホールで、
セルヒオ・ガルシア選手はティーショットを大きく右に曲げて
レッドペナリティーエリアに入れてしまいました。
ガルシアは、その球を捜索する為に、ペナルティーエリア内の茂みに分け入り、
そこでTV関係者に、「球は小川を越えた先の方に行った」と教えられました。
ガルシアは小川を渡るのに少し手間取り、ようやく球が
あると思われる場所で捜索を始め、その後、自分の球を見つけました。
ところが、そこに居合わせたレフェリーに
「捜索に3分以上かかったので球は紛失だ」と告げられました。
この裁定を不服としたガルシアですが、抗議は実らず、
レッドペナルティーの処置として1罰打を課し、
後方線上に球をドロップしてプレーを続けました。
ところがこの一件は、のちに誤裁定と判明し、
競技委員会は声明文を出しました。
規則では、プレーヤー、またはそのキャディーが球を探し始めてから
3分以内に見つからない場合は紛失となります。
つまり、球があると思われる場所までの移動は、球探しの時間には含まれません。
居合わせたレフェリーは、ガルシアがレッドペナルティーエリアに入った時点で
捜索をしていると思い込み、そこからタイム計測を始めました。これが誤裁定の要因です。
本来であれば、このような混乱が起きないよう、レフェリーは、
「球探しが始まってから、どれくらい経ちましたか」と聞きます。
何故ならほとんどの場合、レフェリーは球探しをしている最中に
現場に到着するので、事の状況を全て把握できていないからです。
ほとんどの選手やキャディーは、正確に計測しないので
「だいたい1分くらい」などと答えます。
その場合、そこからあと2分の計測を始めます。
計測中は「残り1分です」などと選手らに聞こえるように伝えます。
これならば、タイム計測が行われていることと、
あとどれくらい時間が残っているかが分かるからです。
もう1つ注目すべきは、この声明文の最後に、誤裁定と委員会が認めたにも関わらず、
「ガルシアの10番ホールでのスコアは変わらない」ということです。
これは何故かと言いますと、規則20.2dには、間違った裁定を訂正する場合について書かれていますが、
そこには「訂正するには遅すぎる場合、その間違った裁定が有効となる」とあります。
このケースでの「遅すぎる」とは、ガルシアが11番ホールでティーショットを打った時点です。
その前にレフェリーが誤裁定に気づいていれば、ガルシアはセカンド地点に戻り、
レッドペナルティーエリアにあった元の球を罰なしでプレーすることが出来ました。
(規則18.2a(1)、規則20.2d、競技会6C(11))