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神に祝福されたリンクス大国、アイルランド(その3)

神に祝福されたリンクス大国、アイルランド(その3)

海外のゴルフ関係者と話をした際、「大英帝国の駐屯地があった場所の近くに名コースがある」と、ジョークまじりの格言のようなフレーズを耳にしたことがあります。確かに、近代ゴルフの黎明期を彩る、19世紀終盤に世界中に誕生した多くの名コースがこれに当てはまっているような気もします。アイルランドも例外ではありませんが、1889年に開場し、いまもなお、世界トップ100に数えられるほど高い評価を受けるウォーターヴィルゴルフリンクスの場合は、この例ではありません。

激動の時代とともに育まれた名コース、ウォーターヴィルゴルフリンクス

アイルランド東南のシックな町、ウォーターヴィル。この地にゴルフをもたらしたのは、駐屯地の軍人ではなく、技術者たちでした。ウォーターヴィルと同じケリー州にある欧州大陸最西端の定住地、ヴァレンティア島には、1860年代後半、大西洋横断電信ケーブルの東部中継所として多くの技術者が暮らすようになりました。そんな彼らのレクリエーションとして、ウォーターヴィルにゴルフ場が誕生することになったのです。

1889年に、電信会社が音頭をとり、ウォーターヴィルアスレチッククラブが設立。以降、1960年代まで、9ホールのゴルフ場として運営されていましたが、撤退した電信会社に変わりオーナーとなった、アイルランド系アメリカ人の実業家、ジョン・マルカイーの「ここを世界で最もテスティングなゴルフ場にしたい」という夢のもと、現在の18ホールの原型が造成されました。その後、1987年にはトム・ファジオが、その夢の続きを創るかのように改修。著名プロを含む、多くのゴルファーが愛してやまない、今日のコースへと変貌を遂げていきました。1998年、ロイヤル・バークデールGCで開催された全英オープンの直前に、その年の全英チャンピオンになるマーク・オメーラを筆頭に、ペイン・スチュアート、タイガー・ウッズといった面々が招待を受け同クラブのメンバーに加わり、とても気に入っていたそうです。

私がこのコースに訪れたのは5月上旬でしたが、ちょうど寒波が来ており、ほとんどの日の最高気温が10度に満たない真冬のゴルフの連続のような旅でした。今まで経験したことのないような雨と風、寒さ対策のため、ダウンのアウターを着ながらのプレーがほとんどでしたが、この日は雨に降られることもなく、ダウンを脱いでプレー。途中からはセーターも脱いでみようか、と思えるほどの気温に達しました。何とかコースを攻略しようと必死に歩いた他のリンクスコースとは違い、このコースは2名乗り乗用カートが利用可能ということもあって、コース全体を見渡しながらプレーするゆとりも少し出てきました。

このリンクスが有する歴史は、コースの随所に見受けることが出来ます。例えば「マス(ミサ)ホール」と別名が付けられている11番。このホールのティーインググラウンドとグリーンの間にある凹み部分は、アイルランドに於いて、カトリックが弾圧を受けていた時代、死角となる砂丘の底で隠れて集会(ミサ)を行っていた場所だそうです。当初のコース設計においては、この凹みにグリーンを設けるプランもあったようですが、そういった歴史への敬意を払い、丘の上にグリーンを作りました。それが今日においては、世界の名ホールの一つとの評価を受けているのですから、まさに「歴史の上に作られた名リンクス」です。多くの人が、このホールの歴史に気づかずプレーしていると思いますが、私もその内の一人。「随分と深い谷間だから、ショートせずに大きめに打とう」と、知らずにティーショットを放ち、打った後に設置されていたプレートの内容を読んで知りました。知っていれば、もう少し清らかな気持ちで、良いショットが打てたかもしれません。

11番以降も素晴らしいホールが続きます。特に、コースト沿いを進む、上がり3ホールはコースでも高い場所にあるため見晴らしが良く圧巻です。
シグネチャーホールと言える17番パー3や、クラブハウスに向かって果てしないフェアウェーが伸びる18番パー5は、難しくも素晴らしいクライマックスを演出してくれる爽快なフィニッシングストレッチです。
今回のアイルランドの旅では、多くの世界的に評価を受けるリンクスコースに出会いましたが、共通して言えるのは、18番ホールを終え、振り返った時に、走馬灯のようにその日のゴルフが蘇るということです。クラブハウスに戻って流し込む1パイントのギネスビールは、この瞬間のためだけに作られたのではないかと思うほど相性抜群でした。

ウォーターヴィルへの行き方、楽しみ方

今回は、アイルランドの東、ダブリンから始まり、Kクラブ、西部のラヒンチなどをプレーし、アイルランドオープンを開催するキラーニーゴルフクラブ、そしてウォーターヴィルをめぐる少し慌ただしい旅でしたが、このままの行程をお勧め出来るほど満足度が高いコースセレクションでした。ウォーターヴィルゴルフリンクスをプレーするには、同じように欧州の主要空港で乗り継いでダブリン空港に入り、Kクラブなど、内陸のコースを経由しながらアクセスすることをお勧めします。街歩きが楽しいキラーニーに2泊ほどステイし、アイリッシュウイスキーをテイスティングするのもお勧めです。
故ペイン・スチュアートも愛したウォーターヴィルゴルフリンクス。その足跡をたどってみると、米国とアイルランドの関係性、そして英国と米国のゴルフ文化が交わるロマン溢れるアイリッシュゴルフを堪能することが出来ました。アイルランドは日本では中々馴染みがないゴルフデスティネーションですが、ゴルフマニアにはたまらないコースが多数存在しています。プルカートを引きながら、1ヶ月くらいひたすら白球を追いたい。そんなデスティネーションです。

●教えてくれた人:薬師寺 輝(やくしじひかる)さん

ゴルフツーリズムのPR/マーケティング会社、(株)NibLinks代表取締役(http://niblinks.com)。国際的ゴルフツーリズム組織、IAGTO日本代表。世界のゴルフデスティネーションを訪れ、その魅力を国内外に発信している。

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