ゴルフのスライスの原因や直し方は?スイングの改善方法をプロが解説
ゴルフのスライスの原因や直し方は?スイングの改善方法をプロが解説
多くのアマチュアゴルファーは、打球が利き手の方向に曲がってしまう「スライス」に、悩んでいるのではないでしょうか。特に、アイアンはそれなりに打てるのに、ドライバーになるとスライスが止まらなくなるという方は、根本的に正しいスイングができていない証拠です。
今回は、アマチュアゴルファーが悩みとして抱えることの多いスライスの克服法について、高橋友希子プロに教えてもらいました。
プロフィール:高橋友希子(たかはし・ゆきこ)
埼玉県出身。レッスン歴10年、現在は神奈川県横浜市にあるインドアゴルフスタジオ「BAY GOLF CLUB(ベイゴルフクラブ)」の代表レッスンコーチとして活動しながら、数多くのメディアで活躍中。
豊富な経験と知識による丁寧なレッスンは初心者から上級者まで、幅広いレベルの方に好評。特に、100切りを目指すゴルファーには最短距離での上達方法を指南し、癖のない美しいスイングに導いてくれる。
ゴルフのスライスとは?
スライスとは、右利きの場合は右(左利きの場合は左)に曲がる球筋のことです。意図的にボールを曲げる場合を除き、自分の意思と関係なく曲がってしまうスライスは、ミスショットを指します。
なお、スライスには大きく2種類があり、それらの違いは出球の方向です。右利きの場合、ターゲットライン(飛球線)よりも球が左に出てから右に曲がるスライスと、ターゲットラインよりも右にボールが出て、さらに右に曲がるスライスに分けられます。
スライスが出る原因とは?
打球がスライスする理由は、ボールに右回転の力が加わっているからです。その要因として、ターゲットラインに対してクラブヘッドが外側から入るカット軌道のスイングであること、またインパクト時にフェース面が開いてあたっていることが考えられます。
ここでは、スライスが出るカット軌道とクラブのフェース面の原因について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
スイングがカット軌道になる原因
スイングがカット軌道になる原因は、主に下記のようなものが挙げられます。
・スタンスラインに対して肩、腰、ひざが平行になっていない
カット軌道になる原因でまず考えられるのがアドレスです。構えたときに、すでに肩のラインが左を向いていると、クラブヘッドは外側から入りやすくなります。スタンスラインに対して肩、腰、ひざがきっちり平行になっていることが重要で、アドレスの段階で間違ってしまうとスイング中に修正することは不可能です。
・インパクトでボールにクラブをあてようとしている
アドレスで正しく構えられていてもカット軌道になる原因は、ボールにあてようとする動きです。トップから切り返した直後に手首の角度が解けてしまうアーリーリリースが原因で、手先でクラブのフェース面をボールに合わせようとすると起こりやすくなります。
トップから切り返したときにボールにあてる意識が強いと、その時点で右肩が前に出やすくなり、それが原因でカット軌道になることがあるのです。
ヘッドが外側から入るとカット軌道になる。
クラブフェースがボールに開いてあたる原因
ゴルフで打球を真っすぐ前に飛ばすためには、基本的にフェースを返す動きが必要になります。このフェースを返す動きとは、クラブフェースがボールのあたるポイント(インパクト)に向けて、目標方向に向くように操作すること。フェースを返すタイミングが遅ければ開いてあたり、タイミングが遅いと閉じて(かぶって)あたります。
フェースが開いた状態。
また、スイングでボールにクラブヘッドをぶつけるような動きをしていると、フェースがスクエア(真っすぐ)に戻りにくくなるため、フェースが開いた状態でボールにあたる原因になるのです。
体が突っ込む動きは、クラブヘッドが上から入るので、インパクトでフェースが開いてあたりやすい。
今日から実践!スライスを改善するための練習方法
スライスを克服するための練習方法は、主に「正しいアドレスの習得」「ダウンスイングで手を真下に下ろす動きの習得」「フェースを返す動きの習得」の3つがあります。多くの方はドライバーを打つときのスライスで悩んでいると思いますが、克服のための練習では、長さが短いアイアンで行うのが効果的です。
その理由としては、クラブを操作しやすいことだけでなく、スライス克服に必要になるフェース面の動きを感じやすいからです。ここでは、それぞれの練習方法について解説していきます。
正しいアドレスの習得
使わないクラブや、アライメントスティックを活用し、ターゲットラインと平行にしたスタンスラインにセットします。そしてそれら(ターゲットとスタンス)のラインに対して肩、腰、ひざのラインを平行にセットしましょう。
特にコースに出ると、目標物がなくなったり、傾斜などで方向が惑わされたりするので、正しく構えにくくなります。練習場などでしっかり正しい感覚を身に付けてください。
ターゲットラインとスライスラインに、肩、腰、ひざのラインを平行にする。
また、アドレスでどうしても肩が開いてしまうといった癖がある方は、クラブやアライメントスティックを使って、強制的に右を向いたアドレスを作ってみましょう。
無意識に左を向く癖を強制的に修正することで、悪い感覚を払拭することができます。最初は違和感があると思いますが、まずはやりすぎるくらい極端なアドレスを作って、そこから徐々にスクエアに戻すことをおすすめします。
ダウンスイングで手を真下に下ろす動きの習得
スライスで悩む方は、切り返しの後に、手元が体の前に出る動きになる傾向があります。外側からヘッドが下りるのではなく、インサイドからヘッドが下りるように修正することが重要ですので、トップで切り返した後、手が真下に動く感覚でダウンスイングすることを心掛けて練習してみてください。
この動きが習得できると、ダウンスイングで右肩が前に出る動きも矯正されるので、スイングがカット軌道になりません。
ダウンスイングで手元が前に出る理由は、ボールにあてたい気持ちが強いから。その動きでボールを打つことに慣れている方にとっては、手元を真下に動かす動きは空振りするように感じるはずです。
最初は右手一本の素振りだけでいいので、トップで切り返した後、とにかく手元を真下に動かす意識をしてください。右手一本で行うとクラブヘッドの重みを感じられるので、手打ちにならず体を使った正しい軌道のスイングがしやすくなります。
トップからインパクトまでの素振りに慣れてきたら、片手でボールを実際に打っていきます。このとき、絶対にボールにあてようとする気持ちは抑えるようにしましょう。
トップ位置からは、手が真下に下りるようにダウンスイング。
目指すのはこの形!
