極!平野茂の100切りラウンド術 第7回~バンカーからも寄せられる距離の打ち分け術
80を切るためにはバンカーショットの上達も必須条件であるのはいうまでもない。
100切りゴルファーはバンカーからとにかく1回で出せるようになること、90切りゴルファーは1回でグリーンに乗せることが目標となる。80切りの人は、できるだけピンの近くに寄せてパーを取れるまでレベルを上げたい。
多くのゴルファーを80切りに導いてきた平野茂プロは、「近いピンや遠いピンに対して距離をコントロールする力をつけることでバンカーを避けなくてもいいレベルまで達しなければなりません」と語る。
ボールを直接打たずにボールをまわりの砂ごと飛ばすバンカーショットで距離を打ち分けることはかなり難儀に思えるが、アドレスを調節するだけでマスターできるという。その調節方法を教えてもらうとしよう。
ピンが近いほどフェースを開き、オープンスタンスに構える
80台のスコアで回れるゴルファーであれば、バンカーショットのメカニズムは十分に理解できているはずだ。
ご存知のようにバンスと呼ばれるサンドウエッジのソールが出っぱった部分で砂をたたき、砂の爆発力を引き出してボールをピンのほうに飛ばすのがバンカーショットの基本。フェースを開けば開くほどバンスの機能を活用しやすくなるというわけだ。フェースを開くと56~58度のロフト角が70~80度くらいとなるため、ボールが高く上がりやすくキャリーを少なく抑えられる。
「ピンが近いときはフェースを開いて、オープンスタンスに構えます。ピンまでの距離が20ヤード以内ではこの構え方で対応しますが、ピンまでの距離が30ヤード以上になるとフルスイングしてもピンに届きません。距離を出したい場合はフェースをあまり開かずに、スタンスの向きもスクエアに近くなります」
バンカーショットの場合、アドレスを変えずにスイングの大きさを変えて距離をコントロールするのは難しい。ピンが近いときに振り幅を小さくして打つと、インパクト時に砂の抵抗に勝てずにインパクトが詰まり、ザックリしてしまう。ピンが近くても大きめのスイングで打ち抜く「思い切りのよさ」が肝心だ。フェースをうんと開けばクラブを大きく振っても飛びすぎることはないので、信じて大きくスイングしよう。
スイングの振り幅はあまり変えないで、打ちたい距離に応じてフェースの開き加減や、スタンスの向きの調整を変えて打つのが秘訣だ。
あごの高いバンカーこそ左足体重で打とう
フェースを開いて打つバンカーショットはキャリーがあまり出ない代わりに、ボールが高く上がりやすい。ということはバンカーのあごが自分の背丈くらいか、それ以上あるケースにも対応できる。
ただし、ここで最も気を配らなくてはならないのは、「上げたい」意識を持たないようにすることだ。バンカーから1回で出せる自信のある人でも、あごの高いバンカーは苦手という人が80切りのレベルにも案外多い。
「バンカーのあごがどんなに高くても、ボールを打つときは自分の体が左足の上になくてはいけません。つまり、体重をしっかりと左足に乗せてクラブを低く振り抜くイメージでスイングするのです。ボールを上げようと思わずに、目の前の土手にぶつける気持ちで打てばロフトどおりにボールが上がってくれます」
上げようとするほどボールは上がりにくく、低く打とうと思うほどボールが上がりやすくなるものだ。上げようとして上体が反り、右足体重の逆C型フィニッシュの姿勢になってしまう人が多いが、それが大ダフリやトップの結果を招き、脱出失敗の憂き目にあうことになる。80切りを目指すなら、バンカーからでも寄せられるという自信を持ちたい。ピンチからのリカバリーテクニックをしっかりと身につけておこう。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学時代は東京六大学野球で2年生からレギュラーとして活躍しプロを志す。野球を極めた独自の視点で編み出したスイング理論で、短期間でゴルフも上達し、2007年プロ入会を果たす。現在、東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、「飛ぶようになった」「体の使い方が初めてわかった」と多くのアマチュアを短期間で上達させることに成功している。
構成/三代崇(ゴルフライター) 撮影/田辺恵理 撮影協力/フラットフィールドゴルフ