平野茂の100切りラウンド術・第10回~知るだけで差がつく4種類の傾斜への対応術
コースは練習場と違って、ボールがフェアウェイにあっても地面がまっ平らということは案外少ない。大なり小なりの傾斜地になっているのが、むしろ普通だと考えておくべきだろう。
急傾斜でクラブを振り回すと体のバランスが崩れてしまうから、大抵の人はコンパクトに振ろうとするが、緩やかな傾斜地でも油断は禁物だ。
多くのゴルファーを100切りに導いてきた平野茂プロは、「傾斜に対してどう構えるかということも大事ですが、それ以前に傾斜によって球筋がどう変化するかを正しく理解しておくことが重要です」という。
傾斜には大きく分けてつま先上がり、つま先下がり、左足上がり、左足下がりの4つがあるが、それぞれの傾斜の特徴とアドレスの注意点をアドバイスしてもらおう。
つま先上がりとつま先下がりは球筋の変化によって体の向きを調整する
平らなフェアウェイから打つときは練習場と同じようにフェース面を目標にまっすぐ向けて、ボールと目標を結ぶ飛球線と平行に立つ。フェースの向きも体の向きもスクエアにセットするのが基本というわけだ。
しかし、つま先上がりとつま先下がりではフェース面を目標に向けたつもりでも、実際はまったく違う方向を向いてしまうという。
「つま先上がりでは平地と比べてクラブヘッドのトゥ側が高くなるため、フェースを目標にまっすぐ合わせても実際には目標よりも左を向きます。つま先左足下がりはこの逆で、平地よりもヒール側が高くなり、フェースが目標よりも右を向くのです。傾斜からでもまっすぐ打つことをするのではなく、つま先上がりはボールが左に飛びやすいことを計算に入れて、目標を右寄りに設定しましょう。ボールが右に飛びやすいつま先下がりは目標を左寄りにとって構えてください」
フェース面にティペッグを接着剤ではり付けたり、細い金属の棒を磁石で付けたりして、傾斜地でアドレスの姿勢をつくってみよう。
平地ではフェース面に付けた棒とリーディングエッジ(フェースの刃の部分)が同じ方向を向くが、ツマ先上がりではリーディングエッジが目標を向いてもフェース面の棒が目標よりも左側を向くことがよくわかる。
逆に、つま先下がりではフェース面の棒が右を向くのが一目瞭然だ。
このように傾斜地によってフェースの向きがどう変化するかを頭に入れておき、傾斜にうまく対応すれば、グリーンを大きく外してしまうことが激減するはずだ。
左足上がりと左足下がりはクラブの番手を替えて距離感を合わせる
つま先上がりとつま先下がりはクラブを構えたときのフェース向きの変化によって左右の曲がりが生じるが、左足上がりと左足下がりの場合はフェースの向きの変化がないため、左右の曲がりはほとんど発生しないと考えていいだろう。
その代わりとしてロフト角の変化が生じることから球筋の高低やキャリーが大きく変わることを正しく理解しておこう。
「左足上がりの場合は低いほうの右足に体重を多く乗せて、傾斜と平行に立つ感じで構えます。すると傾斜に対しては平行でも、地球に対しては左足上がりで構えることになるため、7番アイアンのロフト角が8~9番アイアンのロフト角に変化し、思ったよりも飛びません。逆に、左足下がりでは低いほうの左足に体重を多く乗せて傾斜と平行に立つと7番アイアンのロフト角が5~6番アイアンのロフト角に変化して、ボールが低く飛び出してキャリーとランが出すぎてしまうことが多いのです」
左足上がりではフェース面が寝て、左足下がりはフェース面が立つことで、ボールの打ち出し角度が大きく変わるというのだ。
ピンやグリーンをオーバーしてしまうとスコアメイクが苦しくなるので、左足下がりでグリーンの奥にOBや池、バンカーなどがあるケースでは絶対にオーバーしないように1番手か2番手、短めのクラブを選択しよう。
左足上がりの場合はグリーンの手前にアゴの深いバンカーなどが待ち受けていれば手前にショートしてしまうことがないように1番手か2番手、大きめのクラブを持ち、グリーンにしっかり届かせるつもりで打とう。
せっかくティショットがまっすぐ行っても、傾斜地から予想外の所に飛んでしまい、大たたきしてしまうことがある。100切りを目指すのであれば、ダボ以上はたたくと苦しくなるので、4つの傾斜の球筋の変化をしっかりと頭に入れ、実践で役立てたい。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で2年生からレギュラーとして活躍しプロ野球選手を志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成/三代崇(ゴルフライター) 撮影/鈴木祥 撮影協力/富里ゴルフ倶楽部(千葉県)