稲津暢の「できるビジネスマンはなぜゴルフがうまいのか」第10回~経験したことがあるスポーツの動きを分析
ゴルフがうまいビジネスマンは体の動きをしっかり把握している
大人になってからゴルフを始めようとする人は、学生時代に何らかの運動経験がある人が多いです。中でも多いのが野球経験者です。
野球経験者の中で、ピッチャーのほうがゴルフの上達が早く、バッターはゴルフの上達が遅いという話を聞いたことがあるかもしれません。これには明確な理由があります。
運動生理学において、体の動きは3パターンに分けられます。体を前後の方向に動かす矢状面(しじょうめん)の動き。体を左右の方向に動かす前額面の動き。上半身と下半身をひねる水平面の動きの3つです。水平面の動きは回旋の動きと置き換えたほうが分かりやすいかもしれません。
ゴルフスイングは矢状面の動きが少なく、左足を踏み込んだ床反力を使い、その力をシャフトに伝えしならせて球を打つ動きです。
野球のピッチングもシンプルで左足を踏み込んでからの動きは前額面の動きが強く、その力を肩や腕のしなる力に変えて球を放つ動きです。
野球のバッティングは、動くボールに対して前後の矢状面の動きが入り、しなりが少なくバット自体重いため回旋の動きが強くなりリストの動きも強くなります。これをゴルフに転換するとボールが左右に散ってしまい、コントロールが難しくなります。
経験したことがあるスポーツの動きを分析すると上達が早い
クラブを一度も握ったことのない人に僕がレッスンを行う際、最初に必ずスポーツ経験を聞きます。その理由は、経験したことがあるスポーツによって、教え方が変わってくるからです。
野球のピッチャーとゴルフが似ているという話をしましたが、卓球、テニス、バドミントンなどもゴルフと近い動きです。サッカーのコーナーキックも、実はよく似た動きを行っています。このようなスポーツを経験している人は、クラブをしならせる動きが比較的簡単にできます。
一方、ラグビー、アメリカンフットボール、格闘技などは矢状面の動きが強いスポーツなので、上半身と下半身をひねるという動きを経験したことがありません。そういう人には、回旋の動きを最初に覚えてもらうことが、早く上達するためのポイントになります。
その人の体に合ったスイングを身につけることが大事
ゴルフをゼロから人に教える時、スイングプレーンがどうだとか、トップ位置がどうだとか言うのは、そもそも上達のアプローチが違うと僕は思っています。
その人の体格やスポーツ経験を踏まえた上で、その人に合ったゴルフスイングを作り上げていくのが、レッスンプロに必要とされている機能ではないかと思います。
欧米ではそういうことが当たり前のように行われていますが、なぜか日本では一つの型にはめようとするタイプのレッスンが多い印象を受けます。
そういう状況も認識した上で、自分のゴルフを上達させるためには何が必要か、自分で考えていくのがゴルフのうまいビジネスマンの発想です。
教えてくれた人:稲津暢(いなつ・とおる)さん
1979年生まれ。國學院大學経済学部卒、テキサス州立大学大学院にて経営学修士(MBA)。MBA取得後にプロ宣言し、PGAツアーのマンデー予選を中心にアメリカのミニツアーに参戦。その後、国内大手コンサルティング会社に入社し、基幹業務システム導入やマーケティング戦略立案に従事。2008年、IF Business Consulting株式会社を設立。企業経営者に特化したゴルフレッスンとコンサルティングサービスを提供している。
構成/保井友秀(ゴルフライター)
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