- 12月20日(土)
- フェースに黒テープを貼ったという記事解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
6月に掲載されたあるゴルフ記事が、その週の試合会場で話題となり、競技委員会の耳に入りました。
その記事には、あるプレーヤーがクラブフェースに黒テープを貼っているという内容でした。
しかし規則では、クラブフェースに如何なる物質も貼ってはならず、
貼ってあるクラブは不適合クラブとみなされます。
そのクラブでストロークをした場合は、規則4.1a(1)で失格となります。
これが事実ならば、これまでの大会でその不適合クラブでプレーを続けてきたことになり、
その事情聴取をしなければなりません。
そこでプレーヤー本人に伺ったところ、
そもそもインタビューを受けた覚えはなく、記事が出ていることやその内容も知らずにいました。
しかし記事には、あたかも本人が14本の使用クラブについて聞かれ、詳細に感想を述べています。
これはどういうことなのか、今度は記事の発行元に伺ったところ、
プレーヤーにインタビューはしておらず、担当のクラブメーカーさんから聞いた
「プレーヤーはこんなことを言っていた」内容をあたかも本人が喋ったように書いたとのことでした。
しかしクラブメーカーさんも、フェースにテープを貼ることは違反と知っており、
そのような加工を施した覚えはなく、またこの記事が出ることも知らずに困惑していました。
そこでプレーヤーのクラブを確認したところ、
実際にフェースに黒テープは貼っておらず、フェースの上部に黒マジックで描いてあるだけでした。
これは用具規則に適っているものの、クラブフェースに油性マジックで線や点を書き入れることについては
「すべきでない」とR&Aから見解が示されているほど、慎重に取り扱わなければならない事例です。
つまり記事の題名にある「フェースに黒テープを貼った」や
文中の「フェース面に黒テープのようなものが貼られている」という表記は、
読者に興味を引いてもらう目的で、事実から大きく逸脱して書かれ、ゴルフ規則を軽んじていることが分かりました。
このことを知り、関係者一同驚愕しました。
まずは本人へのインタビューがなされておらず、
本人の知らないところで記事が出ていること。
改めて内容を確認しますと、どう読んでもそうは取れません。
また記事にはプレーヤーとプレーヤーのクラブの画像が38枚載っていますが、
それは記事が掲載される2ヶ月前に撮ったもので、クラブにテープは貼られていないことが確認できました。
発行元は謝罪と共に、速やかにネットから記事を削除しました。
しかし一度世に出た記事は削除される前に既に多くの目に触れています。
また発行元が削除したとしても、
探せば他のホームページや動画に掲載されており、ネット上では半永久的に遺ります。
プレーヤーに至っては、自身の知らないところで、違反クラブを使用していると疑念を持たれる結果となりました。
またクラブメーカーさんは、違反クラブを作ってプレーヤーに使わせていると誤解され、
競技委員会は大会期間中に事情聴取や対応に迫られました。
ゴルフ規則に関わる内容を掲載するのであれば、
事実に基づき規則を熟知した上で書かなければならず、その責任は重大です。
残念ながら、これまでも過去の記事で、誤った内容や解釈が書かれていることがあり、懸念していました。
今回は内容があまりに事実とかけ離れているのでお話をさせて頂きました。