新!平野茂の100切りラウンド術 第10回~寄せワンのためのアプローチ高低簡単打ち分け法
90切りのレベルに達すると、ドライバーやアイアンなどのショットはうまく打てても、グリーンまわりからのアプローチの1打のミスが命取りになるケースがよく見られる。特にザックリやトップは絶対に禁物。
OK圏内までピンの近くに寄らなかったとしても、せめて3~4ヤード以内、最悪でも2パット以内でホールアウトできる距離に運んでおきたいところだ。
多くのゴルファーを90切りに導いてきた平野茂プロは、「あらゆる状況から寄せるには高低の打ち分けができたほうがいいですが、どのクラブを使うにしてもまずはロフトなりの弾道の高さをそろえるところから始めて、距離感を出せるようにしてほしいと思います」と語る。
90切りのためのアプローチの考え方を学ぼう。
弾道の高さをそろえられてこそ距離感が生まれる
アプローチでは「距離感」が大切だとよくいわれる。ところで、その距離感とは一体なんだろうか。
ゴルフのレッスン書ではスイングの振り幅の大きさで距離をコントロールするとか、時計盤の8時から4時までの腰くらいの高さのスイングで20ヤード、9時から3時なら30ヤードを目安にするといいなどというが、それを鵜呑みにして頭で距離を計算しながら打つとおかしなことになってしまう。
誰かとキャッチボールするときに、15メートルくらい先の相手にいちいち距離を計算しながらボールを投げるなんてことはしないはずだ。相手までの距離を目で測り、本能的にボールを投げるだろう。
つまり、距離感とは目から情報を得て働かせる「感覚」なのだ。それがアプローチの距離感にそっくり当てはまる。
「アプローチの距離感というと、自分からピンまでの距離を中心に考えがちですが、それ以上に重要となるのが弾道の高さです。ボールをどのくらいの高さで上げて、グリーン上のどの辺に落とすかの想像力を働かせることで初めて距離感が生まれるのです」
ボールからグリーンエッジまで10ヤード、グリーンエッジからピンまで20ヤードの場面があったとしよう。距離だけでいえば、15ヤード上げて15ヤード転がすのもいいし、20ヤード上げて10ヤード転がす、あるいは25ヤード上げて5ヤードだけ転がしてもいい。
しかし、自分がボールを上げたい距離や転がしたい距離にマッチした球の高さがしっかりイメージできて打てないと、自分の思ったとおりのアプローチがうまく打てないのだ。
フェースを踏んでみてクラブのロフト角を認識しよう
キャッチボールの話に戻るが、15メートル離れた相手に対して速い球を投げるときは低くて強い球、遅い球なら山なりの緩い球を投げるだろう。アプローチもそれと同じでピンに向かってどんな球を打つかで、高さとスピードのイメージが必要になってくる。
アプローチでザックリやトップが生じるのは悪いライにうまく対応できなかった面もあるが、自分が打ちたい球のイメージが曖昧なためにインパクトでつい力が入ったり緩んだりしてしまうのが一番の原因だ。
それでは、球の高さのイメージづくりはどのようにすればいいのだろうか。
「クラブにはそれぞれのロフト角がありますが、フェース面を踏んでみるとシャフトがロフト角と同じ角度で傾きます。58度のサンドウェッジなら打ち出し角が58度となりますから、フェースを踏んでアドレスをつくってみると高さのイメージがすぐにつかめます。7番アイアンなら32度前後となり、低い角度で打ち出す感覚が明確になります」
このくらいの高さで打ちたいと思ったときに、フェースを踏んでみて自分のイメージよりも高いと思ったら、もう少しロフト角の少ないクラブに持ち替えよう。これを普段の練習でやっておいて、このように自分のイメージとリンクしたクラブの番手を持つことがとても大切だという。
距離感をつかむ練習を一生懸命に励んでも、このクラブならこのくらいの高さで飛んでいくというイメージをしたうえで、弾道の高さがそろってこないと、いつまでたっても本当の距離感が身につかないのだ。
80台を目指すゴルファーであれば、寄せるために転がす、上げるなどを何パターンか持っていたほうがいい。上げる、転がすなどで何番手か打ちやすいクラブを選んで、握ったクラブの高さを把握することと、その高さにそろえられることができれば、アプローチの精度はかなり上がっていくことだろう。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学卒業後、プロ野球選手を目指すが、ゴルフに転向。2007年にJPGA公認インストラクターの資格を取得。東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、チーフインストラクターとして多くのアマチュアを指導している。師匠は叔父の中山徹プロ。
構成/三代崇(ゴルフライター) 撮影/田辺恵理 撮影協力/フラットゴルフフィールド