平野茂の100切りラウンド術・第9回~弾道が安定するきれいなフィニッシュのつくり方
練習場とゴルフ場のスイングの違いはいろいろあるが、ゴルフ場ではフィニッシュがとれなくなるというものがある。
練習場で打っている弾道と比べて、球に勢いがなく安定感もない。
もちろんフィニッシュがとれる、とれないは結果で、原因は別のところにある。
多くのゴルファーを100切りに導いてきた平野茂プロは、「フィニッシュが決まらないのは、振り切れないからです。スライスを怖がって体を回しすぎるせいで、ヘッドが追いつかないからで、つまり、振り遅れです」と語る。
クラブを気持ちよく振り切って、フィニッシュも決まる! 会心のショットの回数を増やすにはどうしたらいいかをご指南願った。
インパクトでヘッドがグリップよりも先行するイメージを持とう
ゴルフクラブのシャフトを「棒」と考えているゴルファーが多いが、本来シャフトは「ムチ」であるべきものだ。アドレスの段階ではシャフトはまっすぐでも、スイングを開始した瞬間からシャフトは必ずどちらかの方向にしなるムチへと変身するわけで、そのためには硬すぎるシャフトは避けたいところだ。
ドライバーショットのヘッドスピードが40メートル/秒前後もゴルファーであれば、スイング中にシャフトのしなりを感じやすいRが適しているといえる。
「シャフトはムチと同じですから、インパクトのときにシャフトが逆しなりとなるイメージが絶対に必要です。クラブヘッドがボールに当たる瞬間はグリップよりもヘッドが先行するのが理想なのに、100切りのゴルファーは手元が先行してヘッド側が遅れてくるようなしなり方をイメージしている人が多い。クラブが気持ちよく振れない原因がそこにあるのです」
手元よりもヘッドが遅れてシャフトがしなるイメージがある人は、インパクトの瞬間にフェースが物すごく開いてしまう感覚が働く。そのために「フェースを閉じて打たなくちゃ!」と思って、ボールをつかまえに行こうとする。ダウンスイングで右肩が前に出て右足にほとんどの体重が乗って、左腰が引ける。結果、アウトサイドインのカット軌道となってしまうのだ。
インパクトの手前でシャフトがしなりヘッドがグリップよりも先行する。
次にボールに当たった瞬間に反動で、今度はグリップがヘッドよりも先行する。
それから再びヘッドが加速して、ヘッドがグリップよりも先行していく。
シャフトは常に振動しているわけで、フェースを閉じて打とうとしなくても。ヘッドがシャフトよりも先行するイメージを持つだけで自然にフェースは閉じ気味にボールをとらえることができるのだ。
ヘッドカバー素振りでスムーズな振り抜き感覚をつかむ
インパクトでヘッドがグリップよりも先行するように、シャフトがしなるイメージをつかむには、ヘッドカバーを両手で持ち、軽く素振りすると効果的だ。スポーツタオルの端を結んで球をつくり、素振りするのもいいだろう。
この素振り練習のポイントは、インパクトで自分の手よりもヘッドカバー、あるいはスポーツタオルの先端が追い越していく感覚を体感することだ。
「ヘッドカバーよりも手が先に行くようなスイングでは、ボールが右に飛んでしまいそうな気がするから、ボールを左に巻き込もうとする動きが生じやすい。でも、インパクトでヘッドカバーが両手を追い越せば、ボールがつかまるイメージが働きやすく、安心感が生じます。結果的に打ち急ぎがなくなり、インパクトのタイミングが合いやすくなります」
インパクトでヘッドカバーが手を追い越すイメージは、スムーズな振り抜き感覚にもつながる。そうなれば、フィニッシュで右足に体重が残ることがなくなり、フィニッシュが決まる。
逆に体を回そうとすればするほどダウンスイングで胸が早く開き、手が先行してクラブヘッドが遅れやすくなる。
フィニッシュが決まることで、自然とインパクトでグリップよりもヘッドが先行する正しい形になるので、ボールもつかまるし、球筋も安定してくる。コースでもフィニッシュをとることを心がけたい。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で2年生からレギュラーとして活躍しプロ野球選手を志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成/三代崇(ゴルフライター) 撮影/鈴木祥 撮影協力/富里ゴルフ倶楽部(千葉県)