私の推しコース「ゴルフカメラマン・内田眞樹さんに聞く」川越グリーンクロス
編集部:今回のゲストは、トーナメント会場等でプロゴルファーの写真撮影をされているカメラマンの内田眞樹さんです。今まで撮影をされてきた中で印象に残っているシーンは何ですか?
内田さん(以下内田):いろいろありますね。16年間トーナメントの撮影してきていますからね。その中でも、これは誰にとっても印象深いと思うのですが、2013年ゴルフ日本シリーズJTカップ最終日の最終ホール、宮里優作プロが劇的なチップインで初優勝を決めた時は、ファインダーを覗きながら思わず声が出た瞬間でした。
海外の試合でタイガー・ウッズに話しかけられたときも嬉しかった! 試合中、ホール間の移動の際にやや下からあおって撮ろうとグッと近づいたんです。タイガーと目が合って(あ、寄りすぎたかな? 怒られる?)と思ったらなんと「ナイス パンツ」と、そのときはいていたパンツを褒めてくれたんです。タイガーはこの仕事を始めた頃から憧れの存在だったので、そういうフランクな一面に接することができたことは役得でした。
編集部:カメラマンとしてのキャリアは、ゴルフからでは無かったと聞いています。ご自身がゴルフにハマっていた頃は一般ギャラリーとして観戦してたんですよね?
内田:そうなんです。私が独立志向の強い若者だった頃(笑)、独立するにはゴルフが役に立ちそうだ、という動機から始めたのですが、すっかりハマってしまいました。独立がかないデザイン会社の社長業をするようになったら、やっぱりゴルフの機会は増えましたね。その頃、私の世界観は何をするにもゴルフが中心で、車も洋服もすべてゴルフに使えるか使えないかが判断基準でした。
近くで行われているトーナメントにも良く行きました。その頃ロープの外から見るしかなかった私はロープの中にいるカメラマンが眩しく見えて、「あれ、やりたい!」と…。それ以前から仕事で撮影はしていましたので、どうしたらトーナメントで撮影できるカメラマンになれるのかと作戦を練り、雑誌社に売り込むための宣材を作ることにしました。
そこで私は、カメラを持参し、ギャラリーとして入場したトーナメント会場で写真を撮ったんですよね。撮影をするには登録しないといけないことも、クラブを振り上げるバックスイングのタイミングでシャッター音をさせてはいけないことも、本当に何も知らずに乗り込みました。もう時効だと思うんですが(笑)。特に隠れてこそこそ撮っていたわけでもなく、でもまあ至近距離というより遠目の場所から望遠で狙って。当然途中で注意されましたが、結果、その時に撮った写真を気に入ってもらうことができて、その後依頼を受けて、仕事になったんです。
編集部:ゴルフの撮影で困ることはどんなことでしょうか?
内田:天候、ですかね。雑誌の広告やレッスン記事の撮影だと、雨では絵が悪いので撮影延期になることが多いのですが、報道として入るトーナメントの撮影は雨でも決行ですから。荷物を極力減らしたりレインウェアを着たりと雨装備で臨みますが、膝をついて撮影することもしょっちゅうなので、濡れることは避けられないんですよね。結構過酷です。
初めてトーナメントシーズンの撮影にみっちり入った時には、これってドサ回りみたい、と思いましたよ。我々はだいたい練習日から現地に入ります。荷造りして、仕事して、荷造りして、次の試合会場に移動して、仕事しての繰り返しが何ヶ月も続くので体力勝負という側面もあります。個人的にはすべての試合を二日間に短縮してもらえると嬉しいです(笑)。
編集部:それでは内田さんの「イチ推しゴルフ場」を教えてください!
内田:埼玉県にある「川越グリーンクロス」を推します。気負わず行けるカジュアルなゴルフ場です。河川敷なんですが、河川敷と聞いて想像するようなコースとはちょっと趣が違って、それぞれのホールが大きな樹木でセパレートされています。
最初はびっくりしますけど、クラブハウスから船で川を渡ってコースに出るというのも、独特ですよね。フェアウェイはほとんど平らで良いスコアも出ますから、初心者の方にもお薦めです。コースが難しくないので、調子が悪いときなどにスイングの調整のために行こうと思えるようなカジュアル感であったり、アクセスの良いところが気に入っています。グリーンの状態もよく、気持ちよくラウンドできます。
教えてくれた人:内田眞樹(うちだ・まき)さん
1966年生まれ、東京都出身。大学在籍中にバンドデビュー(担当ドラムス)するも、グラフィックデザインの道に進み、広告代理店勤務のサラリーマンを経て独立。社長業と自身の目指す職業感のギャップに悩み、フリーのカメラマンになるに至る。ツアープロとの親交も深く、トーナメント写真のキャプションには定評あり。ベストスコア71。
取材・構成/キープペダリング