QP関雅史のギア分析!第15回・プロの裏技も大公開!アイアンセレクト術
2021.12.03
ヘッドの形状以外にもアイアンの選択肢はいろいろある。ヘッド素材はステンレスか、はたまた軟鉄鍛造にこだわるべきか、シャフトはカーボンとスチールのどちらが合うのか、アマチュアの疑問に関プロに本音で答えてもらったほか、ツアープロが実践しているという裏技も教えてもらった。
飛距離で有利なカーボン、方向が安定するスチール
ほとんどのアイアンは、購入時にカーボンシャフトとスチールシャフトのどちらかを選択できる。
ヘッドスピードがアマチュア男性に近い女子プロの使用率を比べるとほぼ半々。どちらを選べばいいのか余計悩んでしまうが、縦と横、どちらの距離感を大事にするかが目安になるというのが関プロの持論。縦の距離感を優先する人にはカーボンをすすめる。
「飛距離を求めるならカーボンが有利です。純正シャフトどうしならカーボンのほうが軽いのでスチールよりもヘッドスピードが上がって飛びます。また振り抜きがいいから、ライが悪いところでも飛距離が落ちません。したがって縦の距離感が合いやすくなります。飛距離のばらつきの大きい人にはおすすめです」
一方、横の距離感、すなわち方向性をとるならスチールだ。
「重い分だけヘッドの挙動が安定するし、地面に当たったときやインパクトの衝撃にも強いので方向のブレが少なくなります。いまどきの40~50代くらいの男性なら軽量スチールを振れる体力はあるので方向が安定しない人は候補にしてください。また、カーボンでもスチールでもフレックスは若干軟らかめのほうがメリットはあります。ボールが上がりやすいのと、タイミングよく振り切れることです。逆に硬いシャフトはしなりを感じにくく、手でクラブを下ろす手打ちになりやすいのでおすすめできません」
次は素材についてのアドバイス。日本では軟鉄鍛造モデルがもてはやされているが、こだわるべきか。
「軟鉄鍛造モデルはたしかに打感がいいといわれています。しかし、アベレージゴルファーにはもっと大事にして欲しいファクターがあります。ステンレス鋳造モデルの長所は複雑な形状を作りやすいこと。重心設計の自由度が高く、低重心にしたり、スイートエリアを広くしたりしやすいので、性能面で有利なのは間違いありません。ライとロフトの調整ができるという理由で軟鉄鍛造モデルを選ぶ人もいますが、実はステンレスヘッドでも調整可能なモデルがあります。日本ではツアープロや競技アマを中心に軟鉄鍛造信仰が根強くありますが、米ツアーのプロはそれほど素材にこだわっていません」
マッスルバックとキャビティ、両方のよさを生かす
最後に、ツアープロも実践しているアイアン選びの裏技を教えてもらった。それは番手によって異なるモデルを使い分けるコンビネーションだ。
「プロがコンビネーションアイアンを使う理由は2つあります。ミート率が悪く上がりにくいロングアイアンに易しいモデルを使うことで距離を安定させること。また、飛ぶアイアンは止まりにくいので、ピンを狙うミドルアイアンとショートアイアンはスピンのかかるマッスルバックにしたいからです」
コンビネーションの区切りはロフト角でいえば30度あたり。
「球が上がっているなと感じるのは打ち出し角が15度以上あるとき。それ以下だと、上がらない、難しいという印象になります。打ち出し角はロフト角の約半分なので、30度以下の番手を上がりやすいモデルにするのがおすすめです。番手でいえば6番までは少し難しめでOK。5番や4番だけ上がりやすいキャビティやポケットキャビティを入れて、ユーティリティー感覚で使います」
ショートとミドルアイアンがマッスルバックならロングアイアンはキャビティ、下がキャビティなら上はポケットキャビティやディープキャビティといった組合せがおすすめだ。
「兄弟モデル同士でコンビネーションすれば、顔も似ているしロフト角などスペックも割と近いのでそれほど違和感はありません」
セット外のロングアイアンは売れないので値段が下がっていることが多いし、中古ショップで掘り出し物を探せば案外安くコンビネーションセットが組めるはずだ。工夫次第でわれわれアマチュアにも取り入れることができるテクニックなので、参考にしたい。
構成/吉田宏昭(ゴルフライター) 撮影/鈴木祥
撮影協力/ゴルフフィールズ
教えてくれた人: 関雅史(せき・まさし)プロ
1974年9月28日生まれ、PGA公認A級インストラクターとクラブフィッターの二足のわらじを履く異色プロ。これまで指導したゴルファーは延べ1万人以上、クラブフィッティングは3000人以上。東京都北区でゴルフスタジオ『ゴルフフィールズ』を主宰する傍ら、雑誌・テレビ等メディアでも活躍中。
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