続！平野茂の100切りラウンド術 第８回～傾斜から当たらないときに注意すべき体の部位は？
90切りを目指すレベルまでくると、アイアンショットのスイングは固まって、ミスの範囲もある程度まで計算できるようになって、ボギーに収めることができるようになってきたことだろう。
ところが傾斜からのショットだけは、大オーバーしてしまったり大ショートしてしまったりと対応できずにダボ以上になってしまう。
多くのアマチュアゴルファーをスコアアップへと導いてきた平野茂プロは「傾斜は普段練習することができないので、どうしてもミスが多くなってしまいます。ですが、打ち方の注意すべき点を１点に絞って望むことで、経験値が積み上がっていき、ちょっとずつでも上達することができます」と語る。
では、傾斜の打ち方の注意すべき点を解説してもらおう。
左足上がりでは右のお尻を下げずに打とう
フェアウェイの平らな場所からのアイアンショットでも「ボールを上げたい」心理が働くと、ダウンスイングからインパクトにかけて体の軸が右に傾いてしまう。右肩が下がってクラブヘッドが地面に早く落ちるため、スイング軌道の最下点がボールよりも手前となり、ダフリの結果を招く。ボールの手前をたたいたあとにクラブヘッドが上昇し、フェースの刃がボールに直接当たるとトップとなる。ダフリもトップも紙一重というわけだ。
90切りのゴルファーたちは「そんなことくらい知っているよ！」と、きっと口をそろえるだろう。
頭では理解していながら、100切りゴルファーたちと同じようなミスをしてしまうのは、傾斜地からショットする際に、いろいろなことに注意しすぎて、結局インパクトの体勢を崩さないことができていないからだ。傾斜地に行ったら、注意すべき点は１点に絞りたい。
「左足上がりを例に挙げましょう。アドレス時から体重が右足に多く乗るのでボールが上がりやすい状況ですが、そこに落とし穴があるのです。上げたい意識が働いた瞬間にインパクトで右のお尻が下がってしまいます。右のお尻を下げないで、むしろ少し浮かせるくらいの気持ちでスイングすればボールを正確にヒットできますよ」
インパクトで右のお尻が下がると、体の左半身が伸び上がって体の軸が大きく右に傾くことになり、ダフリやトップになりやすい。仮にクリーンヒットできたとしても、フェースが極端に寝て当たるので、高く上がりすぎて大ショートしてしまう。傾斜地と平行に構えて、斜面に沿ってクラブを振るイメージが必要な場面だが、インパクトの右のお尻が低くなってしまうのはマイナス要素だ。「インパクトで右のお尻を高く保つ」こと１点に注意して、ショットに望みたい。
左足下がりはインパクト後に右足を前に踏み出そう
左足下がりの場面では、左足上がり以上にボールを打ち上げたくなる。傾斜がきつくなればなるほど、インパクトで右のお尻が下がりやすいわけだ。椅子に腰をかけているとすれば、右のお尻を椅子から浮かせるような感覚でボールを打つようにすれば、すくい打ちのミスを未然に防げてミート率がアップする。
「左足下がりのショットも右のお尻をヒップアップさせるイメージが決め手となりますが、すくい打ちになりやすい傾向のある人は、ボールを打ったあとに右足を目標方向に一歩踏み出すようにしましょう。そうすればインパクトで右のお尻が下がることは絶対にあり得ません」
逆にインパクトで右のお尻が下がってしまうと、インパクト後に右足を前に踏み出すことはできない。左足上がりでも左足下がりでも、「インパクトで右のお尻を高く保つ」ことだけに注意しよう。
なお、ボールの位置は左足上がりも左足下がりも平地からのショットと同じでいい。７番アイアンならスタンスの中央よりもやや左、目安としては左胸の前と考えていいだろう。傾斜地では体重移動をあまり使わないから、平地よりも右側に置くのがいいというプロもいるが、ボールを右に置くということはインパクトで右のお尻をヒップアップしなくても打ててしまうことになる。
どんな傾斜でも、ボールを左胸の前にセットし、右のお尻を浮かせれば、正確にインパクトできるということを頭に入れておこう。
教えてくれた人： 平野茂（ひらの・しげる）プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で２年生からレギュラーとして活躍しプロ野球選手を志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成／三代崇（ゴルフライター） 撮影／鈴木祥 撮影協力／富里ゴルフ倶楽部（千葉県）
