平野茂の100切りラウンド術・第7回~ミスも救済してくれるコースマネジメントの基本
ショットのミスはそんなに多くないのに、いつも100以上たたいてしまうという人はどこに原因があるのだろうか。
OBを徹底的に回避する、池や急斜面には打ちこまない、バンカーが苦手なら避けて通る、などの決まりごとを守っていても、気がついたら100オーバーというのはコースマネジメントの基本的な考え方が備わっていないことが考えられる。
多くのゴルファーを100切りに導いてきた平野茂プロは「100をたたいてしまう人は、どんな場面でもピンが見える方向に打とうとする傾向があります。その結果、仮にOBや池などに打ち込まなかったとしても、どんどん悪い状況に追い詰められていきます」と指摘する。100をたたかないためのコースマネジメントの基本を学ぶとしよう。
林からはいったんフェアウェイに出し、3打目につなげよう
ティーショットを林の中に打ち込んでしまった場面を想像して欲しい。
セカンド地点からはグリーンの方向が見えるが、ボールの前方には数本の木が立ちはだかっていて、木と木の間のスペースが狭くなっている。そんな場面では、悪魔のささやきがゴルファーを迷わせる。
「グリーンの方向に打つには危険が大きすぎる」、「でも、うまく打てればパーが取れるかもしれないよ」、「ちょっと怖いな」、「成功するかもしれないよ」、「じゃあ賭けてみるか」…といった感じで、結局グリーンの方向に打つほうを選択してしまう人が多いのだ。
結果は前方の木に当たってキンコンカン。林のさらに深いほうに飛んでしまい、脱出不可能の最悪の事態を招くことになる。下手をすればそのホールだけで10以上の大たたきになる。
「この場面では上級者はグリーンの方向には絶対に打ちません。成功の確率が8~9割でないかぎり、無理な作戦は選択しないのです。スコアメイクにはギャンブルショットはタブーです。冒険したくなる気持ちもわかりますが、結局は無謀策であることを理解してください。この場面では木と木の間が広くなったスペースを狙い、いったんフェアウェイに戻すことを第一に考えるべきです」
フェアウェイに出すだけでは、損した気分になるかもしれない。
しかし、無理にグリーン方向を狙った結果、大トラブルになっては大たたきに一直線だ。その点、いったんフェアウェイに戻し、3打目でグリーンに近づけておけばかえってスコアがまとまりやすくなる。
林の中からのショットでは一歩引くことを考えるのが大たたきを防ぐポイントだという。
グリーン方向に打ってばかりではリスクを背負うことになる
続いてはパー5第2打地点という設定で考えてみたい。ティーショットがフェアウェイの右サイドをとらえて、ピンまでの残り距離は300ヤード。ボールのライは良好なので3番ウッドで打つとしよう。
その場所からはグリーンがよく見えるが、グリーンの右手前には池がある。
そんな場面でグリーンの方向をまっすぐ狙って打つとしたら、100切りのチャンスを自ら放棄してしまうことになる。セカンドショットもいい当たりでフェアウェイをキープ。ピンまで残り100ヤード前後だ。ところが、目の前に池が横たわっていて、強烈なプレッシャーのかかる池越えのショットになってしまい、結果はダフリやトップで池ポチャに。そんな失敗を繰り返していると90台のスコアはなかなか見えてこない。
「グリーンの右手前が池なら、池がないほうのフェアウェイ左サイドに運んでおくことを考えましょう。そうすれば3打目は池越えにはならず、プレッシャーなく打てますし、仮にチョロをしても次が打てます。何でもかんでもグリーンが見える方向に打つのではなく、ホールの対角線を上手に利用し、ショットを安全確実につなげましょう」
ツアープロでもミスショットはする。しかし、ミスしても次でリカバリーができる所に外すというリスク回避のマネジメントができている。100切りゴルファーの場合には、ミスショットはもっと多いはずで、その想定をしながら最善を望むことが大事だ。
また、池が目も前にあるなど心理的プレッシャーがあると、体がスムーズに動かず、ミスショットの可能性は増える。クラブがのびのびと振れる状況をできるだけ多く作り出すことがスコアをうまくまとめるコツなのだ。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で2年生からレギュラーとして活躍しプロ野球選手を志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成/三代崇(ゴルフライター) 撮影/鈴木祥 撮影協力/富里ゴルフ倶楽部(千葉県)