私の推しコース「シャフトメーカー営業部長・植木達朗さんに聞く」鳴沢ゴルフ倶楽部
編集部:今回のゲストは、ネーミングが特徴的で大人気、「アッタス」ブランドのカーボンシャフトを世に送り出すUST Mamiyaの植木達朗さんです。ゴルフの仕事に就いたきっかけを教えてください。
植木さん(以下植木):思い起こせば…かれこれ30数年前に大学の時に、荒川土手でマルマンの7番アイアンでボールを打ったのがゴルフを始めたきっかけでした。なぜ1本だけ持っていたのかは未だに疑問です(笑)。それから一般企業に就職してすぐに仙台転勤、友達もできず、唯一の心の友がゴルフでした。上手くなりたい一心で、会社が終わると毎日ひとりで練習場に通い、レッスン本、ゴルフ雑誌も読みまくり、まさにゴルフ一色の生活でした。そんな時、某ゴルフ雑誌の求人が出ていたので即応募。大学時代にマスコミ専攻だったのも功を奏して編集者として採用いただき、それから約25年、ゴルフ業界にお世話になっています。シャフトに携わってからは15年弱ですね。
今はどれくらいのペースでゴルフに行くかですか? 平均すると月一ゴルファーですね。あの頃の“上手くなりたい”から、今は“とにかく楽しみたい!”に変わりました。シャカリキではないのは確かです。カミさんがゴルフを始めたので、そろそろ一緒に行けるかなと思っています。
編集部:シャフトの重さ、硬さのバリエーションってどれくらいあるのでしょう?
植木:ボールを打つスポーツで、ボールと身体の距離が一番離れているのがゴルフです。しかも止まっている。だから難しいし面白い! そしてボールをヒットするヘッドをコントロールするのがシャフト、という訳ですね。
ただ、スイングも人それぞれ、パワーも人それぞれ、技量レベルだって人それぞれ、人生いろいろ、ゴルフもいろいろ、だから道具=シャフトもいろいろになりますよね。ゴルファーの数だけバリエーションがあるといっても過言ではありません。人生とおんなじ、自分に合ったシャフトをずーっと探し続けるのも面白い。
編集部:シャフトの特性と、合う人合わない人ってもちろんあるんですよね?
植木:シャフトには大きく分けてスチール(鉄)とカーボン(炭素繊維)があるんですが、私はカーボンシャフトメーカーに勤めています。アッタスシリーズはもう8代目まで出しているんですが、特性はそれぞれ違うんです。「じゃ、どれ使えばいいかわかんないじゃないか」と言うことになりますが、皆さんも服を買うときにやはり試着=フィッティングすると思うんです。ですから上手下手にかかわらず、今の自分に合っているものを見つけるにはまずはフィッティング。でもそこまでは敷居が高いと思われる方は、是非、試打会やショップで試打することをお勧めしますね。「えー、でも買わされちゃいそうで…」と感じるかも知れませんが、そんなことは絶対ありません。100%私が保証します(笑)。
ですので、数字やスペックは参考に留めて、まずはレッツトライですね。少し難しく言っちゃうと、自分が振りやすいシャフトと合っているシャフトは、また少し違ってくることもあります。だから自分で決めなきゃならない。ゴルフが“自分自身との闘い”なんて言われるのも、こんなところにも表れていますかね。とても興味深いですよね、道具とも戦わなきゃいけないなんて。
編集部:それでは植木さんの「イチ推しゴルフ」場を教えてください!
植木:最近、生命は多様性こそが大切だとされていますが、まさにゴルフ場も多様性が大事なんです。こうあるべきだ! みたいなのは無いほうがいいと思うんですね。名門もあれば、戦略性の高いコースもある。河川敷も楽しいし、カジュアルなコースも気軽でいい。そんな中で私がおすすめするゴルフ場は山梨県にある「鳴沢ゴルフ倶楽部」です。
ここは一言で言ってズバリ“写真に撮りたくなるゴルフ場”です。富士山がその湖面に映り込む逆さ富士が有名な8番ショートホールや雄大な18番も当然美しく、「写真を撮っておこう!」と思うんですが、クラブハウスから一歩外に出ると感じる空気感、その空気感を写真にとどめておきたい、そんな風に感じる何かがある特別なゴルフ場です。景色が綺麗であったり、レイアウトが美しいゴルフ場は他にもありますが、30年近くゴルフをやっていて、今のところそこまで思わせてくれたゴルフ場は、ここだけです。
ゴルフと関係ないじゃないかと言われるかもしれませんが、それこそが多様性のひとつかと。深呼吸したくなる、木々、山々に癒される、笑い声が響き渡る、ふと花に目が留まる。そこにあるものすべてを写真に収めたくなる。ゴルフのすべての楽しみを「鳴沢ゴルフ倶楽部」という環境が準備してくれている。だからこそ思わず写真に、と感情が動くのだと思います。このゴルフ場は、私の大切な友人たちと訪れたゴルフ場なので、そんなところも思いが強くなる理由かもしれませんね。でもそういったことがゴルフの一番ステキなところなのでしょう。
教えてくれた人:植木達朗(うえき・たつお)さん
株式会社シャフトラボ UST Mamiya事業部 営業部部長
1962年生まれ、東京都出身。大学卒業後、塗料メーカーに就職したものの、ゴルフにはまりゴルフ雑誌編集者、クラブメーカーに勤務後、現職に至る。「アッタス」ブランド立ち上げに携わり、マーケティング、広告宣伝、営業全般を統括。数年前より歌舞伎にはまり、日本美術・伝統芸能に傾倒中。見得を切りながら歩くたびに家族に叱られるのが一番の楽しみとか。
取材・構成/キープペダリング