80切りを目指すゴルファーにとって、アプローチの精度を上げるには何を考えるべきだろうか。

ドライバーの飛距離差やアイアンの精度がそれだけで１打の差となることはないが、60ヤード以内での差はそのまま１打の差に反映される。60ヤード以内で活躍するのがサンドウエッジになるだろうが、このクラブで意図したとおりの球を打てるようになれば、70台が見えてくる。

多くのゴルファーを80切りに導いてきた平野茂プロは「最も重視すべきは、スピンコントロールです」と指摘する。

スピンをかけて打つメリットはどこにあるのか。また、どのように打てばスピンがかかりやすいのか。知っているようで、案外知らないスピンのメカニズム。

今さら聞けないスピンのかけ方を、平野プロに教えてもらおう。

ボールの足を切り取るイメージでイン・トゥ・インに振る

クラブのフェース面には溝があって、これは卓球のラケットのラバーのような役割を果たしている。アプローチウエッジやサンドウエッジなどフェース面が縦に長いクラブは溝が多く、ボールにバックスピンがかかりやすい。弾道の高さをそろえるには、ロフトが大きく作用しているように見えるが、実はスピン量を安定させなければ、高さも飛ぶ距離も安定しない。

100切りや90切りを目指す人は、56度のロフト角そのままに打ってピンの近くに運べれば十分だが、70台を目指すのであればスピンをコントロールする技術をマスターしておきたい。

「ヘッドを上から振り下ろしてスピンをかけるというよりは、イン・トゥ・インにボールを打ち抜いてスピンをかけるのが理想の打ち方といえます。ボールに足があるとすれば、ボールの足をスパッと切り取ってしまう感覚です。そんなイメージで打つとスピンをコントロールしやすくなり、結果的に距離感が合いやすくなります」

スピンをかけるというと、インパクトで上から打ち込むイメージを持つかもしれないが、ソールを地面に対して水平に、レベルに動かすことが大切なポイントになる。

いい換えれば、ソールを感じて打つことが、スピンを上手にコントロールすることにつながるのだ。

ソールを地面にコンタクトする意識をしっかり持とう

アプローチショットでソールを感じて打てるようになるには、ボールがない状態で構えた位置にソールを正しく戻す練習が効果的だ。なぜかというとボールを打つ前に地面を打つイメージがないと、なかなかうまく打てないものだからだ。

アベレージゴルファーには、アドレスのときはソールを芝につけているのに、インパクトではソールが芝にきれいに着地していない人が多い。プロはボールを打つというよりも、ソールを地面にコンタクトする感覚だという。アドレスでソールした場所に戻るというイメージだ。

「ショットの前に素振りするとき、ほとんどの人は空振りの素振りをしますよね。これではだめです。ティアップしたボールを打つドライバーならいいのですが、芝の上のボールを打つならソールで芝を軽くこする素振りが本番のショットに直結します。リハーサルというわけですが、ボールの手前の芝を滑らせるイメージづくりをしておくとよい結果が得られます」

クラブのロフト角ばかりに意識がいくと、ボールを上げようとしてしまいがちだ。加えてフェースの面に目がいくとボールをつかまえようとして、だんだん目標よりも左に飛ぶようになり、方向性も距離感も狂わせてしまうことになる。

ボールを上げたくなると自分の体が地面に置いたボールよりも右側となる。ボールを最初から低い角度で打ち出すイメージを持って、自分の体をボールよりも左側にキープして打つようにしたい。

70台を目指すのであれば、グリーンまで残り60ヤードの距離からでも、グリーンヒットは当然、ピンにからめるようにしたい。

出球の高さが安定し、スピンをコントロールして打つ。それが60ヤード以内の距離感の安定につながり、本当の意味でアプローチが上達するのだ。

教えてくれた人：　平野茂（ひらの・しげる）プロ

1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で２年生からレギュラーとして活躍しプロを志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成／三代崇（ゴルフライター）　撮影／田辺恵理　撮影協力／フラットフィールドゴルフ

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