私の推しコース「リサーチャー・三石茂樹さんに聞く」古河ゴルフリンクス
編集部:今回のゲストは、詳細な市場調査を行う矢野経済研究所でゴルフ等スポーツ事業の担当をされている三石茂樹さんです。数字を扱う、堅そうなお仕事ですね?
三石さん(以下三石):そうですか? そんなことないですよ。ただ、大学時代に体育会系水泳部で就職活動もろくにしていなかったことを考えると、数字の分析をして戦略を練るような仕事に就くことになるとは思いもよらなかったですね。学生の頃の私はゴルフのことを忌み嫌っていましたし(笑)。釣りが好きで、海や自然を愛していた私としては、ゴルフは山を切り開いて作ったゴルフ場で一日好き勝手する「道楽オヤジの悪趣味」にしか見えませんでしたから。
ところがです。大好きな釣り雑誌の釣具の広告を見て電話応募するというゆるい就職活動でなんとか入社できた釣具メーカーは、なんとスポーツ用品も製造していて、ゴルフ用品の営業マンになってしまいました。今考えれば、釣具企画開発がしたい、あわよくばスポンサーをしている釣り番組に出演したいなんていう新入社員の希望は、会社の人事担当の考える人事施策とは当然一致しませんよね。そして「東京出身の自分は当然のことながら東京勤務」と思い込んでいたら四国の松山営業所に配属になり、入社三日目で愛媛に行くことになりました。ゴルフを全く知らなかった私は、四国の皆さんにゴルフのルールから用品の知識までをゼロから教わりましたが、思いもよらないゴルフとの関わり合い方だったので、更にゴルフのことが嫌いになってしまったわけです。今のようにゴルフを好きになるのは随分後の話です。
編集部:ゴルフを客観的に見るようになるには紆余曲折があったんですね。
三石:やはり偏見を含んだ思い込みでしたね。客観的にデータを読めば、ゴルフ産業はスポーツ用品市場の20%を占める規模ですから、それだけの魅力があることは間違いないわけです。
ただ、興味があっても日常生活と縁遠いために始めるキッカケをつかむことが易しくないんですよね。調査結果ではノンゴルファーでもキッカケがあれば始めたいと思っている人は20%もいます。ということは人口に当てはめれば2千万人くらいはやっても良いと思っているということです。今の若い世代はゴルフに対して悪いイメージを持っていないし、まだまだ新規ゴルファーが増える道はあります。2016年のリオ五輪で正式種目として復活したことも追い風です。女性の社会進出も進んでいますし、自立心のある現代の女性にはうってつけの趣味だと思いますよ。
編集部:お立場的に、中立に、ゴルフ業界全体を俯瞰して眺められることが出来る三石さんだと思いますが、今のゴルフ業界の問題点、改善点は何かありますか?
三石:2015年にゴルフが長続きしない「ゴルファーの早期リタイアについて」の調査をおこなったのですが、看過できない課題がみつかりました。新規ゴルファーが継続したいと思えるモチベーションが保たれないのは、ゴルフライフの入り口での排他的な側面が否めないというところです。ナイスショットが打てたりして、楽しいと感じられれば続けられるのですが。初心者の悩みに応えるオープンな仕組みや場所をもっと増やす必要があると思います。
難しいことを言っているつもりはありません。ゴルフは遊びの魅力の詰まったスポーツです。一日屋外で気持ち良くプレーができて、年齢を重ねても楽しめますから、いつ始めても大丈夫です。私も今はけっこう楽しくなってきて月に2回位のペースでラウンドしていますよ。
編集部:それでは三石さんの「イチ推し」ゴルフ場を教えてください!
三石:茨城県にある「古河ゴルフリンクス」を推します。自然を愛する私ですから、やはりリンクスでのプレーが気持ち良いんです。風が吹くとどうにもならなくなってしまう、これがゴルフの原風景なんだなぁと憧れのセントアンドリュースに思いを馳せます。
コースは多少曲げてもOBやワンペナは少なく、あるがままのゴルフを味わえます。河川敷ですから高低差がなくフラットで広く開放感は格別です。何と言っても市営のパブリックコースですからクラブハウスも華美な要素は一切なく簡素。格式が高い名門ゴルフ場もいいですが、こういう地域コミュニティのひとつとして存在するようなゴルフ場がもっと増えるといいなと思います。
教えてくれた人:三石茂樹(みついし・しげき)さん
1968年生まれ、東京都出身。1991年 ダイワ精工株式会社(現グローブライド株式会社)入社、10年間ゴルフ営業部に在籍。その後ITベンチャー企業勤務を経て、2001年に株式会社矢野経済研究所に入社。専門分野はゴルフ用品、釣用品、サイクルスポーツ用品市場。用品市場に対する専門知識に「腕前」が付いてこない葛藤と日々闘っている。
取材・構成/キープペダリング