私の推しコース「ゴルフクラブの匠・増田雄二さんに聞く」グレンオークスカントリークラブ
編集部：今回のゲストは、ジャンボ尾崎プロの黄金期を支えたクラブの匠、増田雄二さんです。現在は一般のゴルファー向けのプロダクトを作られているんですね。マスダゴルフさんといえば、ウェッジでしょうか？
増田さん（以下増田）：ウェッジね、嬉しいですね。でもね、私の想いとしては、マスダゴルフの代名詞になってしまうようなヒット商品は極力作らないようにしているんですよ。今ウェッジやパターを取り上げてもらうことが多く光栄ですが、ゴルフって14本もクラブを使っていいという、ちょっと変わった競技でしょう？ 他の競技ではそういうことはないし、14本使ってコース攻略を組み立ててこそゴルフ、と思っているので、クラブセットとしてマスダゴルフを気にいってもらえると職人冥利に尽きますね。
ゴルフを始めたのは小学校３年生くらいだったかな。熊本の実家の近くにゴルフ場があって、そこの練習場で遊びの延長の感覚でゴルフをしていました。環境は良かったのですが、まったく本格的にやるには至りませんでしたね。ただ、ゴルフクラブへの興味はずっとあって、社会人のスタートは自動車業界で金型関係のエンジニアをしていましたが、その経験を活かしてパターの研究・制作を始めました。そしてエンジニアを辞めて3年ほど経った頃に、ご縁があってジャンボさんのクラブに関わることになったんです。まずはパターの制作からでしたが、私はジャンボさんの要望を100%、いやそれ以上の形にすることを求められました。とにかくジャンボさんが打っている姿を見ては、スイングと弾道から何が求められているかを考え、一心不乱にクラブづくりに打ち込みました。獲得賞金に関わる重要な一打の成否に直結する、責任重大な仕事でした。
編集部：増田さんは300ヤードを余裕で飛ばすゴルファーでいらっしゃいますが、ご自身のプレーもクラブデザインに活かされていますか？
増田：ジャンボさんのクラブを作っていた時は、自分のプレーをする余裕は全く無くてね。13年くらい前に自分のブランドを立ち上げてから、自分が打って納得のいくクラブを作らなくてはダメだと思うようになり、試打が思う存分できるゴルフ場の存在が必要になったんです。あ、推しゴルフ場はあとで話すんだっけ？(笑) そこでね、ラウンドしてたら「俺、けっこう飛ぶじゃん」と気がついた感じです。まあ、飛ばしたい人用のクラブ、コンスタントに球を運びたい人用のクラブと、ニーズはいろいろありますし、小さいながらもメーカーとしてやっていくために14本のクラブをきちんとラインナップするのがわたしの仕事なんだと思います。
アマチュアゴルフファーの方でも上級者になればなるほど、そして一流の人ほどクラブの重要性を理解していますし、クラブにこだわらない人はいないです。感性は無視できないですし、現状の問題点、即効性を求めるのかどうか、目的、方向性などをしっかり話し合ってクラブのフィッティングをし、その人のためのクラブを作ること、それがマスダゴルフという大きくないメーカーの強みです。お客様も作っている人間の顔が見えたら安心だろうし、こちらもお客様の顔を見たい、それが一番のサービスだと思っています。
編集部：それでは増田さんのイチ推しゴルフ場を教えてください！
増田：千葉県の「グレンオークスカントリークラブ」を推します。さきほど申し上げた、試打を沢山させてもらったゴルフ場ですと。あるグリーンキーパーさんと仲良くさせてもらっていて、その彼から紹介を受けたのがこのグレーンオークスCCでした。当社のプロトタイプから製品化するための試打のために相当通いました。
練習場はレンジもアプローチ練習場も広くて充実しています。コースの作りも、飛ばして結果につながるホールと、守ることでスコアになるホールとに分かれていて、その判断を誤ると大変なことになります。グリーンのアンジュレーションも効いてますから、ゴルフの楽しさを満喫できます。
教えてくれた人：増田雄二（ますだ・ゆうじ）さん
増田雄二（ますだ・ゆうじ）さん
有限会社マスダゴルフ 代表
1962年生まれ、熊本県出身。職業には自動車の金型関係のエンジニアを選んだが、ティーチングプロの兄・哲仁の影響もあってクラブデザインの道へ。一世を風靡したパター「WOSS」の開発にかかわった後、尾崎将司プロから全幅の信頼を受け、独立クラブメーカー「TMJ」のチーフデザイナーとして、同プロの黄金期を支える。その後、クラブデザイナーとして独立し、2004年に「マスダゴルフ」を設立。トッププロとのやり取りの中で生まれた、常識にとらわれない独自の発想で、高機能・高品質のクラブを発表し続けている。2016年の熊本地震では故郷も大打撃を受け、現在の東京の住まいからトラックで物資を運ぶなど奔走している。
取材・構成／キープペダリング
