続!平野茂の100切りラウンド術 第4回~40ヤードのアプローチはフィニッシュが肝
ピンまで40~50ヤードなど中途半端な距離が残ったときは、距離感を合わせて打つのが案外難しい。
基本的にはスイングの大きさで距離をコントロールするが、バックスイングの振り幅がつい大きすぎてしまうと無意識のうちにインパクトが緩みやすいし、逆にバックスイングが小さすぎてはインパクトでパンチが入ってしまうことになりやすい。インパクトの打点が安定しないのでは距離感や方向性を合わせるどころの話ではなくなってしまう。
多くのアマチュアゴルファーをスコアアップに導いてきた平野茂プロは「コースに出たときに頼りになるのは自分の感覚のみ。自分なりの距離感を確立させることが大事ですが、それ以前にアプローチスイングの基本形を見失わないことです」と力説する。アプローチのスイングの基本形を理解しているようで、大半の人は勘違いしているというのだ。
ラウンド中ミスヒット減らすためにも、アプローチの基本形を紹介する。
テークバックとフォローは左右対称なんてウソ!?
アプローチのレッスンにおいては、スイングの振幅の大きさを時計盤によくたとえられる。自分の背中に大きな時計盤があると仮定し、テークバックでクラブを9時くらいの位置まで上げたら、フォロースルーは3時くらいの位置まで振り抜くという具合だ。9時から3時までの振り幅だけでなく、8時から4時までや、10時から2時までなど、自分なりにスイングの振幅の大きさを加減して、キャリーが何ヤード出るかを練習でしっかりと把握しておくことが大切だ。
「振り幅を安定させるためには、テークバックとフォロースルーが左右対称となるようなスイングがよいといわれます。たしかにそのとおりなのですが、左右対称に見えるのは真正面からのアングルであって、実際は左右対称ではありません。ポイントは、フォロースルーでグリップが左腰の前にくること。これが大事です」
9時から3時まで振るスイングを考えてみよう。アドレスでクラブヘッドが真正面にあって、腕や手を使わず体の回転のみでスイングすればテークバックでもクラブヘッドが体の真正面に保たれていて、フォロースルーでもそれは同様だ。しかし、ハンドファーストに構えているため、グリップは体の正面にはない。つまり、グリップエンドは常に自分のおへそを指すのが正しいイメージと考えてしまうのだが、平野プロはノーというのだ。
グリップが左腰の前にあれば体の回転のみで打てている証拠
テークバックの位置ではクラブヘッドは体の真正面にある。しかしハンドファーストで構えているため、グリップエンドはおへそを指してはいない。この状態のまま、体の回転のみでテークバック、ダウンスイング、インパクト、フォロースルーとなると、フィニッシュでは左腰にグリップがくるのが正しい。
「インパクト以降では左肩の高さを変えずに、グリップを左腰の前に持っていく意識を持ってクラブを振り抜くことが大事です。注意して欲しいのはフォロースルーでクラブヘッドは体の真正面にあるけれども、グリップは体の真正面ではないということです。多くのアマチュアはグリップを体の真正面にキープしようとして、肝心のクラブヘッドが体の真正面から外れてしまっています」
左右対称形に振ろうとすると、フォロースルーで左ひじが突っ張ってしまうことにもなる。おまけにグリップばかりを体の真正面にキープしては、クラブヘッドの位置にズレが生じ、スイング軌道の誤差が大きくなってしまう。こうした左右対称形の勘違いが、ミスヒットの原因になる。
フォロースルーでグリップを左腰の前に持ってくると左ひじにゆとりが生まれ、スムーズな振り抜き感覚が得られる。スイング軌道も安定し、アプローチの精度が劇的にアップするというから、さっそく試してみよう。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で2年生からレギュラーとして活躍しプロ野球選手を志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成/三代崇(ゴルフライター) 撮影/鈴木祥 撮影協力/富里ゴルフ倶楽部(千葉県)