トップから手が真下に下りる感覚がないダウンスイング。
体の前に手元がきてしまうのはNG。
フェースを返す動きの習得
アドレスの状態で、極端にフェースを閉じて構える練習も効果的です。実際に打ってみると、インパクトの感触が明らかに変わるはずです。
「これだけフェースが閉じていてもいい」ということがわかるはずです。
スクエアの状態。
閉じた状態で実際にボールを打つことで、正しいインパクトが体感できる。
特に初心者の方にありがちなのが、真っ直ぐに飛ばそうとしてインパクトでボールにフェース面を真っすぐあてようとしてしまうこと。真っ直ぐにあてようとすればするほど、フェースは開いてしまいます。
この癖を修正するには、水平素振りがおすすめです。胸の高さにクラブをセットして、高さを変えないままスイングします。体の正面でヘッドが手元を追い越すように振るのがポイントです。「水平にクラブを振るくらい誰でもできる」と思いがちですが、意外とこの動きができない方が多いんですよ。
スライスの克服には、フェースを返すタイミングがポイント。フェースを返す動きそのものを習得することが重要です。早く返してもうまく振れないし、遅すぎても振れません。体を軸に腕とクラブが連動して、フェースを返す動きをマスターしてください。
水平素振りの感覚がつかめたら、次に実践してもらいたいのが右手の平の向きの意識です。フェース面は右手の平と連動していると考えましょう。インパクトの瞬間に右手の平がどこを向いているかで、出球の方向が変化することを意識します。
手の平が左を向いていたらボールは左に飛び出し、右に向いていたら右に飛び出します。右手の平をインパクト時にスクエアにすることで、狙った所に真っすぐボールを打ち出せるようになります。
ドライバーのスライスをなくし、ナイスショットを目指そう
初心者の方の多くは、クラブがボールにあたる場所を意識しすぎてしまいがちです。意識しすぎるとクラブヘッドが前に出すぎて、スイングがカット軌道になり、スライスが出る要因につながります。
今回ご紹介した練習方法は、軌道を修正し、フェースを返す動きをマスターすること目的にしたものばかり。ボールを打つことよりもクラブを振ることに意識を向けましょう。
ゴルフは、クラブをいかに上手に振るかが重要です。スポーツ経験がある方は、「止まっているボールくらい簡単に打てる」と思いがちですが、そのボールを打つ意識がスライスの原因になります。ゴルフクラブはほかのスポーツの道具と異なり、重心がシャフトの延長線上にない構造のため、クラブを振ることを意識しなければならないスポーツだからです。
クラブを振る意識を持つには、ハーフスイングの練習が効果的です。スライス矯正に特化したものではありませんが、スイング中にクラブヘッドがどこにあるのかを理解することができます。
ボールを打つことばかりを考えていると、クラブヘッドがどこにあるのかを意識しにくくなるため、ポジションを把握することで、フェース面の操作がスムーズにできるようになり、フェースを返す動きも行えるようになります。
また、小さい振り幅で練習すると、フェースターンを意識しやすく、ボールがつかまる感覚もわかりやすくなるというメリットも。フルスイングは小さな動きの延長線上にあるものなので、特にスライスで悩んでいる方は、ハーフスイングでボールをつかまえる練習をするだけで効果が期待できると思います。
小手先の動きでボールをつかまえるのでなく、しっかり体を使ったスイングの中でボールをつかまえることができるようになれば、長さがあるドライバーでもまったく同じ動きができるようになります。
正しいクラブの振り方をマスターし、軌道とクラブのフェース面を操作する動きを覚えることができれば、真っすぐ飛ぶボールが打てるようになるはずですよ。
<クレジット>
協力/BAY GOLF CLUB
撮影/小林司