QP関雅史のギア分析!第21回・アイアンのヘッド素材、どう選ぶ?
2021.12.03
Q.アイアンの素材は、ステンレスと軟鉄でどう違うのでしょうか。ステンレスヘッドのほうが大きいものが多いので安心して構えやすいように思うのですが、逆に軟鉄を使うメリットはありますか? 飛距離的には素材によって変わるのでしょうか? ゴルフを始めたばかりなのですが、きちんと練習してシングルを目指したいと思っています。
A.素材そのもののポテンシャルには大きな違いはありません。設計上、ステンレスはやさしさ重視、軟鉄は操作性を追求したものが多くなっています。
ステンレスと軟鉄の差は素材ではなく設計の違いから生じる
日本のゴルファーの間ではプロアマ問わず軟鉄鍛造信仰が根強い。ステンレスに比べて軟鉄は本当に優れているのか。そうだとすればどこが優れているのか。
雑誌やテレビの企画でありとあらゆるアイアンを打ち比べている関雅史プロに聞いてみた。
「まず、軟鉄だから性能がよく、ステンレスだからよくないということはありません。日本のプロや上級者は軟鉄鍛造ヘッドがほとんどですが、アメリカPGAツアーのプロはステンレスアイアンが多数派です。つまり、性能面に関しては、フェース面以外は軟鉄であろうがステンレスであろうが大きな違いはないといっていいでしょう。また、素材の比重も軟鉄とステンレスはほとんど変わりません。ステンレスヘッドが大きいのは、素材の特性ではなく、設計上のねらいによるものです。そういった意味でステンレスヘッドは、よりやさしく安心して使えるといえますが、最近はヘッドサイズの大きな軟鉄アイアンも出てきています。飛距離もステンレスと軟鉄の素材による違いはありません。しかし、ステンレスアイアンで、フェースの素材にチタンやマレージングを使用している場合は、反発力が高いので初速が出てキャリーが出ます。また、一般的に軟鉄アイアンはロフトが寝ているものが多く、ステンレスヘッドはロフトが立っているストロングロフトが多いので、その結果、ステンレスアイアンが飛ぶものが多いということになります」
軟鉄のイメージのよさも性能のひとつ
それでは軟鉄の優位性はどこにあるのだろうか?
「軟鉄は打感がいいといわれていますが、感じ方は人それぞれ。ステンレスでも打感のいいヘッドはたくさんあります。ただ、軟鉄鍛造アイアンはプロや上級者が好むような形に作られているのでイメージがいいのは確かです。アイアンに操作性を求めたり、正確に距離を打ち分けたい人には安心感につながっています。また、飛距離が出るステンレスはスピン量が少ないため、一般的には軟鉄のほうが止まりやすいといえます。ライ・ロフトの調整ができるのも軟鉄ヘッドの長所です。シングルを目指すのであれば、クラブとともに成長し、腕を磨いていける軟鉄がおすすめ。少し背伸びをしてマッスルバックを選ぶのも悪くはないと思います」
要は自分のプレースタイルに合わせてクラブを選ぶこと。
ゴルフをエンジョイしたならステンレス、スコアや技術を極めたいのなら最初から軟鉄がおすすめだ。
教えてくれた人 関雅史(せき・まさし)プロ
1974年9月28日生まれ、PGA公認A級インストラクターとクラブフィッターの二足のわらじを履く異色プロ。これまで指導したゴルファーは延べ1万人以上、クラブフィッティングは3000人以上。東京都北区でゴルフスタジオ『ゴルフフィールズ』を主宰する傍ら、雑誌・テレビ等メディアでも活躍中。
構成/吉田宏昭(ゴルフライター) 撮影/斉藤秀人 撮影協力/ゴルフフィールズ
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