多くのゴルファーにとって、フルスイングの動きはイメージできても、アプローチのように振り幅を小さくコントロールする打ち方はイメージしにくいことだろう。

そのため、スイングが緩み、ダフリ、トップ、シャンクなどのミスが出てしまう。

背中に大きな時計盤があると想定し、８時から４時までの振り幅とか、９時から３時、10時から２時などとスイングの振り幅を変えて打つ練習を積み、自分なりの距離感をつかむことがスコアメークに不可欠な要素となるが、多くの初心者ゴルファーを指導してきた平野茂プロは、「まずはアプローチスイングの基本形をしっかり身につけることです」と強調する。

アプローチスイングの基本形についてレッスンしてもらおう。

スプリットハンドで持って練習し、手打ちを徹底防止する

アプローチショットでどうしてスイングの振り幅をコントロールしなくてはならないかというと、ターゲットまでの距離が近いからだ。

例えばアプローチウエッジのフルショットで90ヤードのキャリーが出る人が、ピンまで30ヤードのアプローチを打ちたい場面で大きな振り幅で打ってはグリーンを大オーバーしてしまうのはいうまでもない。右手に持ったボールをやさしくトスするような感覚で、スイングを加減して打たないことにはピンの近くにボールを運べない。

ただし、ここに落とし穴がある点に要注意だ。目標までの距離が近いと、スイングの振り幅を加減しようとして手首をこねやすいことに警戒しなくてはならない。

「アプローチの練習をするときはスプリットハンドで打ちましょう。両手を10～15センチほど離してグリップすることで、インパクトエリアで両腕をスムーズに入れ替える感覚をマスターしてください。なるべく手首を固定し、一定のスピードとリズムでスイングする動きを先に身につけておけばアプローチショットは早く上達します」

目標が近い場合、体を回すことを忘れて手先だけの動きでボールを打ちにいってしまいやすい。テークバックで手首をこねるとインパクトで元に戻そうとして手首が暴れることになり、スイングの軌道もフェースの向きも狂わせてしまうのだ。

その点、スプリットハンドで打てば手首が暴れず、打ち急ぎのミスがなくなる。アドレスで両腕をすんなりと伸ばして構えたら、両腕の長さが変わらないように体の回転主体でスイングしよう。

体の回転と腕の振りが同調し、インパクトの打点が安定することも実感できるはずだ。

左の股関節の上でスイングする意識を持てばインパクトが安定

スプリットハンドの練習で覚えたアプローチスイングの感覚を大切にしながら、振り幅をコントロールして打ち、キャリーがどのくらい出るかを自分でたしかめよう。

アプローチウエッジを持ち、８時から４時までの振り幅で打った場合は15ヤード、９時から３時までなら25ヤード、10時から２時は45ヤードという具合に大体の基準を把握しておくことだ。距離には個人差があるので、自分なりの距離感をつかんでおくことが重要だ。

「アプローチのスイングは振り幅が小さいのでスタンス幅は狭めにしましょう。最初から体重を左足に多めに乗せておき、左股関節の上でスイングするイメージを大事にしてください。練習するときは右足のかかとを少し浮かせておき、左股関節に軸を意識して打つと効果的です」

左股関節の上でスイングするイメージを持てても、腕の使い方を間違えると体重がだんだん右足に寄ってくる。テークバックで手首をこねてしまい、インパクトで元に戻そうして、しゃくり打ちになってはインパクトで右のお尻が下がった体勢となる。左のお尻が浮くことがないように左の股関節の上で体を回転し、腕を振る意識を持つことが大切だという。

アプローチはスコアメークのカギとなる。上達のスピードが格段に変わってくるので、始めたときからしっかりと基本を身につけておきたい。

教えてくれた人：　平野茂（ひらの・しげる）プロ

1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で２年生からレギュラーとして活躍しプロを志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成／三代崇（ゴルフライター）　撮影／田辺恵理　撮影協力／フラットフィールドゴルフ

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