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杉澤伸章の「プロキャディというお仕事」第2回

杉澤伸章の「プロキャディというお仕事」第2回
写真/getty images

ヤーデージブックはコース攻略の必需品

トーナメントを観戦していると、キャディが選手にメモ帳のようなものを見せながら、真剣な表情でやりとりしている姿を目にすることがあると思います。「あれは何を見せているの?」と訊かれることが多いのですが、ヤーデージブックを見せています。ボクらは“アンチョコ”と呼んでいます。

ヤーデージブックにはコースの形状が細かく記載されており、グリーンエッジまで何ヤードか、グリーンエッジからピンまで何ヤードか、バンカーまで何ヤードか、バンカーを越えるのに何ヤードかといった情報がすべて書かれています。

でも、トーナメントは毎年決まったゴルフ場で開催されているものもありますし、試合前には練習ラウンドも行いますから、すでに分かっている情報もたくさん含まれています。それだったら口頭で情報を伝えるだけでいいのでは思うかもしれませんが、実は絵を見せながら説明するのがポイントなんです。

選手への説明は仕事のプレゼン

選手にヤーデージブックを見せる理由は、目的地を映像化させること。何をするべきか頭では分かっているけど、それがなかなか実行できない人っていうのは、具体的な行動が映像化できていないことが多いんです。

たとえば仕事のプレゼンテーションで、口頭で説明すればいいだけなのに、パワーポイントで資料を作ってプロジェクターに映しながら説明しますよね。あれって映像を見せることで脳が理解しやすくなるからなんですよ。

ゴルフの場合も同じで、絵を見ながら確認作業を行うことで、より鮮明な映像を作り上げていくんです。映像が鮮明になると人の意識は高まり、これから行動することに対しても体が反応しやすくなります。

具体的には次のようなやりとりをしながら映像を作り上げていきます。まずキャディが「ピン位置がここだから、ここにボールを置きたいよね。」という提案をします。そして、そこから逆算していきます。「ボールをここに置くためには、どういう弾道で攻めたらいいと思う?左のピンに対してフェードで行くのはリスクがあるよね。だったらドローで行こうか?」と。

でも、選手はボールのライを見て、どういう球が出やすいかということにも反応します。キャディがドローボールを打ってほしいと思っていても、ボールのライがツマ先下がりで左足下がりだったら、選手はフェードのイメージしか作れないというケースもあります。

そのような場合、「OK。じゃあ、フェードで行こうよ。でも、ピンの左からフェードだとリスクがあるから、目的ポイントを5ヤード右にしようよ。ピンに向かって飛んでいき、そこからフェードっていう弾道は作れる?」と再提案します。

ショットのたびに確認は必要

そして、選手がその弾道の映像を作れるとなれば、弾道に対してスタンスが決まり、ボールの位置が決まり、実際にショットを打つという段取りになります。

ただ、選手によって映像化が得意な人と苦手な人がいますし、目的地から逆算するのが合っている選手もいれば、ボールがあるところから目的地に向かっていくのが合っている選手もいます。したがって、選手の思考のクセを知った上でコミュニケーションを取る必要があります。

でも、いずれの場合もショットのたびに確認作業を行うのは必要不可欠です。なぜならば、人間というのはそれくらい忘れやすい生き物ですし、一つの行動を起こすためには常に目標を確認しながら丁寧にやっていくことが大事だからです。

教えてくれた人 プロキャディ 杉澤伸章(すぎさわ・のぶあき)さん

1975年7月5日生まれ、愛知県出身。愛鷹シックスハンドレッドクラブの研修生を経て、横田真一選手の専属キャディとなる。2002年からはプロキャディとして丸山茂樹選手と契約し、米国男子ゴルフツアーを転戦。現在は宮里優作選手と契約している。ゴルフに関する的確なアドバイスに加え、選手の状態を見極めたメンタルコントロールを得意とするアドバイスのプロフェッショナル。


構成/保井友秀(ゴルフライター) 撮影/斉藤秀明

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