平野茂の100切り宣言!第2回~アイアンが10ヤード刻みで打てるインパクトの真実
100が切れない人に共通しているのは、アイアンショットの際にボールをしゃくり上げてしまうこと。
自分でボールを上げようとすると、ロフトなりのボールが打てないため、番手ごとの飛距離が得られず、いつまでたっても狙ったグリーンに乗せることができない。
プロたちは「ロフトを信じて打ちなさい」というけど、上げようとしても上がらないようではロフトが信じられなくなってしまう。
多くのゴルファーを100切りに導いてきた平野茂プロは、ロフトの役割を勘違いしているためにスイングをおかしくてしている人が多いという。今回はクラブの機能について解説してもらうとしよう。
ボールがフェース面の上を駆け上がることでバックスピンがかかる
クラブのロフトとはフェース面の傾斜角のことで、正確にはロフト角度という。アイアンに関していえば最もロフトの多いサンドウェッジで56~58度、シャフトが長いクラブほどロフトが少なく、5番アイアンでは26度前後となる。
ボールがフェース面に当たった瞬間、そのままロフトの角度どおりに飛んでいくものだと大半のゴルファーは思い込んでいるが、実はそうではない。フェース面にどうして溝があるかをよく考えて欲しい。卓球でカットと呼ばれるテクニックがあるが、フェース面の溝は卓球のラケットのラバーを同じ役割を負っているという。
「アイアンのヘッド形状は三角形になっていますね。フェースがボールに当たり、クラブヘッドがさらに下降を続けることで、ボールがフェース面の下側のヒール寄りからフェース面の上側のトゥ寄りに向かってかけ上がります。勢いよくかけ上がることで、ボールにバックスピンがかかり、揚力がついて上がっていくのです。このことからも実はロフトではなくスピンでボールが浮くのです。そこにロフトがからんで正確な飛距離の階段を作ることができます」
アイアンショットの場合、スイング軌道の最下点はボールよりも先が大原則。ボールを上げようとするほどダウンスイングでクラブヘッドが早く落ちて、スイング軌道の最下点がボールの手前側となり、ダフリの結果を招く。ボールをフェース面の上を駆け上がらせることができず、フェース面の溝を活用できないというわけだ。
このクラブヘッドの正しい動きを知るだけでよくなる場合も多いという。クラブヘッドがスイング軌道の最下点に達する手前でインパクトを迎えるように、しっかりした意識改革が必要だ。
フェースの溝を使うには体重を左足に乗せてインパクト
ゴルフ雑誌など高速カメラで撮影したインパクトの瞬間の写真を見ると、ボールはクラブヘッドが通過してから飛び出していることがハッキリと証明されている。フェース面に当たった瞬間に飛び出すわけではなく、ボールがフェース面を駆け上がり、クラブヘッドが抜けてから、ロフトの角度とボールのバックスピン量によって、クラブの番手どおりに飛んでいくという仕組みだ。
「アイアンがどうして番手ごとにロフトの角度が違うかというと、ボールがフェース面の上をかけ上がる距離でバックスピン量を調整するためです。サンドウェッジは最もフェース面の幅が広くて、溝の数が一番多い。それに比べると5番アイアンなどはフェース面が狭くて溝が少なくなっています。溝の量を調整するために、番手ごとのロフトに差があるのです。ともかく打ちたい距離に応じて持つクラブを決めたら、ダウンスイングからインパクトにかけて体重を左足にしっかり乗せて、クラブヘッドを上から打ち込んでいくことを心がけてください。卓球のカット打ちの要領でフェース面の溝を使うには、ロフトを信じて打つ気持ちが大切です」
ツアープロはラウンドで、3ホールに1回はボールを新しいものに取り替えるという。フェース面の溝を使ってボールに回転をかけるわけだから、ボールがささくれて傷ができるためだ。
きちんと打てたときは、フェース面の溝にボールのラバーの取れカスが付着することがあるだろう。そのときにはきちんとダウンブローでボールをとらえられている。
そんなショットができれば、各番手ごとに飛距離も弾道も安定してきて、約10ヤード刻みで飛距離の階段をつくることができるので、グリーンに乗る回数が増えてスコアがまとまってくる。
教えてくれた人: 平野茂(ひらの・しげる)プロ
1973年9月29日生まれ。早稲田大学卒業後、プロ野球選手を目指すが、ゴルフに転向。2007年にJPGA公認インストラクターの資格を取得。東京・五反田に『フラットフィールドゴルフ』を開設し、チーフインストラクターとして多くのアマチュアを指導している。師匠は叔父の中山徹プロ。
構成/三代崇 撮影/田辺恵理 撮影協力/フラットフィールドゴルフ