「簡単そうに見えるところ」がゴルフの最大の難しさ
写真/Getty Images
2016年はリオデジャネイロ五輪で112年ぶりにゴルフが五輪競技として開催された。この機会にゴルフに興味を持つ人が増え、ゴルフを始める人を増やしたいと考えているゴルフ関係者は多い。
ただ、五輪ゴルフで日本人選手がメダルを取ったとしても、一時的なゴルフブームは起こるかもしれないが、ゴルフをする人が本当に増えるかといえば現状では難しいかもしれない。
21世紀に入ってから、日本ではゴルフブームと呼べる現象が少なくとも2回あった。
1回目は2003年9月に宮里藍が高校3年生でミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメントにアマチュア優勝し、史上初の高校生プロゴルファーが誕生した直後だ。プロ入りした宮里は2004年に年間5勝、2005年に年間6勝を挙げ“藍ちゃんフィーバー”を巻き起こした。
次のゴルフブームは、2007年5月に石川遼が高校1年生のときにマンシングウェアオープンKSBカップでアマチュア優勝したときだ。その後、プロ転向した石川は、2008年10月のマイナビABCチャンピオンシップでプロ入り初優勝を挙げると、2009年には年間4勝を挙げて史上最年少賞金王に輝いた。
この2回のゴルフブームをきっかけにゴルフを始めた人はけっこういた。ゴルフ練習場やゴルフスクールには多くの人が押し寄せ、ゴルフ場の来場者数も増えた。
だが、その人たちが今もゴルフを続けているかといえば、残念ながらやめてしまった人が多い。その最大の理由は、「ゴルフは簡単そうに見えるけど、やってみたら難しい」ということに尽きる。
宮里藍や石川遼のプレーを見ていると、華麗なクラブさばきでショットをピンに絡め、次々とバーディを奪っていく。そのような姿に憧れてゴルフを始めてみたものの、ボールは空中に飛ぶどころか、地面をはいつくばってばかり。やがて「自分には向いていない」と諦めてしまうのである。
ゴルフは運動量がそれほど多くないので誰でも気軽に始められるし、筋力がない人でもコツさえつかめばボールを遠くまで飛ばすことができるのだが、「止まっているボールを打つなんて簡単だろう」という大きな誤解が上達を妨げるのである。
「簡単そうに見えたのに、全然うまくいかない」という挫折感によってゴルフをやめてしまった人をこれまでに大勢見てきた。
これからゴルフを始める若い人たちには、「ゴルフは簡単そうに見えるけど、実は難しい」ということを最初から理解して取り組んでみてほしい。
そうすれば、「難しいと聞いていたけど、意外に早くボールに当たるようになった」と自分のプレーを前向きにとらえることができるはずだ。
文/保井友秀(ゴルフライター)